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チョコは溶ける前に渡そう

バレンタイン回です!

二月・・・それは女子と男子にとって最も緊張する月だと言ってもいいだろう

その理由はただ一つ・・・二月には特別なイベントが待っているからだった

「と言うわけでやってきました!バレンタイン手作り教室!!」

そうして始まったバレンタイン教室なのだが一つだけ問題もあった

「あの〜・・・出来ればそういう事は男子がいない場所で言うのがいいんじゃ・・・」

実は男性陣も命の家に集合しておりキッチンにはいないがリビングで勉強会をしていた

なので先ほどの香野の発言に関しても完全に聴こえているというわけだ

「別にそれくらいじゃあいつらも動じないでしょ?一番反応しそうな慶太くんは勉強で忙しいだろうしね

 それよりも・・・まずはちゃんと作れるかどうかの心配をした方がいいんじゃないの?」

それを言われてしまうと流石の敬子も何も言い返す事ができず完全に顔を逸らしていた

「まぁ私も手作りのチョコを作るのは初めてなので敬子さんと一緒ですね」

その隣には何故か自信満々で失敗するつもりの足立がおり慰めではない言葉を敬子に掛けた

「・・・とにかく始めましょうか!まずはチョコを溶かすところからよ!」

まるで何事もなかったように香野主催のバレンタイン手作り教室は始まったのだった

「まぁチョコを作った二人には私が簡単なのを教えてるとして・・・二人は何を作るの?」

監督官として香野は敬子と足立のチョコ作りを手伝うのでそちらの作る物は分かるのだが

教える必要がなく自分達で作る命と明希音がどんな物を作ろうとしているのかは分からないので

一体何を作ろうとしているのかそれを尋ねると二人はレシピ本を見せながら教えてくれた

「私の方はみんなでも食べられるクッキーにしようかと思っています

 でも普通に売っているのとは少しだけ違うアレンジもするつもりですよ」

どうやら明希音は少しだけ変わったチョコクッキーを作る予定のようで

それを聞いていた敬子は流石は料理の出来る女子は違うと尊敬の視線を送っていた

「わっ私もみっみんなで食べられるようにふっ麩菓子と合わせようかと・・・!」

一方で命の方もみんなで食べるのを意識して麩菓子と合体したチョコにするつもりのようなのだが

((・・・それって普通にコンビニとかでも売ってるんじゃ・・・))

逆に凝りすぎてて市販の商品と被るのではないかと思う敬子と香野だった



「二人は初心者だから特に無理しないでパン粉を混ぜたサクサクチョコ菓子を作りましょうか!」

チョコ作りにおいてはパン粉を混ぜて作るチョコ菓子はまさに基本中の基本であり

これならば初心者の二人も心配せずに作れるだろうと言う香野の判断だったのだが

「・・・先輩・・・どうやったら溶かす工程でチョコが焦げたりするんでしょうね・・・」

何故か二人のチョコは溶かす工程ですぐに焦げてしまっているのだった

「・・・本当にお湯で溶かしているのにどうして焦げるのかしらね・・・」

もはや神の仕業なのかと言うほどに何故か二人はあり得ない現象を引き起こしており

これは苦戦しそうだと香野は先ほどまで浮かれていた自分を恨むのだった

一方でやはり調理の慣れており命と明希音の方はかなりのスピードで調理を進めていた

「なんか変な事になっちゃいましたけどよかったですね?好夜くんに渡せそうで」

実は命はこれまでバレンタインのチョコを渡せた事がなかったのだ

その理由はもちろん恥ずかしいと言う思いもあるのだが実際はそれだけではなかった

好夜は好意を抱かれる事はそこまでないのだが好感を持たれる事は結構あるので

後輩の女子や近所の子供達などあやゆる人からチョコをもらっており

もちろん律儀な彼がそんなチョコを捨てるわけもなくもらった端から食べていた

しかし好夜もちゃんとした人間なのでそこまでチョコをもらっても正直な話

嬉しさよりも辛いと言う気持ちが勝ってしまいバレンタインは苦い思い出となっている

そして好夜の事をずっと見ていた命もその事を理解していたからこそチョコを渡せないでいたのだ

「でも今日はみんなでチョコを作って帰るだけなのでその心配はいらないですよね?」

今回は明希音の言う通りいつものように誰かからチョコをもらう心配はないし

みんなで食べる為に作っているのでたとえ余ったとしても食べてくれる誰かがいると言う安心感もある

そう言った意味ではこのバレンタインは命にとって最大のチャンスとも言えるのだ

(・・・好夜くん・・・喜んでくれるかな・・・?)

