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「で?人の部屋で、イザベルのベッドぐしゃぐしゃにして、プロポーズ?え?なに、馬鹿なのあなた達」
「「さーせん」」
えー、新しいパターン追加。
僕と知里ちゃんが正座して並び、女王立ちしていらっしゃるデイジーの前で、仲良く反省しております。
「うぇ!?チサトちゃん達結婚すんの!?」
いや、だれ!?
イザベル!?本当に君、イザベル!?
「あ、イザベルっち。さーせん、お先しゃす!」
新歓帰りか!
手刀を切るな!
「人騒がせも良いところよ全く」
「まぁまぁそういうなよ行かず後家」
「もう一回泣かしてあげましょうか?」
「新妻パワー舐めんなよ?」
女王立ちのデイジーが歯をギリギリさせながら、正座の魔王にガンを飛ばす。
なかなかシュールではある。
「待てい。知里ちゃん。ここはデイジーとイザベルに感謝するところ。喧嘩ダメ絶対」
「ほーらみなさい!よほどムネノリの方がわかってるじゃない!」
「おい待てこら。誰の旦那、ムネノリ呼ばわりしてんだ動物園返すぞ、メスゴリラ!」
「な!?他になんて呼べばいいかわからなかっただけでしょ!?はーん、ムネノリムネノリムネノリ」
「コロス」
あー、この二人は一生コレなの?
あと、人の名前をスイカのタネみたいに飛ばさないでくれる?
ムネノリの後コロスって聞こえるから、凄い居心地悪くなっちゃうの。
「ま、ま、この二人のこれはコミュケーションみたいなもんでしょ?それよりダーリンさん!ないすぅ!」
まるで別人かのような通常時?のイザベルが、知里ちゃんとデイジーの口論をすり抜け僕の横にやってきた。
「いやそれもこれもイザベルのお陰だよ。マジすげー助かった。ありがとね」
「でしょでしょ?ウチ、やる時はやる女なんで!」
本当その通りです。
やる時はやる女の代名詞にしたいくらいです。
「イザベルって、どういう人?」
うん。言葉が足らないのはわかります。
ですが、むしろなんと言えば?
「能天気な快活系女子?」
「いやそれ完全にわかっててやってるやつですやん。デカルトか!そのキャラを知ってる貴方は誰!?」
能天気なイザベルを作っているイザベル。
そう頭に思い描いたら、何故か、我思う故に我ありが不意に浮かんできた。
「果たしてその実態は!?と、含みを持たせて終わる系女子ってとこで手を打ちましょう」
謎多いなぁこの子。
まぁ、謎多いって言えば物凄い謎な子いるけど。
今回はその謎にすごく助けられたし、ま、いっか。
自分から言ってくる時、聞くのが一番。
身をもって知りました。
「でもでも、やる時はやるって言うならダーリンさんもなかなかですよ?」
「やれる時にやるってくらいだろ、僕は」
「あら、恥ずかしい」
「おうおう、意味合い変わってくんぞ!やめなさい破廉恥な」
なんだかんだ、イザベルのこの雰囲気は嫌いじゃない。
この子が英雄軍にいてくれていると思うと、何故か安心感が生まれる。
僕はそれが居心地良く感じていた。
「あぁ」
おっと、安心感からかみっともなく欠伸が出ちゃった。
しかし、疲れた。
未だに元気そうな知里ちゃんのタフさにびっくりするレベルだわ。
「ほらぁ、ダーリンさん眠いって欠伸してるよぉ。初夜初夜」
待たんかい。
ピンキーな話もうこりごりなんですけど。
「ーーー初夜」
「うわぁ」
さっきの喧嘩はどこへやら。
両手を頬につけ、照れる知里ちゃんと、ドン引きしているデイジー。
「お馬鹿たれ。結婚し終わった感じにすな!部屋帰って寝ます!知里ちゃんもデイジーとイザベルにありがとうとおやすみ!」
「はーい」
ショボくれる知里ちゃんの後ろで、ニヤニヤしているデイジー。
マジでどっこいだなこいつら。
「イザベル。本当にありがとう!助かったよ!デイジー。しゃす。ほんじゃおやすみ!」
デイジーの時だけ驚く程素早い会釈。
満面の笑みでおやすみを述べ、即座にドアを閉める知里ちゃん。
「しゃす!?なにそれ!ちょ!待ちなさい!?」
体育会系でも言わねーよ、しゃす。
デイジーの伸びる手と声が、ピシャリと閉まったドアで掻き消えた。
「ほんじゃ寝ますか!」
「本当に部屋に戻るの?」
は?はい?
「い、いや、え?でも行くとこないし」
「あるよ」
上目遣いで瞳をウルウルさせている。
ダメだ。理性がもたない。
「どこに?」
「女部屋一つ余ってる」
マジか!?
僕は目の前のモジモジする知里ちゃんを見て、ありったけのリビドーがひょっこりはんしていた。
「の、覗いてみるだけ、見てみようかなー。間取りとか気になるし」
「っぷ。鼻の下凄いよ?」
はっ!?
人中!?そんなに露わにしてしまっていたか!
「タローはどうとでもなるとして、アナナキンヌだな。ま、どうとでもなるか」
同居人対策を練っている知里ちゃんは、顎に手を当て悩んでいたが、勢いでどうにかすることに決めたらしい。
まぁ、熊本くんならどうとでもなる。
「へへへ。よし、いこー!」
右手を伸ばし、小声で意気込む知里ちゃんの後ろを、僕は情けなくもスゴスゴとついていきました。
男って、、、、。