温泉は気楽に入りたいよね?
温泉・・・のんびり出来るようで出来ない!
宿へと戻って来た好夜達はスキーで汗をかいていたので
晩御飯になる前に温泉に入って汗を流してこようとしていた
「へぇ〜・・・ここって露天風呂もあるのか・・・しかも冬でも大丈夫な屋根付き」
風呂場の前に着くとそこには露天風呂も完備と書かれており
みんなはどんな風なのだろうと思っている中で
「これって書かれてないけどやっぱり混浴なのか?!」
何故か一人だけ邪な考えを持って露天風呂を楽しみにしている男がいた
「今の時代さすがに家族風呂でもない限りは混浴なんてないだろ・・・」
確かに好夜の言う通り今の時代は混浴などあったとしても水着着用だったり
もしくは貸切であるだけで誰でも一緒というものは存在しないだろう
その言葉を聞いて慶太はまるでこの世の絶望のような顔をしていたが
「・・・先に言っておくが覗きというのもやらせないからな?」
会長の言葉を聞いた慶太はまさかバレているとは思っていなかったようで
一気に身体中から汗を流し始めた
それを見てやはりかと呆れていたがすぐに慶太は我に返り
「だってせっかくの温泉なのにただ汗を流すってどうなのよ?!
どうせだったら心の疲れとかも取りたいじゃん!それが混浴なんだよ!」
なにやら筋が通っているようで通ってはおらず
みんなは一体何を言っているのだと呆れている様子だった
「しかし瑞樹の言いたい事も少しは理解できるな
温泉は広く開放的な気分になれるが見知らぬ人と共にしなければいけない分
普段は使わない配慮などを考えなくてはいけないからのんびりというわけにはいかないな」
どうやら会長もあまり温泉は好きではないようで
その理由が普段使わない神経を使うからだそうだ
「ああ・・・確かにそう言われたらそうですね・・・俺も前に温泉に入った時に
運動部の合宿と被っていてぎゅうぎゅう詰めに入った記憶があります」
「なるほど・・・あまり考えた事はないがそう言った意味では家の方がゆっくり出来るのか」
晃平も二人の話を聞いて初めて家での風呂がどれほどのんびりできるのか納得が出来た
そう・・・温泉は温泉で色んな効果があるが色んな人が共有する分だけ
一人一人のちゃんとした配慮が必要になってくるのだ
それを考えると家のお風呂の方がのんびり出来るという人も少なくはないだろう
先ほどの話を聞く限り会長と好夜はどうやらそっち側の人間のようだ
「まぁ分からなくはないですけど・・・風呂場を前にしてそれを言われても・・・」
実を言うとこんな話をしている間にもう風呂場についてしまっており
先ほどまでの会話は全て中の人に筒抜けだった
「とにかく汗は流さないといけないんだしさっさと入りましょ!
終わったら先に部屋に戻っておいていいからね!」
それを無視して香野はみんなを連れて女風呂の方へと入っていき
好夜達も外にいるわけにはいかないので男風呂へと入っていった
「・・・言いたくないんだけどさ・・・晃平って着痩せするんだな?」
脱衣所に来て慶太が最初に思ったのは晃平の体が異様に筋肉で盛り上がっているという事だった
「いや前に海で上半身は見ていただろ・・・なんで今更なんだ・・・」
しかし晃平からして見れば海でも見せていたはずなので今更な感想だった
「でも確かに慶太の言う通り夏に比べてもかなり肩幅とか大きくなったんじゃないか?」
だが同じく海で一緒だった好夜からしてみても晃平は一回り大きく見えていた
おそらくそれは夏からたゆまぬ努力をし続けたからだろうと思っていた
「自分では全く分からないが・・・結果として現れているのならば嬉しい事だな
あとは来年の試合で試すしかないがな」
確かに晃平の言う通り試合という形で試す以外に自分が成長しているのか知る事は出来ない
だからこそ二人の言葉で自分の成長を知れて嬉しいとも思えたのだ
「確か津城は一年生ながら野球部の部長になったんだったな
すまないな・・・あのバカがそんな大役を任せてしまって・・・」
「そんな事ないですよ?確かに最初は自分に出来るかどうか心配でしたが
実際にやってみるとどれほど選手に対して厳しくしなくちゃいけないのか
そしてそれに対して自分はどんな形で答えればいいのか
やればやるほどいい経験になると自分は思っていますから」
晃平の言葉を聞いて会長は確かに彼以外に部長を任せられる人間はいないと
初めて龍間のやった事を理解できたような気がしていた
「うへぇ〜・・・部長ってそんなに色々考えてやらなくちゃいけないのか・・・
来年もしも任されたら絶対に辞任したいな〜・・・」
その話を聞いて慶太は自分は絶対に部長にはならないと言っていたが
((いや・・・絶対にこいつは部長に選ばれる事はない・・・))
幼馴染だからこそ好夜と晃平はこいつに部長の話が来るわけがないと思っていた
「おお〜!かなり広いな?!これなら十分にゆっくりできるんじゃないか!!」
風呂場に着くとそこにはいろんなお風呂がありしかもかなり広かった
