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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
98/109

4


「はい!!タローの良いとこ見てみたいっ!!ぐーっとぐっとぐっとぐっとぐっと参りましょー!!」


「なんだなんだぁ!チリの軍人はその程度かぁ!!飲んで〜飲んで〜飲まれて〜飲んで〜飲んで〜飲みつぶれても眠らせねー!!飲んで!」



僕達立花宗則と、知里千景はぐーっとぐっとぐっと日本人の評価を下げていた。


「日本人。恐るべし」


僕の煽りを命からがら耐え抜いたイヴァンが、今にも胃に満タンに入ったビールを吐き出しそうにしてボヤいていた。


「なんだなんだ!まだまだじゃんじゃん持ってこーい!」


なんせ気分がいい。

さすが我が後輩。

僕の好みを知り尽くしている。


ビールはアサヒ!

ウイスキーはジャックダニエル!

焼酎は芋・米・麦!

最高である!

料理も、日本食、中華、フランス料理にイタリア料理、その他にも国際色豊かなラインナップ!

熊本太郎。

この子、最高ではないか!!


「うぇっぷ。ぶ、部長。ちゃっとタンマっス」


知里ちゃんとの飲み比べにまんまと根を上げてきた熊本くん。

何も煽って飲ませるだけではない。

そんなパワハラ先輩、言語道断。

自分も飲んでこその威厳である。

立花宗則。知里千景。

両者、未だ敵知らずの酒豪!

一度だけ、互いに飲み比べてみたがどえらい金額になったので、以降禁止されている。


「タ、タチバナ様、チ、チサト様。御無理は禁物ですよ?」


トイレから青い顔して戻ってきたエリームが、僕たちを見世物のように見物している人混みを掻き分けてやってきた。


「ちょ!!リムさん!やめて!?無理してないからあの人たち!通常営業だから!そんな煽るようなこと言ったら人一人死ぬよ!?」


「な!?あれで!?まさか、飲酒量と気魄量も関係性が?」


ンなわけあるか。

そんなんで英雄になれるなら、ガクトは史上最強の英雄である。


「うひょー!?チサトちゃんもダーリンさんも異常だね!!私もまあまあイケル方だと思ってたけど、こりゃ相手したら死んじゃう」


「はぁ、みっともない飲み方するわねぇ。味わって飲みなさい?せーっかくこんな上物のワインがあるのに、おバカねぇ」


「がっはっは!アナの言う通りだ!普段飲めないモン揃えてくれたアナナキに感謝しかねぇなぁ!」


大人な紳士淑女連中は、僕にはよくわからない高級ワインを、格付けチェックの芸能人ばりにクチュクチュして味わっている。


「いーなー。僕も飲みたいなー」


絶対言うと思ってた。

この思春期真っ盛りの小坊主の事だ。

大人に混じって飲酒したがるだろうと予想していたが、飲ませるわけにはいかない。


秘技!この世界では年齢での飲酒制限はありません!!は、ゴリ押し出来たとしても、この子のあの小悪魔的な面を見てしまっては絶対に飲ませられない!

必ず!波乱の展開になるはずだ!


「ディミ助。チッと飲んでみるかい?」


「コラ!千景!やめんさい!」


親戚のおっちゃんみたいに、飲みたがっているディミトリーの眼前に焼酎の入ったグラスをかざしている知里ちゃん。

ディミトリーもそれに激速で首肯している。


「師匠!!僕だって飲んだ事ないわけじゃないんです!!」


「ンァ!?おま!なんて不良な事を!」


大人とは往々にして若者に自分の事は棚に上げて説教するものである。


「不良じゃないもん!ビールは良かったんだもん!僕が9歳くらいの頃はまだジュースと一緒だったんだもん!!」


ワッツ!!?

ロシアの人恐ろしや!!


そう言えば聞いたことがある。

ロシアのアルコールに対しての法改正があったとかなんとか。

ロシアンジョークかと思ってたけど、本当の事だったのね!?


「マジか!?ビールをジュース扱いする子初めて見たよ!」


「あんなの酔わないもん!ロシア人なめんなちきしょー!」


ん?あれ?

