最後が近づくと不安になる
今回は晃平と明希音が中心の話です
初日から色んな事があったがそのおかげなのか翌日は特に問題もなく
そして・・・いよいよ学校祭は今日で最後を迎える事になったのだが・・・
「・・・やる事がないな・・・」
そんな中で一番困っていたのが他でもない晃平だった
初日で先代の部長達が暴れてしまった所為で残念ながら野球部のやる事はなくなり
そして昨日はその隙を潰す為にクラスの出し物を手伝う事になったのだが
そのお陰なのか所為なのか今日は何もやる事がなくなってしまったのだ
(好夜達は舞台の準備があって忙しいし
敬子も確か今日はバレー部の出店に参加してるんだったな・・・
こうなってくると本格的にやる事がなくなるな・・・一人で見て回るか?)
他のみんなが忙しいので自分一人で学校祭でしか回る事がないと思っていると
「あれ?晃平くんもクラスから追い出されてしまいましたか?」
隣のクラスから明希音が出てきて晃平と同じく追い出された事を告げる
「まぁな・・・というか珍しいな?
明希音はクラスの出し物に出なくても他にも仕事があるんじゃないのか?」
確かに晃平の言う通り明希音は手芸部も兼任しているはずなので
そちらの出店や舞台の衣装の着付けなども手伝う事は山ほどあるはず
それにも関わらずどうして暇そうにしているのか疑問に思っていると
「実は昨日の時点で手芸部の出店も品切れになりまして・・・
クラスの手伝いも昨日やってしまったのでやる事がなくなってしまったんです」
どうやら手芸部はすでに商品を完売してしまったようで
それに伴い衣装の着付けなどは手芸部の先輩方に取られてしまったらしい
そして昨日はクラスの手伝いをしていたので今日はまさに何もない状態になってしまったのだ
「なるほどな・・・俺と同じ状況ってわけか・・・それなら一緒に学校祭を回るか?」
晃平はやる事がないのならば自分と一緒に学校祭を回らないかと明希音を誘う
「そうですね!一人で回るよりも二人で回った方が楽しいですよね!」
こうして二人は一緒に学校祭を回る事になりまずは三年生の出店を見に向かった
「ここは確か会長のクラスだったな・・・という事はあの二人もいるのか・・・」
晃平は何か嫌な予感がしているとやはりクラスの方で騒ぎになっていた
中の方を見ているとそこには何故か一人の客に対して商品を勧める二人の姿が見えた
「・・・何してるんだ・・・あの二人は・・・」
知り合いだからなのか二人の失敗を見ていると晃平は落ち込むしかなかった
「えっと・・・とりあえず止めた方がいいですかね?」
どうにかして晃平と明希音は二人の喧嘩を止めると三年生に商品を奢ってもらったのだった
「なんか・・・ちゃんと回った気がしないな・・・」
何とか三年生の出店を回る事が出来たのだが正直な話をするのならば回ったというよりも
問題を解決しに仕事で来てしまったような感覚になっていたのだった
「次は二年の出店に向かうとするか・・・今度こそちゃんと回りたい・・・」
晃平は今度こそちゃんと回るようにと祈りながら次は二年生の出店へと向かった
最初の二年生の出店でやっていたのは射的で当たった的の点数分の商品をもらえるようだ
「へぇ〜!因みに商品はどんなのがあるんですか?」
明希音は何点でどんな商品がもらえるのか聞くと
一番高い点数のところに可愛いぬいぐるみが置かれていた
それを見ていた明希音はとても欲しそうな顔をしていた
「・・・はぁ・・・自信はないがとりあえずやってみるか・・・」
晃平は先ほどちゃんと回れなかったのもあるのでとりあえずはやってみる事にした
するとそこで渡されたのは普通の射的で出すような銃ではなく何故かエアガンだった
「・・・あの・・・一つ聞きますけど・・・許可は取ってるんですよね?」
まさかの物を渡された晃平は本当に許可をもらってこれを使っているのかを問う
すると何人かの上級生は完全に目を逸らして聞かない振りをしていた
(・・・後で会長達に言ったとしても無駄だろうな・・・)
今日で学校祭は終わってしまうのでおそらくは言っても無駄だろうと晃平は悟るのだった
「まっまさか・・・本当に全部当てられてしまうなんて・・・!」
上級生の人達は本当に一回で全てを当てられるとは思っておらず
完全にやられたと片膝をついて倒れていた
「・・・なんというか・・・申し訳ありません・・・」
さすがにやり過ぎてしまったかと晃平は頭を下げて謝っていたが
別に悪い事をしているわけではないので上級生がフォローして商品を選ばせた
しかし晃平は選ぶ事はなくまっすぐに明希音が見ていたぬいぐるみを受け取った
「ほら・・・これが欲しかったんだろ?」
晃平は先ほど明希音が欲しがっていたのを
ちゃんと見ていたようでこれの為にやってくれたそうだ
「ありがとうございます!大切にしますね!」
まさか貰えるとは思っていなかった明希音はとても嬉しそうにそのぬいぐるみを抱えていた
それを見て晃平も嬉しそうにしながら次の出店へと向かった
次の出店で待っていたのは定番中の定番であるお化け屋敷だった
「・・・お化け屋敷か・・・こう言ったのは苦手なんだがな・・・」
珍しく晃平は乗り気ではなく入るのはやめようとしていたのだが
何故か明希音が笑顔で彼の腕を掴んでおり中に入る事を強制していた
「・・・やっぱり入らないとダメか・・・」
完全に逃げられないと思った晃平は仕方なく諦めて中に入る事にした
中に入っていくと高校生のお祭りながら
かなり作り込まれて普通の人間ならば怖がるのは間違いないだろう
しかし・・・彼らは残念ながら普通の人間ではないのでどうなってしまうのかは明らかだった
「・・・やはりこう言ったのはどうリアクションをすればいいのか分からないな・・・
驚いた方がいいのだろうとは思うのだが・・・驚くにはインパクトがな・・・」
実は晃平がお化け屋敷に入りたくないのは怖いのが苦手という訳ではなく
単純に出てきたお化けに対してどんなリアクションをすればいいのか分からないからだった
「あはは・・・やっぱり晃平くんを驚かせるのは無理だったみたいですね・・・」
その隣にいる明希音も全くと言っていいほど驚いておらず
晃平のリアクションに対してやはりダメだったかと苦笑いしていた
(((・・・この二人・・・お化けを無視して歩いている・・・?!!)))
