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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
63/109

互い


「へぇっくしゅん!」


「おや、凛ちゃん若しくはお義母さんあたりが噂しているんじゃないかい?」


「なんでそんな的確なの?」


そんななんぞや知っていて言っているかのような知里ちゃんの発言は置いておいて、僕たちは夜風という遠き故郷の言葉をこちらの世界でも探し求め、賢政院から出ていた。


夜も来ない。

風もほぼない。


頭狂うぞ!?

朝起きて訓練、昼飯錠剤飲んで訓練、夜飯食って寝て起きて朝!

アホかっ!!

精神性高まるどころか、崩壊寸前じゃ!



アナナキ世界5日目。

僕は早くも人間世界を恋しく思っていた。


隊訓練にも慣れ始め、アナナキ監修での実践的訓練に突入し、隊内対抗紅白戦に於いてダンディーズに惨敗を喫しボコボコにされたり、イヴァンのノリで始まった無限地獄鬼ごっこなる物で鬼に連続でなり続け、足がはち切れそうになったりと、散々な目に遭っている。


夜は同室のアホの鼾が気になり始め、ここ2日ほど寝不足だし、イヴァンのノリで手作りトランプを作ろうと言い出し、苦労して作ったらエリームが実物持ってたり、イヴァンのノリでバータル寝起きドッキリを仕掛けたら、寝相の悪いバータルに踵落としされ意識刈り取られたり、イヴァンのノリでイヴァンイヴァンイヴァンイヴァン!


「熊本!イヴァン!イヴァン!熊本!イヴァン!ブラッド!イヴァン」


「ど、ど、ど、どうした!!?」


あー、つい取り乱すところだった。

危ない危ない。


「なんだ!あのおっさん!初っ端かっこよかっただけで、あとはただのお茶目おっさんじゃねぇーか!」


「お、お、おう?」


あー、危ない。

取り乱しては知里ちゃんに申し訳ない。

今は久々デートだ。

気を沈めなくては。


気を沈める?

そういやアイツら(イヴァン・ブラッド)気魄を抑えるには、ストレスに耐える事とか言って、あのなんちゃって必殺技ダンディーズスペシャルを僕目掛けてフルパワーで放ってきたな!

殺す気か!!?


「ファッキンダンディーズ!」


「む、む、むねりん!お、落ち着くのだ!ドウドウ」


あー、危ない。

ついつい、連鎖反応的に記憶が蘇ってしまう。


「ム、ムネノリさん?」


「どうしたの知里ちゃん」


「え!!?今までの無かったことにする感じ!?オッケーオーライ!任せて!」


自分の頬を二度ほどペチペチ両手で叩く知里ちゃん。


「宗則さんはアレですか?ストレスって奴が溜まってんですか?」


「どしたの?宗則さんだなんて」


「いえいえ、たまにゃあ呼んでみたくなるもんでさぁ」


「お?なんで江戸っ子風?なに?知里ちゃんも落語ハマってんの?」


「いやいや、落語はハマってないけれどもね。ストレス溜まってんならこー、なんつーの?そのー」


「どした?そんなあからさまに言い淀んで」






「エッチな事したげようか?」




は?




は?




「僕はジムノペディが好きなんだよ。サティって作曲家の作品なんだけどさ、あれ凄く落ち着くんだよねー。一定のリズムで流れて」


「ちょーっぷ!」


「くどりゃふか!!」


見事な延髄への手刀。

危うく眼球が飛び出すところだった。

なに!!?

気の迷いをスルーしてあげたのに!


「私の純情を返せ!」


「何をもってしてそうなった!?」


「ストレス溜まってそうだから!」


あら?いつになく不機嫌。

プイッてする速度が速い!

これはマジおこプンプンップイだ。


「いやいやとても魅力的なお話しだけれどもね?まさかこのタイミングとは思わず、どうされたのかなーって」


「デート!二人!他の事!」


オウ!これはやばいね!

語彙力が完全に無くなってきてるね!

デートで二人きりにも関わらず、他の事考えてんじゃねぇ殺すぞ!を簡略化してきたね!


