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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
48/109

デイジー・デイヴィス


悔しい。

あの戦闘でしっかりと自分の実力を思い知った。


知里千景。

圧倒的に強い。

みんなスタートは平等。

それにも関わらず、他を寄せ付けない圧倒的な強さ。

やるからには負ける気などさらさら無かったが、勝負が進むにつれ、勝つビジョンが一縷も見えなくなっていった。

悔しい。それは負けたからには当たり前の感情であり、その気持ちが湧いてこない時はもう、自分の限界なのだと思う。


「めちゃくちゃ悔しい」


考えることは山ほどあるのに、どうしても悔しさが拭えない。


「まあまあディジーちゃん。今は一旦忘れよ?」


イザベルはそう言って慰めてくれていた。


「第三隊よ?三!こうもまざまざとわかりやすくアイツの下っていうこの状況!クソー!悔しい!!」


第一隊隊長イヴァン・シルヴァ。

彼が第一隊である理由は、おおよそ見当がつくし、納得ができる。

人間世界での戦争経験や、戦術知識、その他戦闘に関する知識など非常に豊富で、何度か会話したが、とても勉強になったし、なにより頼もしい。

あのモンゴル人や、アイツの恋人、ブラッドもかなりの気魄弾の使い手だし、第一隊は全隊の中でも最火力と言われるだけはある顔触れ。

モンゴル人は観察した限り、体格は全体を通して見ても一番屈強だし、格闘センスもずば抜けて良い。

アイツの恋人は未知数だが、アイツ曰く、アイツより少し弱い程度らしいし、情報では全体で一番の気迫量だと言う。

しかも付与が施せる。

ブラッドに至っては、私は同じ隊になりたかった程だ。

あの気魄弾のコントロールや、それを自在な形で放てる器用さ、そして量。

私が特攻型の近距離戦法を得意とするので、後ろからの援護にはブラッドが一番良いと思っていた。

なんなら第三隊隊長よりも、第一隊のメンバーの方が良かったと思うぐらいだ。

あの高火力に、それを指揮するイヴァン。

第一隊と言うだけのことはある。


「えー、でもウチは同じ隊になれて良かったと思ってるよー?」


ぐっ。

私も勿論、戦力を度外視するならば、第三隊にイザベルが居てくれてホッとした。

だが、それを言うと調子に乗りそうなので言ってはあげない。


「はぁ。で?イザベル。あなたは何が得意なの?」


訓練以外では大方彼女と過ごすことが多い私だが、訓練となると全く彼女の力量を知らない。


「格闘!!」


格闘!?

だいぶ予想と違った答えが端的に返ってきて、私は一緒固まってしまった。


「ウチね?ブラジリアンもしてるし、柔道はブラックベルト持ってる!」


ブラジリアン柔術!?

ブラックベルト!?

どこまで予想外なのだろうかこの子は。


「凄い。ちょっと見直したわ」


「ぐふふ。でしょでしょ!?でもクリーチャーって腕6本もあるんでしょ?そこが大変かも」


そうか、クリーチャーは多足類という話だ。

ならば基本関節技の柔術は、だいぶ不利だ。

いや待てよ?戦争自体、柔術はあまり利点とは思えない。


「イザベル。柔術以外は?」


「走る!!」


雲行きが怪しくなってきた気がする。


「気魄弾は撃てる?」


「苦手!!」


おっと?ほんの少しの加点からの、大幅なマイナス要素。


「ちょっとだけ、手合わせしてみない?」


聞くよりも見たほうが早い!


「ぎょ!?ディジーちゃんと!?イヤだよ!絶対にイヤ!!」


そう言って両手で頭を隠し、座り込んでしまった。


「大丈夫よ?手合わせだからちゃんと手加減するわよ?」


「違う!!ディジーちゃんを殴ったり、蹴ったり、なげたりなんか!絶対イヤ!!」


やられるのが嫌なのではなく、やるのが嫌。

短い付き合いだが、とてもイザベルらしい拒否の理由だった。


「でもイザベル。隊長としてイザベルの力量も知っておかないといけないわ」


「じゃあ!ジョージとする!」


私でなければ良いのか。


「ジョージ。お願い」


「なんの躊躇いもなく了承するな」


第三隊戦略会議。

まずはジョージ対イザベルの模擬戦。


「あらぁ、ジョージは私が痛め付けようと思っていたのにぃ」


隣から艷っぽい声で、怖い事を言い放つアナ。


「なんだこの隊は!大体男が俺しか居ないって言うのがまずおかしい!」


見るからに軽薄。

ハーバードで教授を務めているというが、些か真実味に欠ける。

ジョージ・グリーンベル。

第三隊唯一の男にして、この隊での役割は"はけ口"。


「グズグズ言わずにとっとと準備しなさい。イザベルもよ」


イザベル、ジョージ、アナ。

よりにもよって私が観察をしていなかった3人。

まずは全員の力量を見なければ、戦略は愚か、隊列も組めたものではない。


「クソ。イザベル!手加減は無用だ」


「うん!!そのつもりだよ!」


「可愛げのある女はいないのか!?」


ジョージにしてみれば、戦場という名のハーレムなこの第三隊も、針の筵と化している。


快活で能天気な印象なだけに、あまり目立ってはないが、よく見ればとても可愛らしい顔をしているイザベル。

私も身長は女としては高い方だけれど、イザベルもそれとあまり変わらない。

なんならアナも同じくらいだ。

男のジョージの方が、やや私達よりも低い。

この隊でのヒエラルキーを表しているかのようだ。


「それでは、イザベル対ジョージの模擬戦を行う。両者準備はいいか?」


「おう。いつでもいいぜ」

「ウチも!」


ジョージはサウスポースタイルでボクシングの様な構え。

イザベルもサウスポースタイルだが、手を開き、やや高めの位置で構える。

あれが柔術家の構えか。


「加減無用。怪我は治癒で治る。それでは、はじめ!」


アナを隣にし、少し離れたところで両者を観察する。


まずはお互い、ステップを踏みながら様子見。

普段の印象とは打って変わって、洗練された構え、そしてステップ。

目付きもいつもの柔らかさがない。

さすが対人格闘を経験しているだけはある。

少しイザベルを舐めていたかもしれない。


ジリジリと両者間合いを詰め、牽制で相手の距離を測っている。

ジョージもあの様子だと、ボクシングの経験者かも知れない。

ステップも牽制のジャブも、素人らしからぬ動きだ。


「へぇ、イザベル。ブラックベルトというだけのことはあるようだ。だが、そっちが来ないのならばこちらから行くぞ!」


しっかりと前置きをするジョージ。


黙ってやればいいのに。

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