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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
89/109

6


楽しかった。

昨晩の男の子同士の戯れ合い。

恥ずかしくて死にそうな僕が、さも立ち直ったみたいに普通に接するのを、普通に接し返してくれた。


強くて、厳しくて、優しくて、スケべ。


僕が憧れる人達はみんな格好いい。


師匠も、兄さんも、リムさんも。

みんな格好いいんだ。

僕はあんな風になりたい。


このところ少しだけその気持ちに迷いが出てしまった。

だけど僕は男だ!

女々しくなんかないんだ!


今日の隊対抗戦で、僕はそれをあの3人に見せつける!

昨日の恥ずかしくて、女々しい僕を忘れさせるんだ!


僕は朝から気合いが入っていた。

なんとしてでも良いところを見せたかった。

姐御を前にして、かなりバツが悪い気持ちになったが、それも全て払拭する。

全部引っくるめて、今日僕は男になる。


「あらまディミ助。えらく気合い入ってるね」


横一列に並んだ僕、朱さん、カメンガさんの前に堂々と立つ(師匠曰く魔王立ち)姐御が、僕のやる気を見抜いて目を丸くしていた。


「はい!!絶対勝ちます!!」


「おおー。良き良き。ンガンガもやる気かい?」


「はい!!」


「そかそか。この前の第一隊じゃ不完全燃焼だたもんな」


今日の相手は第三隊。

姐御のライバル、ディジーさん率いる曲者集団。

暗殺部隊と例えられる速攻を得意とするある意味一番油断ならない隊。


しかしそんなライバルを相手にするにしては、いつもの姐御の闘争心があまり見えてこない。

予想では、『オラァ!いてまうゾォ!』くらい血気盛んに、この事前の打ち合わせを行うと思ってたのだが。


「あー、皆の者。今日あたしゃ使いモンにならんと、先んじて言っておく」


「うぇ!?体調でも悪いんですか!?」


やっぱりか。

体調が悪いのか?

姐御がその状態では、やはり僕が一段と頑張らなくては!


「バカ。ディミ助。よくみろ」


となりの朱さんが、僕の肩を小突く。


朱さんの指差す方向は、姐御。


僕はバツが悪くて、ちゃんと顔を見ていなかったみたいです。


朱さんが指差す姐御の顔は、テヘヘと笑いながらも般若のソレ。

口からなんか、蒸気みたいなのが見える。

幻覚?

姐御、人間やめ過ぎだよ。


「へへへ。今日はねー、バーベキューをするの。メスゴリラの肉をねー、バーベキューするの。だからねー、てめえらには構ってあげられねーの。おわかり?」


サイコパス?

沸々と湧き上がってくる衝動を必死に笑顔で抑えているつもりなのだろう。

だけど、漏れ出てます。

至る所から、漏れ出てます。


ニコニコのギトギトな笑顔で僕らを見る姐御に、しっかり体の芯から震えをきたす僕ら3人。


「朱さんや。今日は君に全権を委任しますからね。ンガンガとディミ助を手足のようにお使い?」


「わ、わかった。しかし、あの第三隊が一騎打ちを見逃すとは思えんが」


朱さんの言う通り。

いくらデイジーさんが姐御との戦闘を楽しみ?にしてたとしても、それをアナさん達が見過ごす筈がない。

絶対に、決め切るタイミングで横槍を入れてくるはず。


「おバカちゃんなの?朱さんや。ねえ?愚問過ぎぬ?それ、愚問過ぎぬ?」


「あ、あ?ま、まさか?全部を?」


何を言っているのだろう?

姐御がお怒りなのはわかるけど。

全部って?


「メスゴリラの後ろから子ゴリラが現れようと、私の背後でその子ゴリラがドラミングしようと、私に近寄るゴリラ子ゴリラどもは殲滅、これ至極当然の理である。案ずるな皆の者。妾は誰ぞ?」


「「魔王さまです!!」」


ま、まさかだ!

朱さんの発言はそういう意味か!


条件反射的に全員で呼応したけど、本当に大丈夫なのだろうか。

第一隊の時も、『タルタルは任せろ』と言い飛び出して行き、結果イヴァンさんまでも加わっての2対1を難なくこなしていた姐御。

その実力は、僕ら第二隊が一番誰よりも絶対に何が何でも最も知り尽くしているけど、さすがに丸々一隊相手にするのは、どうかと。


いや、待てよ。

なにも全部任せろと言われている訳ではない。

僕らも相手と同じ数だけ隊員がいるんだ!

しっかりしなくては!


今日の指揮は副隊長の朱さん。

ちゃんと指示を聞いて、迅速な対応を心掛けよう!

っていうか今日も昨日も一昨日も基本細かい指揮は朱さんが行なっている。

言ったら召されるので言わないけど。


未だに笑顔をとりあえず貼っつけている我らが隊長。

通称、生物界最恐の魔王さまは、僕らの忠誠心に御納得なされたようで、クルリと背を向けた。


「あー、だがしかし。ンガンガ。其方に一刻の猶予を与える。誉と思え」


「は!!と言いますと!?」


直立不動のカメンガさん。


「先の戦での醜態はらさでおくべきか。其方先陣を切り、突っ込むが良い。一つなんでも良い。ぶちかまして来るまでは帰って来るでない」


「あ!有り難きお言葉!!必ずやドカンと一発ブチかましてご覧に入れます」


「うぃ」


短く、灰色の脳細胞的な返事を返し、歩を進め始めた姐御の小さくて悍ましい背中を僕らは黙ってついて行く。




※この隊は恐怖により統括されています。

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