もはや完全にお化けを無視して突き進んでいる二人を見てショックを受ける上級生達だった
「・・・なんか・・・別の意味で迷惑をかけてしまった気がするんだが・・・」
お化け屋敷を抜けた二人は全くと言っていいほど怖がっておらず
彼らが帰った後のお化け屋敷では何故か落ち込んでいるお化け達で溢れてしまい
別の意味で怖がられて売り上げに貢献したという事を二人は知らなかった
「・・・なんだか申し訳ない気持ちになったな・・・演劇部の舞台まであと少しか・・・
外の部活がやっている出店を回ったらちょうどいい時間になるかもな」
晃平は時計を見て演劇の舞台にはまだ時間があるので
残っている部活の出店を見てから体育館の方へと向かう事にした
と言ってもやはり最終日なだけあってそこまで残っている出店はなかった
(まぁ・・・仕方ないといえば仕方ないか・・・時間さえ潰せればいいんだし
何か飲み物とかでも買って休憩すればいいか・・・)
元からしっかりと見るつもりで外に出てきた訳ではないので晃平は何か飲み物を買って
そこら辺で休憩出来ればいいと考えていると隣にいるはずの明希音の姿がなかった
どこに行ったのだろうと回りを見ていると
何故かすでに飲み物を売っている出店で何かを買っていた
「お前な・・・せめてどこかに行く時は俺に声を掛けてくれ・・・ってなんだ?」
晃平は明希音に対して勝手に行動しないように注意していると目の前にカップを渡された
「何って・・・さっき取ってくれたぬいぐるみのお礼!
晃平くんあげるって言っても受け取ってくれないから先に買っちゃった!」
それを聞いて晃平はまさしくその通りだと何も言えず顔を逸らしていた
そんな様子を見て明希音は苦笑いしながらとりあえずは飲み物を渡すのだった
「はぁ・・・それにしてもあっという間だったね〜・・・
なんか連日やってたなんて思えないくらい!」
明希音はあっという間の出来事でこの数日がまるで一日だけだったみたいに感じていた
「そうだな・・・まぁそれだけ忙しかったし楽しかったからな・・・
まぁ・・・俺達に以上にそれを感じているのはあいつらだろうけどな」
晃平もそれは同じだと思っていたが自分達以上にそれを感じているのは
今から舞台に上がるであろう好夜達だと告げる
それを確かにその通りだと明希音は笑いながら同意していた
「・・・午前の部が終わったらいよいよ片付けが始まって・・・
最後は後夜祭を残すだけですね・・・本当にあっという間で・・・なんだか夢みたいです」
先ほどと同じような事を言っているようだったが晃平はすぐに分かった
その言葉には先ほどにはなかった何か寂しさや悲しさのようなものを感じていた
「・・・大丈夫だ・・・別にこれが終わってもまだ二年ある・・・
いや・・・それから先もまだまだみんなで集まってバカをやればいい・・・」
おそらく明希音はこの学校祭が終わってしまうのを怖がっていたのだろう
このまま終わってしまったらみんなと会えなくなってしまうのではないかと
そしてそんな不安を抱かせる理由を与えたのは自分だという事を晃平は理解していた
だからこそ証明する必要があった・・・もう自分はどこにもいかないという事を・・・
それを言葉で証明しようと思ったが
それでも足りなかったようで明希音は何も言わずに両手を広げていた
(やれやれ・・・今日は随分と甘えん坊だな・・・)
晃平は心の中で呆れながらも明希音を抱き締めて頭を撫でた
「・・・約束ですよ・・・来年も再来年も・・・それから先も・・・みんな一緒ですからね・・・」
この後で好夜達の舞台を見に向かったのだが実はこのシーンを見られており
それを揶揄われて怒った晃平は激励の言葉を言わずに二人に拳を振り下ろすのだった
次回はいよいよ学校祭編最後です!
 




