体育祭 前編
体育祭始まります!
そして時は過ぎて・・・体育祭当日
「・・・なんかみんなすごい張り切ってないか?」
みんなの気合いを入れようを見て好夜は少したじろいでいた
「そりゃあそうだろ?むしろお前だって張り切ってただろ?」
慶太はそれを聞いて自分だって張り切っていたはずではないのかと聞く
確かに好夜も年に一回しかない行事なので張り切ってはいたが
「いや・・・なんつうかさ・・・
みんなの場合、張り切ってるってより鬼気迫ってるって感じ?」
他の面々は張り切っているというより鬼気迫る必死さがあった
「そう言われてみれば確かに・・・何か理由でもあんのか?」
慶太もそう言われて納得し何か理由でもあるのかと思っていると
「う〜ん・・・多分みんなこれで必死なんじゃないかな?」
そこに明希音が現れてみんなが必死なのはこれが理由ではないのかと
みんなに配られた体育祭の予定表を見せる
「・・・”学年優勝者は表彰状と一緒にテーマパークのペアチケットを差し上げます”?
・・・おいおい・・・これでみんな張り切ってるのかよ・・・」
好夜と慶太はそんな理由でみんな張り切っているのかと思い呆れていた
「みんなが必死になっている理由はむしろそのジンクスじゃないかな?
なんでもそのペアチケットの配布が行われるようになってから
一緒にテーマパークに行った男女は必ず結ばれるらしいよ?」
しかし明希音はみんなが張り切っている理由はそのジンクスにあるのだと告げる
二人もその理由を聞いてようやく納得がいったのだが
「・・・そのジンクス・・・明らかに嘘臭いんだけど・・・」
「まぁ普通に考えたらそうでしょうね・・・」
敬子もその噂には嘘ではないかと疑っているらしい
「おそらくは理事長辺りが体育祭を盛り上げる為に言ったんだろうな」
そして晃平はその噂は理事長が流したのではないかと疑っていた
「・・・お前ら・・・少しは夢を持てよ・・・」
その冷静な意見を交わす幼馴染達を見て子供らしくないと思う慶太だった
「でも確かにペアチケットは嬉しいかもな・・・どこの何だ?」
しかしペアチケット自体はもらえれば嬉しいと思った好夜は
そのチケットじゃどこのなのか聞く
「えっと・・・今年は水族館のペアチケットみたいだよ?」
明希音は予定表を確認して今年のペアチケットは水族館の物だという
「「「・・・今年はってことは・・・明らかにさっきの嘘じゃん・・・」」」
しかしその話は確実に先ほどの噂が嘘だと発覚させるのだった
「因みに二年生は動物園で三年は遊園地だって」
しかも学年によってそのペアチケットは別の場所になっているらしい
「・・・その金はどっから出てるんだよ・・・」
好夜はそのペアチケットのお金はどこから出てくるんだと思っていた
「あれ?そういえば命の姿が見えないけど?」
すると敬子はこの場に命がいないことに気がついた
「命なら香野先輩に呼ばれてたぞ?なんでも生徒会の仕事らしい」
どうやら命は生徒会の仕事に呼ばれたらしいと好夜は告げる
「・・・あんたも生徒会よね?」
それを聞いた敬子は同じ生徒会の好夜は何をしているのだと聞く
「いや俺もちゃんと仕事してるからね?!てかこの荷物を何だと思ってるんだよ!!」
しかし好夜も別にサボっているわけではなく競技で使う道具を運んでいた
「へぇ〜!どんなのがあるんだ?!」
慶太は興味津々にどんな道具があるのかと聞く
「別に大したもんはないぞ?
今回はほとんどの道具が修理に出されてるからな」
そう言いながら好夜は数少ない道具をみんなに見せる
「これって借り物競争の箱よね?大丈夫なの?」
敬子は借り物競争の箱を見つけてこれを見ても大丈夫なのか聞く
確かに今の時点でどんなお題が書かれているのか見るのは反則だろう
・・・普通ならだが・・・
「まぁ・・・一枚抜いて中を見てみろよ・・・」
好夜は何やら遠い目をしながら中身を見てみるように言う
それを聞いた敬子は疑問に思いながら一枚抜いて中身を確認してみると
”独身三十路の女教師”と書かれていた
「・・・・・」
敬子は何も見なかったことにしようと紙を箱に戻した
「・・・こんなもん引いても誰も取りに行けないわよ」
その言葉を聞いて好夜も同意見だと頷いていた
「誰がこのお題を書いたんだ?」
晃平はお題を誰が考えて書いたのかを聞く
「・・・香野先輩・・・」
それを聞いたみんなはなぜか納得してしまった
それほどまでにあの先輩の評判は低かったのだった
「これは確かに公平ではあるな・・・」
晃平もこれならどんな人が引いても公平になると思っていた
「いや・・・むしろゴールできる人間が出てこなくなるぞ・・・」
しかし慶太の言う通りこれでは単純にゴールできない人間が増えるだけだった
「まっまぁとりあえず私達も運ぶの手伝ってあげるわよ」
こうして敬子達にも手伝ってもらい好夜の仕事は終わった
「さて・・・もうそろそろ開会式が始まるか・・・それじゃあ後でな」
晃平は時計を見てもうそろそろ開会式が始まると
みんなと一緒に自分のクラスへと戻っていった
「・・・俺も持ち場に戻らないとな・・・」