こうなった時はオコオコ度合いもうワンランク上ね!


アバシリカムチャツカツァーリボンバイエまであるね!


「ごめんよ!千景ちゃん。そんな怒らせるつもりは無かったんだけどね?そりゃあ嬉しいけどさすがに、ねえ?」


「もういい!わかってない!知らん」


そう言って知里ちゃんは、スタッと勢いよく立ち上がり、高速で賢政院まで走って帰っていった。


僕はその状態を見て、あまりの自分のやらかし度合いを恥、目の前の崖に勢いよく飛び込んでやろうかとすら思った。


やっちまったぜこんちくしょう!


いやわかってたよ?

僕のストレスが口に出てるの。

むしろ聞いて欲しくって言ってたよ?

それがなにか?

聞いてー?こんなことあってさー?

ってJKか!

でも、言いたい!聞いて!ってなっちゃったの!?

わかる?

うん!わかる!


はぁ、この羞恥心をどうにか出来ないものか?


一番初めにこの世界に来た時に二人でやってきた、深淵を覗ける文字通り穴場スポットの縁石に腰掛け、僕は自分の愚図な頭を抱えていた。


「えー、だっていきなり言うのだもの」


恥ずかしーじゃん?


でもなー、絶対多分恐らくあれは、良い雰囲気にしてストレスを忘れさせようとしてくれていた彼女の最大級の愛情表現なのだよなー。

わかってますがな。

でも、恥ずかしさが勝っちゃった。

てへぺろ。


帰ったらクソ真面目に謝るよ?

引くよ?全僕が引くレベルで謝るよ?

周りの目とか気にせず、翻筋斗打ってでも謝るよ?

マジで嫌われかねないからね!



かーらーの?

ここで誰か来るタイミングじゃない?

バータルとか?熊本くんとか?

「なにしてんだ?」

とかって後ろから声掛けられるタイミングじゃない?

物語の展開は大体背後からって相場が決まってんでさぁ!




って!来るわけねーだろバカっ!

チュッチュッイチャコラしたくて、誰もこないだろうこんなクソこえーとこ来たんだろ!


ええ!僕監修ですが?なにか?

ほんで?情けないことに?あちらから言って頂いたら?聞こえないふり?

どこの難聴系主人公だバカ!



え?なにこれ?

怖っ!

中学二年生以来だわこの状況!


中二の夏、公園のベンチに座り、初めて付き合った彼女へ性欲剥き出しに「暑くね?」

って言って目の前の僕ん家に上がらせようとして断られた時くらいの恥ずかしさが、700倍増しで襲いかかってきてるんですけど?


「あー、あー、あー」


あ、声出るわ。

あまりの羞恥心で声失ったかと思った!


え?このまま帰る?

早くない?

もうちょい待とうやー。

今高速で帰ってったけどもよ?

まだ早いやろー。

さすがにもうちょい反省する時間くださいよぉ。



はい!反省。


えぇまず、全部僕が悪い。


終わった、、、?

まさか、、、?


「はぁ」


森での精神攻撃以上に自問自答してみたものの、全僕がクソだった為、今回はなにも得るものがなさそうである。

あの知里ちゃんの怒り方は、2年の交際期間でも年に一回あるかどうかレベルである。

3年目の今、その3回目を味わいました。

まさかこのタイミングで。


勿論、今僕は慣れない環境や、眠れない夜、過酷な訓練などによりストレスを感じていないといえば嘘になる。

が、それは知里ちゃんも同じ事であり、ストレスが溜まっていそうだなと僕も気付いてはいた。

むしろ気付かないならば、彼氏失格まである。

それを、まさかの蔑ろにしてのこの所業。

最早切腹の域まである。


それを己が性欲の為に、わざわざこのような場所に連れ出し、もう僕の事を理解し尽くしているであろう彼女の掌だった事に恥ずかしさを感じてのあの行い。

爪剥ぎ、市中引き回し、磔刑のフルコースで事足りるかどうかである。


「タイムマシンってないかな?」

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