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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
83/109

4


「あんた!!」


激怒も勿論のことだろう。

これは怒られて仕方あるまい。


「そんな怒ることないじゃない。むしろ喜ばしい事でしょ?ゴリラ好きなんて特殊よ?最早、希少よ?」


「煩いわね!誰がゴリラよ!アンタみたいに万年盛ってないのよ!」


「へーんだ!なんの悪口でもないね、そんなの!旦那に盛って何が悪い!大体ウブかおのれは!」


「ウブのなにが悪いのかサッパリだわ!淑女なのよ!私は!アンタと違ってね!」


「これ、千景。おやめなさい」


「ムネリン!?まだ釈迦モード!?」


誰が釈迦モードじゃ。

むしろ褒め言葉まである。


「ごめんね、デイジー。知里ちゃんも悪気はないんだよ、そう見えないだろうけど」


現在、バータル選手退場によりカオスと化したこの状況をなんとかおさめようと死力を尽くしている立花です。


動く大波乱と野次馬おっさんをフューチャリングすることだけは避けたかったので、隊長ならば隊員を慰めてこいと、なんとかそれらしい理由をあてがい、イヴァンをこの場から遠ざけた事は、僕の陰ながらのファインプレーであると言えよう。


「それにしても驚いた。あのバータルがデイジーに告白するとはな」


「ジョージ?あなたこの事アナに言ったら刺殺すからね?」


デイジーの恫喝に対し、口に手を当てる動作でお茶目に遇らうジョージさん。


いや遅いと思う。


「へぇ、うちの隊長に恋する男の子がいるのぉ?」


「アナ!?」


さっきから後ろにいました。

どんだけ暗殺慣れしてるかわからないが、全く気付いていないデイジーを見る限り、アナおそろしや。


「ねえ!なんで!?チサトちゃんはプロポーズ!デイジーちゃんは愛の告白!なんで!?なんでそんなにみんなモテモテ!?」


アナと共に現れたイザベルが、目をウルウルさせながら嘆いている。


いや、知里ちゃんに至っては当初から恋人連れだからね?

しかもデイジーの場合かなり特殊。

戦闘して惚れられるって、類を見ないから。


「あらぁ、じゃあ次は私かしらぁ?」


「アナ?聞いてた?!ウチをなんで飛ばすの!?」


アナの痩身を揺さぶってやいのやいのと言っているイザベル。


「仕方ねーな。イザベル。俺が」

「絶対いや」


もう可哀想になってきたよジョージさん。

ハーレムなのにね!

本当だったらハーレムなのにね!


俺人間世界じゃモテるんだぜ!?っと、後方を通りすがろうとしていたカメンガくんを捕まえて涙目になっているジョージさん。

流れ弾を受けたカメンガくんも可哀想である。


「それでぇ?どうするのかしら?」


全員同じジャージなのに、何故かセクシーな印象を受けてしまうアナさんのナイスバディが、腕を組むことによって尚強調されている。


「どうするもこうするも!今はそんな事してる場合じゃないでしょ?」


「その割にはその場で断らなかったんでしょぉ?」


「そ、それは!仮にも好意を持ってくれたバータルに、失礼でしょ!?」


「おい、メスゴリラ。その言い方だとタルタルを振るつもりじゃあるまいな?」


「だから!今はそんな時じゃないって言ってるの!」


おや?


この場にいる全員が思っただろう。


「ごめんなさいねぇ、うちの隊長ぉ、ちょっとチンチクリンなのぉ」


アナが全員に向けてそう謝ってきた。


「ちょ!なんでよ!?」


「だって、あなたそれぇ、こんな状態じゃないならお受けするって言ってるのとぉ、同じよ?」


全員、首肯。


その全員の反応を見て、さっきからほんのり赤い顔が満遍なく朱色に染まった。


「デイジーちゃん。わかりやすっ!?素直じゃないとかじゃなくて逆に素直なのかも!?」


イザベルに突っ込まれる始末である。


「ーーーっ!」


あ!!

最早居た堪れなくなってしまったデイジーは、イザベルの横を脱兎の如く通り過ぎ、戦闘中並みの速度でホールから出て行った。


「あらぁ、弄りすぎぃ?」


アナが全員にそう尋ねてきたので、僕たちはしっかりと首を横に振った。



当の本人達逃走により、場が通常営業となったので、各々別の行動に移り出した。


とりあえずはイヴァンがバータルの所へ行ってるし、デイジーは一人になりたそうだしと、この件は一旦保留にした僕は、さっきからずっと小脇に抱えていたディミトリーの手を取った。


修練2日目の開始である。


「師匠、師匠」


ホールにて、知里ちゃん、ディミトリー、合流したカメンガくん、朱さんという第二隊メンバーに囲まれながら、手を握るのみの僕はボケっと第二隊の会話を聞いていた。

そんな折に、いつも目を潤ませているディミトリー坊ちゃんが話しかけてくださった。


「おん?どした?」


「すごいオフってますね」


すみません、疲れてました。


「今日訓練してた時思ったんですけど、気魄の色ちょっと変わってたです!」


「お?そんな早く効果現れたの?」


「みたいです!ふよちゃんも言ってたから間違いないかと!」


「あれ?そういえばふよちゃんは?」


「ふよちゃん今日はのっぴきならない用事らしくて付き合えないって謝ってました」


のっぴきならない。

今日び聞かねえなあ。

と、一応言っとく。


「それよりディミ助。今日えらく動きが良かったな!」


朱さんもディミ助呼びなのね。

もしかして第二隊全員そうなの?


「本当ですか!?朱さん!嬉しいです!」


「僕もそれは思ったよ!隊長の攻撃避けるなんて凄いよ!」


ディミトリー大絶賛中。


知里ちゃんの攻撃を避ける。

生半可では無理だと体が覚えている。


「それなンガンガ。あたしゃビックリしたよ。ディミ助の急激な成長って、そのムネリンの修行と関係あるのかね?」


「えー、どうだろうねぇ」


「ムネリン完全にオフってるね!?」


バレている。


「いやごめんごめん。なんか付与してたらボンヤリしちゃって」


「え!?師匠大丈夫ですか!?」


心配気なその表情も可愛らしい。

眼福です。


「全く気にしないでいい。キツイとかじゃなく、ただポワーンとしてるだけだから大丈夫」


「ウトウトしてるよ?ムネリン」


「えー?全然眠くはないよ?」


「今にも寝そうですよ?」


「カメンガくん。そんなにかい?」


「師匠、すぐご飯食べ終わりますね!」


「え、マジで気にしなくていいよ?本当マッサージ受けてる感じだから。むしろまだ座ってたいまである」


体のあちこちが火照っている。

多幸感?

眠くはないが、それに近いフワフワした気分になっていた。


「大丈夫なのか?」


「朱さんまでー?大丈夫大丈夫ー」


「え、ディミ助変われ。なんか可愛いこのムネリン」


「おやめ」


「単純明快!?」


なんだろうこの感覚。

覚えが無いではないが、それは確か思春期の悪しき頃の記憶。

どれだ?シンナー?いや、違う。

しかし、その類のモノに似ている。

多幸感。

悪い気は全くしないが、キマっていると表現されるソレである。

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