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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
82/109

3


マリエフ・アーレフ。

自己紹介の場面以来、その姿を見せない謎オブ謎。

隊編成にも組まれていない、特殊任務者と位置付けられているという事しかわからない子。


まさかデイジーの口からその名前が出てくるとは思いもよらなかった。


「マリエフか。気になってはいたけど、なんか触れちゃいけないオーラ満載だったからなぁ」


「私も良くは知らないわ。アナが随分気にかけてるって事と、そのアナがイザベルに癒しの力を貸してくれって頼み込んだ事くらいしか知らない」


「イザベルの癒しの力を?」


「うん。アナ曰く、アナと同じ部類の人間だって言ってたわ。それ以上はアナもイザベルも言わない。言わないのを聞くのも気が引けるから私は聞いていないわ」


デイジーの判断は解る。

言って来た時に聞く。

これが一番だ。


「特殊任務か。俺も気になってはいるが、アナに聞く勇気もないからな。変に聞いてお仕置きは勘弁だ」


なにがあるの?第三隊は。

ねえ、ジョージさん。

なんで身震いしてんの?

お仕置きってなに?

僕、気になります!


「そうか、じゃあそのマリエフって子のとこにイザベルさんはいるのか。話してみたかったけどなぁ」


バータルの興味は、マリエフよりイザベルにあるようだ。

初恋の相手が仕えるとまで言う人物が、気になったのだろう。

なんなら、この対人関係において壁はおろか、薄皮一枚だって取っ払う奴が、さっきからイザベル"さん"と言っている事こそ、それが顕著に表れている。


「あら、バータルはイザベルに興味津々なようね」


あら?なんか雲行きが怪しいねこれ。


「あ!?違うぞ!?俺はディジーにそこまで言わせるイザベルさんってどんな人か気になっただけだ!デイジーにしかそんなのはない」


やっちまったぜベイベ。

ヒュー!やっちまったぜベイベ!


見事に自分から地雷を踏みに行ったバータルさん。

それを言われたデイジーの顔も見れず、自分の失言に顔を真っ赤にして俯いております。


まさかそんなバータルさん。

目の前の相手も同じように顔を真っ赤にしているとは思ってもみないでしょうね!


おやおや?

これはこれは?

まさかの?


「あー、なにこの雰囲気。俺ら邪魔なの?」


口に出してくるタイプなのねジョージさん。

理数系は結果を急ぎすぎね?

もうちょい考慮しなさい?


「そ、そ、そんなことはないですわ?」


あらま。

女王さまが町娘になっちゃった。


僕はこれを好機と捉え、テーブルの下でバータルの足を突く。


「あ、いや!いやじゃない、あ、デイジー。違うんだ、いや、違うくはない」


焦りに焦ったバータルさん。

自分で言った言葉を自分で否定しだす始末。

顔、どんだけ赤いんだよお主。


ここは助け舟出さねば、大波乱の予感!


「よーっす!タルタル!告れたか?」


来ちゃいました動く大波乱。


右手を高々と上げ、ディミトリー携え勢いよく現れた我が愛しのラブリーハニー。

着ているジャージがボロボロになっているところを見ると、相当過酷な訓練をしてきた模様。


だけれどもよ、今じゃない。


「チ、チ、チサト!?な、な、なにを!?」


「あー?デイジー顔真っ赤だぞ?今告った感じ?なーんだ、ないすぅ!私!」


全然ないすぅじゃねーよ。


「デイジー!!」


僕が知里ちゃんにチョップでも食らわそうかしていると、目の前の巨体が勢いよく跳ね上がった。


こやつ!!?


「好きだ!」


わーお、ふぁんたすていっくべいべ?


「わーお!ふぁんたすていっくべいべ!」


おう!?マイハニーと脳内でハモってしまった。


あんたちょっと黙りなさいの意味を込めての脳天チョップを繰り出す僕。


「おれきっ!」


変な声を上げて頭を抑える知里ちゃんと、その横にいるディミトリーを僕の横に収納。


直立不動の城塞は、顔を鬼の様に赤くしつつも、デイジーを真っ向から見つめている。


対する町娘。

漫画か?というくらいの恥じらいを見せ、斜め左に視線を落とし、口を結んでらっしゃいました。


「すげーシチュエーションに居るな俺」


うん、同情はするけど口に出さないでジョージさん。


ーーーはっ!


何故だか不意に後方からの視線を感じた。

僕はその視線を辿り振り向くと、もうそれは満面とかいうレベルすらも超越凌駕する笑顔のイヴァンの馬鹿野郎がこっちを見ていた。


『ヒュー』


恐らくそう言っている。

そういう口をしているのだ、うちのバカ隊長は。


これ以上の羞恥は我が友には酷である。

僕はそう判断し、この膠着状態の打破を試みようとするが、どうすればいいのか皆目検討がつかない。


一択である。

デイジーはバータルから告白された。

この状況を打破する動き、それはディジーの返事一択しかないのである。


これは第三者不介入の状況。

動く大波乱や、野次馬おっさんを除き、この状態に介入出来得る人間がいるはずもない。


それは必然的に唐突に現れる。


「困るわ。待って」


当たり前である。


さっきまでどつき合いをかましていた相手である。

さらに言えば、つい何時間か前に名前を呼ばれた仲である。

唐突にも程があるし、当の本人も謂わば事故的に告白に至ったまである。

事故を起こした加害者は、僕の右脇に挟んでいるが、口に手を当てサイレントモードを表している。

時すでに遅しも甚だしい事ここに極まれりである。


「す、すまない」


「あ、うん」


「せ、席を外す」


うぇーい。待てーい。

ここに僕を残していくの?

このアトミックボムを小脇に抱えている僕はどうすれば!!?


バータルさん。

歩く姿勢も整わないのか、ガチガチにロボットのような動きで、この場を後にした。


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