しかしそれでもやっぱり心配してしまうのが女の子というものであり少し恥ずかしくも

本当に食べてもらえるのか不安になってしまいながら料理を続けるのだった

もちろん・・・その心配は全くもってしなくてもよかったものだと後で知る事になるとは知らずに



一方その頃、好夜達はなるべきキッチンには近づかないようにしながら慶太の勉強を見ていた

「・・・なんか向こう盛り上がってますね・・・悲鳴も聞こえますけど」

おそらくは盛り上がっているのは命と明希音の方で悲鳴に関しては残った三人なのだろうが

好夜としてはチョコを作るだけでそこまでの悲鳴が上がるのかと流石に心配になっていた

「悲鳴は気になるがあそこには調理が出来る人間が三人もいるのだから大丈夫だろう・・・

 俺達が今問題にするべきなのはまずこっちのはずなのだが?」

すいって机に顔を戻すとそこには既に屍のように倒れている慶太の姿があった

「もう一週間もしないで学校が始まるのに宿題が半分も残ってるって・・・

 確実にこれ担任に渡したら怒られるやつじゃん・・・」

好夜の言う通りこのままこの宿題を渡してしまったら確実に怒られるのは間違いないだろう

さらにいうのならば学校が始まってすぐに宿題を大量に出し直される可能性も少なくはない

「だから・・・こうして・・・頑張って・・・るんじゃ・・・ねぇか・・・」

もはやその言葉にはいつもの元気さは一切なくやっていると告げる慶太の手も

完全に力が入っておらず答えはおろかまともな文字すら書けていなかった

「・・・どうします?これ・・・」

完全にお手上げ状態だと好夜は会長にどうすればいいのか尋ねると

「正直な話をするのならば俺はもうどうしようもないと考えているのが現状だ

 この際だから徹底的に追い詰められればその性格も直るんじゃないか?」

確かに会長の言う通りこのまま担任の先生に怒られて反省するのもいい案ではあるのだろうが

幼馴染である二人は知っていた・・・この男にはそんな事は無意味だと言う事を・・・

((だってこいつ・・・反省はしても直す努力をしないからな・・・絶対・・・))

そう・・・慶太は人を傷つけるような悪い事は反省してちゃんと直す事は出来るのだが

自分の事になるとまるでそれよりも自分の欲望に生きたいと言わんばかりに直そうと努力しなくなるのだ

そう言った意味ではある意味で学校で最も厄介な生徒と言っても過言ではないだろう

二人はこんな生徒を相手をしている慶太の担任に対して心から尊敬するのだった

「・・・なんか二人が遠い目をして手を合わせているのだが・・・神にでも祈っているのか?」



「・・・むしろ祈りたいのは俺の方なんだけど・・・」



そんなこんなをしている間に時間は過ぎてしまいどうやら女子の方もお菓子作りが終わったようだ

「お待たせ〜!女子のお菓子が出来たわよ〜!!ってなんか骨になってる?!」

香野がみんなとお菓子を持ってリビングに入ると

そこにはもはや屍を超えて骨になって倒れている慶太の姿があった

「なんとか終わりましたけど・・・これ絶対に後で怒られる奴ですよね・・・」

どうにか宿題を終わらせたのだが実際はもう何門か間違えていても問題はないだろうと思い

残っていた宿題の七割ほどを正解の問いにさせて残った間違いの三割をそのまま出そうという事になったのだ

「まぁ流石に宿題を大量に出されるような罰は多分ないでしょう・・・

 怒られるに関しては・・・こいつの自己責任って事で反省してもらいましょう」

晃平の言う通りここまで手伝ったのだからもはや慶太に文句を言うような筋合いはなく

むしろ怒られるのに関しては慶太が受けるべき当然の罰なので甘んじて受けてもらう事にした

「・・・なんか大変だったみたいだけどとりあえずはこれでも食べて忘れなさいな!」

そう言って香野達は自分達が作ったチョコ菓子を机の上に並べる

「おぉ〜!すげぇ!まるで市販品みたいなお菓子ばっかりじゃん?!めっちゃ美味しそう!!」

並べられたお菓子を見て好夜は思わず声を上げてしまい他の二人も声を出してはいなかったが

確かに美味しそうだと驚きの表情を浮かべておりそれを見て香野達は嬉しそうな顔をしていた

「・・・でも・・・現実は残酷だよな・・・」

するといつの間にか起きていた慶太が先ほどまでの自分を言っているのか

それとも並べられたお菓子の差についてを言っているのかとにかく絶望したような笑みを浮かべていた

「・・・そんなにやばそうって言うのならこれでも食べて大人しくしていなさい・・・!」

そう言って敬子は自分が作ったチョコ菓子の中で最も出来の悪そうなものを慶太の口に突っ込んだ

すると慶太はまるで口の中で何かが暴れているのではないかと言うほどの顔を浮かべ

そしてしばらくすると声も上げずにそのまま白目を剥いて気絶してしまった

「・・・まぁ勉強の疲れが出たんだろう・・・ゆっくりと休ませてやれ」

会長の言葉に対して誰もが絶対に違うと思いながらも口にはしない事にしたのだった

「・・・とにかく食べて盛り上がろうぜ!バレンタインチョコパーティーだ!!」



「「「「「イェ〜イ!!」」」」」

こうしてみんなで盛り上がりながらバレンタインは楽しく終わりを迎えるのだった



「・・・因みにですけど敬子さんのだけではなく私のも誰も食べようとしませんでしたよね?」



『ギクっ?!』

作者はバレンタイン・・・男なのに何故か作る側にいました・・・

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