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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
47/109

3


「タローはちょこちょこ他の人の所に顔出してるよね。偉いねぇ。ちゃんとみんなとコミュケーションをとって、しっかり働きな?」


くっ!!

何も言えない!!

なんか色々違う気するけど、今の知里ちゃんの発言で全てが良い方向に丸まってしまった!


「イエス、マム!!」


「ンガンガも朱と仲直りしなきゃだぞ?」


「え?喧嘩したの?カメンガくん」


知里ちゃんがチラッとカメンガを見る。

カメンガは知里ちゃんから目を逸らした。


なに?恐いの?


「はい!明日は必ず仲直りします!!」


「うおっ!?」


カメンガはいきなり立ち上がり、驚くほどの一直線を体現し、知里ちゃんに敬礼を向ける。


「うむ、よろしい」



「いや待たんかい」


「うぇ?」


「なんやねんこの状況」


「なんで関西弁!?」


やっと!

やっとだよ!?

やっと普通に話せる子を見つけたと思ったのに!!


僕はこの遣る瀬無い気持ちを、歯をくいしばることでなんとか耐えきった。


「カメンガくん。なにをされた?」


「ちょ!ダーリン?人聞きの悪いことは言わないの!」


「何言うてくれてけつかんねん!どない見てもこの状況の方がよほど悪いわ!」


「タチバナさん。いいんです」


なんだ?

なんでカメンガくんはそんな両の手を固く握り締めて、なにかを耐えているような、そんな、そんな!


「カメンガくんに何をした!?正直に白状せえ知里千景ぇ!」


「今まで見たこともないほどの激怒をここで!?なにもしてないよ!?…ンガンガにはね」


「なんだ最後の保険打ったようなセリフは」


「あー、先輩。その事件なら僕が一部始終見てたのでご説明しやしょう」


「謀ったな!?タロー!」


何も謀ってない。

言いたいだけだろ。


カメンガくんの心的に重大なストレスを目の前にして、事は急を要すると判断した僕は、即時解決を試みることにした。


「申せ、熊本くん」


「へえ、兄貴。事は本日、夕餉の迫る、木々の影も深まり出した頃合いでごぜえやす。隊ごとに分かれてのミーティングをしている始終、さるお方は大変虫の居所好かねえ顔をしておられやした」


なにそのキャラ。

異常に似合うなコイツ。


元々そこまで声が低くないので、がなるようにして渋みを出し、背中を丸め、ハエのように手をこまねく熊本くんは、さながら時代劇の小悪党そのものであった。


「その原因は他ならねぇ、先程、さるお方がいけ好かねえと言われていた中国人、朱さんその人でありやす。その朱さん、ミーティングが始まるや否や、ンガンガ氏にえげつねえ言葉浴びせやがりましてね?さるお方も初っ端から事を荒げたくねぇってんで注意だけに留めた。おらぁ、てぇへんおどれぇて、槍でも降ってんくるじゃねえかって天を気にしてたもんでさぁ。それからはさるお方の目もあってか特別なにかするってぇわけじゃなかったんだが、始終ンガンガ氏を見て笑ったりしやがるもんで、ンガンガ氏もこれを見過ごしちゃあ納得ならねえってんで、勢いづいて取っ組み合いになったんでさあ。こちとら、ざまあねえと胸の溜飲下がった気持ちで見てたんだがどうにも朱さん。腕っ節だきゃ男みせやがりまして。これじゃあ今度はこっちが納得ならねえって、さるお方は堪忍袋ごとはち切れやして、朱さんを掴み上げて、ああ右にモミジ、左にモミジ。みるみるうちに両の頬は腫れ上がり、終いにゃ意識もおぼつかねぇ様子の朱さんにトドメの気魄弾を打ち込む次第で、事は大事。すぐに治癒のできる人を呼んで、息の根だきゃあ取り戻したんだが、その本人は勿論。さっきまで頭に湯気立ててたンガンガ氏もすっかり冷めるどころかそのまま凍りつきやしてぇ、溶ける間もなく、今に至る。っとぉ、そんなとこでさぁ」


「おい、ちかげ」


「うふん」


「おい、ちかげ」


「やめて!怖くなってきたから!」


「おい、ちかげ」


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


なにしとんじゃ!

目離したらこれかい!!


そして熊本くん。

いいね、それ。

なに?落語にハマってるの?

帰ったら、僕も嗜んでみよう。


「まあまあ先輩。やり過ぎなのは否めないですが、朱さんもなかなかエゲツなかったですから今回ばかりは堪忍してくだせぇ」


未だハエの動きの熊本くんと、さっきので蹲って動かない知里ちゃんと、ずっと棒立ちのカメンガくん。


なんか僕が悪者みたいな雰囲気だな。


「まぁ、そうまで熊本くんが言うなら。え、なに?そんなに酷いこと言うの?その朱さんは」


ふーっと、知里ちゃんとカメンガくんは事が落ち着いたとひと息つき、各々元の席に直る。


「肌の色を馬鹿にされまして」


あ?なんだって?

肌の色?

今更そんなブルーハーツがディスるような文句垂れやがる奴がいんのか?

いったいこのカメンガのなにがわかると言うのだろう!


「目はどこに、あるんだ、カメンガって」


しょうもな!?

無駄に韻踏んでんじゃねえよ!


「なんだそりゃ!?いけ好かねえどころの騒ぎじゃねえよ!」


「私もちゃんと最初は咎めるだけだったんだけれども、あまりにもカメンガにしつこく嫌がらせするから。ついカッとなってしまいやした」


「それあなたも仲直りっていうか謝罪しないとダメじゃない?むしろよくカメンガくんに言えたね千景さん」


「ひっ!まだ怒ってる!」


「怒ってない。明日モリヤにつき次第朝一番で、カメンガくんと知里ちゃん。んで当の本人の朱さん。仲介役として立花、熊本。この5人で、和解する為の調停を開きます」


「なんで僕も!?」


「お前も見てたんだから当然同席。皆の衆、よろしいか?」


首を擡げる3名。


「よろしいか?」


「「はーい」」

「はい!!」


はい、決まり。


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