これならば先ほど会長が言っていたような窮屈さはないんじゃないかと慶太が告げると
「確かにこれならゆっくりとできそうだな・・・と言いたいところだが・・・
どうやらそうでもないみたいだぞ?」
会長も最初はそんな風に思っていたようだが次のものを見てそうではないと確信した
慶太はどうしてそう思うのだろうと周りを見てみると
「・・・えっと・・・なんですかあの雪山にいないはずの集団は・・・」
そこにいたのは明らかに雪山ではなく
海のある場所にいそうなムキムキの漁師の老人達だった
それ以外にも白い髭をかなり伸ばしてまるで仙人のような人までいた
そう・・・明らかに温泉で出会うはずのない人達がそこにはいたのだ
「・・・確かに・・・これで心置きなくは無理ですよね・・・」
これにはさすがの晃平もゆっくりするのは無理だと同意していた
「・・・てかこの人達は一体何をしにここに来たんだろうな・・・」
とにかくみんなは体を洗い十分に汗を流してから温泉に浸かった
(でも・・・本当に落ち着けないな・・・この状況じゃ・・・)
どこを見ても先ほどの屈強な老人達が周りを囲んでおり
まるで仲間はずれのような感覚に慶太は陥っていたのだが
「・・・てか・・・晃平は逆に馴染み過ぎじゃないか?」
隣を見てみるとそこには全く違和感なく彼らの中に入り込んでいる晃平の姿があった
それを見て慶太はさすがに馴染み過ぎていて本当に他人かと思っていた
「あれ?そういえば会長と好夜の姿が見えないけど何処に行ったんだ?」
二人で温泉に浸かっているといつの間にか会長と好夜がいない事に気がついて
慶太は周りを見てみるのだが姿がなくもしかして露天風呂に入ったのかと思っていると
「二人なら汗を流してすぐにサウナに入ってくるって言ってたぞ」
どうやら晃平の話ではここで温泉に浸かるよりもサウナにいた方がいいと思ったようで
二人は汗を流してすぐにサウナへと向かってしまったそうだ
「そうなのか?それじゃあ少しだけ様子を見に行くかな!」
実を言うと慶太はサウナというものが初めてどんなものなのか見に行く事にした
サウナの扉を見つけると窓が付いていたので試しに中の様子を見てみると
「・・・なんか・・・拷問みたいになってないか?」
その窓から見えたのは尋常ではない汗をかいながらそれを耐えている二人の姿があった
二人の顔からはまさに鬼気迫るものがありサウナを体験した事のない慶太からして見れば
拷問を受けているのではないかと勘違いしてしまうほど過激なものだった
(さっ・・・さすがに入るのはやめておこう・・・!)
自分はあんな風になりたくないと思った慶太は急いでサウナの前から消えようとするが
「えっ?」
いつの間にか慶太の後ろには先ほどまで温泉に浸かっていた老人達の姿があり
その人達に押されていく形で慶太はサウナの中へと入ってしまった
しかもそれと入れ違いで二人は出て行ってしまったのでもはや助け舟すらなかった
「誰か助けてぇぇぇぇぇ!!」
「・・・なんか声が聞こえた気がしたけど・・・気のせいですかね?」
何か慶太の叫び声が聞こえたようが気がしたが好夜は全く気付かずに体を洗っていた
「それにしても会長がサウナを知っていたとは驚きでしたね
ああいうやつは正直苦手だと思ってましたよ」
実を言うと好夜は会長に誘われて一緒にサウナに入っていたようで
まさかそんな事を言われるとは思っていなかった好夜はかなり驚いたらしい
「確かに俺も最初はあまり気にしてはいなかったんだが
龍間と真島に我慢対決をしようと言われてな
その時に意外と気に入ってしまったというわけだ」
どうやら会長がサウナを気に入ったのは二人の勝負がきっかけだったようで
その時に思った以上に気持ち良かったらしくそれ以降は入るようになったそうだ
「へぇ〜・・・てかあの人達はサウナを間違えてませんか?」
それを聞いて会長は確かにその通りだと苦笑いするしかなかったらしい
「好夜!慶太の姿が見えないんだがどこに行ったか知らないか?」
二人が体を洗い終えるとそこへ晃平が姿を現し慶太の所在を聞いてきた
しかし二人は残念ながらその姿を見ていなかったので知らないと首を振る
「そうか・・・二人の様子を見に行くと行ってサウナに行ったと思ったんだが・・・」
晃平からそれを聞いた瞬間に二人は
そういえば老人達がたくさんサウナに入ってきた事を思い出し
もしかしてその中にいたのではないかと思ってサウナに向かうと
そこには全身を真っ赤にして倒れている慶太とそれを介抱している老人達の姿があった
「ん?もしかしてこの兄ちゃんの知り合いかい?
だったら今度からサウナは出たい時に出ていいって教えてあげといてくれないか?」
慶太を介抱していた老人の一人が苦笑いしながらそう言っており
これに関しては三人も何も言わずにただ頷くしかなかったのだった
「・・・もう二度と・・・サウナには入らない・・・!」
実際に作者は温泉で仙人のような老人と遭遇した事があります
最初見た時は幻覚かと思って自分の目を疑いました