好夜も急いで会長のいる場所に戻っていった
「あれ?会長だけですか?」
しかしそこには生徒会長が一人でいるだけで
他の三人の姿が見えなかった
「ああ・・・大方あの二人が香野の悪ふざけに付き合わされてるんだろうな」
どうやら会長は三人がいない理由がわかっているらしい
「えっと・・・それって一体?」
好夜はそれが何のか尋ねようと思ったが
『これより開会式を行います
生徒の皆さんは自分のクラスの場所に戻ってください』
開会式のアナウンスに阻まれてちゃんと聞く事ができなかった
そしてそのまま開会式は進んで行きそのまま終わるかと思っていたら
『それでは最後に有志による応援合戦を行わせてもらいます』
そんな放送が流れてみんな一斉にステージの方を見てみると
『みんな!今日は張り切っていこう!!』
なぜかチアリーダーの格好をした香野と足立がいた
「・・・あれなんですか?」
好夜はどうなっているのか会長に確認すると
「香野が応援なしの体育祭は寂しいと言って始めたんだ
まぁ・・・結局は自分が楽しみたいだけだがな・・・」
「・・・会長・・・まずはその鼻血をどうにかしましょう・・・」
「・・・すまないな・・・」
いつもはかっこいい会長なのだが
今日この時だけは明らかにカッコ良さを保てていなかった
とりあえず好夜は持っていたティッシュで会長に鼻を抑えるように告げる
「ん?」
すると誰かが服の袖を引っ張ってきたので誰かと思って見てみると
「こっ好夜くん・・・!」
そこに二人と同じチアリーダーの格好をした命の姿があった
「・・・ゴハァッ?!」
あまりの威力に好夜は思わず吐血してしまう
「・・・命・・・とりあえずこれを羽織っておけ・・・」
しかしそれでも気絶だけは阻止し命に自分の上着を貸した
「・・・ありがとう・・・!」
自分のジャージを羽織り笑顔でそう言った命を見て
「こっ好夜くん?!」
好夜は耐え切れずに気絶するのだった
「全く・・・お前は忍耐力が足りないな・・・」
その後、すぐに復活した好夜は会長に怒られていた
「へぇ〜?・・・そんな事あんたが言えるの〜?」
するとチアリーダーの格好をしたままの香野が
後ろから会長に抱きついた
「ふっ・・・俺を誰だと思っている・・・そんな事くらいでは気絶はしない」
しかし会長は全く動揺せず平然としていた
「・・・鼻血出てるわよ?」
だがそれでも鼻血だけは出ているのだった
「全く・・・あんたの場合はむっつりスケベだから
素直に表現しないだけでしょ?」
香野は呆れたように会長はむっつりだと公言する
「おい・・・!俺はむっつりなんかじゃないぞ・・・!」
しかしそれを会長は強く否定する
「だったら何?その鼻血」
だがどう考えてもその否定は無理だと思っていた
「うぐっ!」
これに関しては会長も何も言えなくなってしまった
「あはは・・・てか足立さんもそんな格好するんですね?」
好夜はそれを苦笑いで皆がら足立がそんな格好をしている理由を聞く
「別に深い理由はありませんよ?
この格好をしたら本当にみんな頑張ってくれるから着て応援しているだけです」
どうやら足立に関しては天然でこの格好をしていたようだ
「・・・もう俺はツッコミませんよ・・・」
好夜はこれ以上聞くのは無理だと判断し追求するのをやめた
「はぁ・・・なんか競技が始まる前から疲れてきたぞ・・・」
もはや色々なことがありすぎて好夜はすでに疲れ気味であった
「まぁ・・・あれに関しては俺もなんだと思ってた・・・」
晃平も先ほどの流れを見ていたので心中は察していた
「ともかく体育祭は始まったばかりだからな
あまり頑張りすぎて倒れるなよ」
そう言って晃平は好夜を励ますが
「・・・今から百メートル走だよ・・・」
残念ながら今日は体育祭・・・休む暇など一瞬もなかった
「てかわかってて言ったろ・・・お前・・・」
そしておそらくはそれを晃平は知っていたはずだと思ってもいた
「まぁな・・・おまけにお前と走るのは・・・」
そう言って晃平が視線を向けたのは慶太だった
「ああ・・・あいつは本気を出さなきゃ勝てないからな・・・!」
慶太をよく知っているからこそ本気を出さないといけないと好夜は言った
「・・・てかお前はずるくね?なんで俺だけ?」
そして好夜は思った
なんで俺だけあいつと走ることになったのだと
「まぁこれも運命だと思って頑張ってくれ」
それに対して晃平は清々しくそう言い放った
「勝負だ!好夜!!」
「いや・・・言われなくても今からするでしょ・・・」
なぜかテンションが高くなっている慶太に好夜は何があったのだと思っていた
そんな疑問を持ったままいよいよ二人の番になった
「位置について・・・よ〜い・・・」(バン!)
スタート同時に二人は一斉に走り出した
スピードは両者互角だった
しかし五十メートルを超えたらへんで慶太に疲れが出始めて失速
結果は好夜が一位になった
「・・・負けたか・・・」
慶太はいつにも増してその負けを悔しそうにしていた
「・・・慶太?」
その異変に気付いたのは敬子だけだった
慶太の悔しさのわけとは一体?