なんかいつもとディミトリーの口調違くない?


あ!!

僕の目は捉えた。

しれーっと知里ちゃんが、ディミトリーの持っているジュースに焼酎を注ぎ入れているところを!


「なーにをしとんねん!」


「ふくべ!!」


脳天チョップをお見舞いしたった。

だが時すでに遅し、グイッと手に持ったグラスを空ける漢の子。


「まぁまぁ、ここはもう一度あの禁忌の言葉を使う時っス。我々もしっかり監視しときやすから」


脳天チョップが優しすぎたか!

ヘラヘラ笑っている知里ちゃんにもう一度お見舞いしてやろうかと構えていたら、間に割り込んできた熊本くん。


「師匠!本当に大丈夫です!一回パパのウォツカをええいちくしょーって言って飲み干した時も軽く酔っただけだったんで!」


はい、アウトー!

それは絶対不良。

いくらロシアでも不良です。


しかし、ウォッカを飲み干したとは。

さすがとしか言いようがないロシア人の血。


それなら酔って醜態を晒すことにはならないだろうと、この場は見逃すことにした。


「いいなー、俺も飲めたらなー」


またもや羨望の声。

可愛らしい屈強ヒロインが、オレンジジュース片手に現れた。


「あー、バータルはゲコだったな。なんか悪い」


どう考えてもディミトリーとバータル。

見た目的に逆である。

コイツがウイスキーの瓶を片手にしているのを想像すると納得しか出来ないのだが、現実には逆。


「カクテルもダメか?」


「ダメだ。ムネノリが朝までトイレで看病してくれるなら構わんが」


どんだけだよ。

むしろイヴァンからウイスキー飲まされた時がどれだけ悲惨だったか考えたくもない。


「そうかぁ、タルタル飲めないのかぁ」


また来たな波乱製造機。

チラチラ、バータルの持っているオレンジジュースを見ている知里ちゃんの考えなど手に取るようにわかった。


「千景。それはあかん。ゲコの人に無理矢理飲ませるのは我が部の掟に反する!粛清するよ?」


「くっ!なぜバレた!って!粛清!?あの戦闘での死亡者よりも、粛清によって死んだ人の方が多いと言われる新撰組の副長ばりに怖いのだけれど!?鬼はここでも鬼なの!?」


テンション上がって蘊蓄を語り出し始めるところを見ると、そこそこ酔っている模様。

誰が鬼じゃ。


「ふぇー!意外や意外。タルタルさんお酒飲めないの!?」


波乱製造機のマブダチ現る。

イザベルも案外いける口なようで、いつものテンションよりやや高めなだけのように見える。


「おー、アンタがイザベルさんか。なかなか話すタイミングなかったがよろしくな!ゲコのバータルだ」


どんな自己紹介だよ、可愛いなコイツ。


あ、そういやぁ、イザベルに興味津々だったな。


「うぇいうぇい!こちらこそですます!厚い胸板と一緒でそのハートも炎のように熱いバータルさん!イザベルだす!」


「な!!そ、その件はそ、その」


確実に弄ってきているイザベルに、タジタジなバータルは、グラスの縁をその図太い指で可愛くなぞっている。


いじらしいとはこの事だな。


「ぐふふ。かわゆいですねぇ!デイジーちゃん恥ずかしそうに隅っこでモジモジしてるから気分が乗ったら話しかけたげて下さい!見た目わかんないでしょうが喜ぶと思うんで!」


「お!おう!わかった!ありがとうイザベルさん!!」


ニコニコのイザベルを女神かなにかかと思っているのか、イザベルの手を掴んでそこに頭を付けている。

デイジーを思い、バータルにすら気を遣えるイザベル。

さすがやる時はやる女の代名詞。


その後すぐ、気分が乗ったらと言われていたくせに、そそくさとデイジーの元へ小走りに向かっている。


「可愛らしいですねバータルさん!」


「激しく同意する」


その誰もが一目見て威圧を受けるだろう巨大な背中は、今やキャピキャピという擬音がよく似合う可愛らしいものになっていた。

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