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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
46/109

2


東京、大阪、"愛知"。

どこだよ!愛知!!

なんで!?なんで福岡じゃないの!?

まだ京都とか神奈川とか言われた方が、溜飲も下がったよ!?


衝撃。知里ちゃんから受けたマトモな突っ込み。

僕はあのあと少しして現れた熊本くんに、馬鹿にしたような笑い方をされながら

「愛知っスよ?」

と言われたのが、この世の終わりを感じるほどの絶望だった。



賢政院に戻ってきた、自信過剰な福岡県民立花宗則は、自室に引きこもっている。


「ダーーリーン?拗ねてないでご飯食べよー?」


「晩御飯、明太子とうまかっちゃんなら食べる。食後はめんべい。若しくはブラックモンブランね」


「ごめんダーリン。追い討ちかけるようだけど、ブラックモンブランは佐賀」


ーーーーーーー。


「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


「あー!ごめんごめんよ!ダーリン!!」


羞恥心が!!

自分で自分の傷口に伯方の塩(後から知ったが愛媛産)を塗ってしまった!!!


僕は福岡アイデンティティを蔑まれ、自死さえも脳裏をよぎる程の屈辱を味わっていた。


「あーもう!うるさいっス!!」


自室=熊本くんの部屋でもあるが故に、この悶着に嫌気がさしていた熊本くんがキレた。


「だいたい!これだから福岡県民は!佐賀のこと植民地とか呼んでるらしいじゃないっスカ!とんだバカタレですよ!まったく」


え?

君、福岡出身じゃないの?


「またもや初耳だ。なに?似非福岡人なの君?てか、名前熊本で佐賀出身で福岡在住とかややこしすぎね」


一人で九州九州し過ぎである。


「そ・う・い・う・と・こ!!僕は一度も福岡出身なんか言ってません!もし今の意味が佐賀県民=似非福岡県民だったなら今すぐ表でろい!」


あ、やべ。

変なスイッチ入れちゃった。


「うそうそうそ。ごめんごめん」


「ったく!さ!ご飯食べに行きましょう!」


意外と故郷愛の強い一面を垣間見せた熊本くんは、律儀に僕達の騒動が終わるのを待っていたらしく、お腹が空いていたようだ。

珍しく僕ら先輩達を先導していたが、部屋を出て行く際に、お腹の虫を鳴らす熊本くんはさすがとしか言いようがない締まりのなさだった。


「にしても可愛かったなーさっきのムネリン」


「やめて、翻筋斗打っちゃうから」


夕食が用意されるホールへ向かう道すがら、未だに思い出し笑いで頬を緩めている知里ちゃん。


「あ、そう言えばなんか話の途中だった気がする」


「あれ?なんだっけ?」


あまりの衝撃的事実に、元の話がなんだったのか既に失念していた。


「はぁ、なんなんだろうかこのバカップルは」


珍しく熊本くんに心底呆れられながら、一同ホールへと辿り着く。


「お!お、遅かったですね」


ホールへの扉を開けた瞬間、配膳された夕食を手にしたカメンガに出くわした。


初めて間近で見た!


僕よりも頭一つ分背が高く、白目と深く暗い肌のグラデーションが印象的。

クルクルとした髪質を赤く染めているのが、似合っていて素直にカッコいい。

痩身ではあるが、四肢が長いので、ひ弱な感じは全くない。

むしろ部族の長っぽさまで感じさせる、言い知れぬ強者感。

コンゴ共和国のマラバ・カメンガその人であった。


「おー、ンガンガ!今からご飯?一緒に食べようではないか!」


ンガンガ?

いつものことだが、ネーミングセンスどうにかならんのかねこの子は。


「あ、ああ。じゃあ席に着いてますね?」


知里ちゃんに対してのこの戸惑う反応。

まさか!?この世界初の常識人な雰囲気!

いや、バータルもイヴァンもブラッドも常識的ではあるが、キャラが濃いイメージがあるからなぁ。


「知里ちゃん。カメンガと仲良いの?」


ホール横に並んでいる今晩の夕食たち。

バイキング形式で、好きなものをトレイに乗せ、部屋に持っていって食べる事も可能な配慮が素晴らしい。


「おや、嫉妬かい?ふふふ。安心なさい。ンガンガは我が第二隊の部下。それだけよ」


あ、そうか。

知里ちゃんとこの隊のメンバーか。

ってか、隊長だったなこの人。


いや嫉妬とかしてねーし。


「そういえばディミトリーも同じ隊だったよね?」


三人は縦一列トレイを手に、ぼちぼち美味しい夕食を取って歩いていく。


「そそ!あとは朱がいるよ!最前衛がンガンガで二列目がディミ助と朱で指揮列がアタイ!」


ほうほう。ディミトリーは僕と同じ二列目か。お?この隊は二列目が二人か。

朱さんとはまだ話した事ないな。


「朱さんはどんな人なの?」


「んー、いけ好かない中国人」


おう、いきなりの最低評価じゃね?

大丈夫か、第二隊。


最後尾の僕がトレイに夕食を乗せ終わり、一同カメンガ目掛けて一直線。


「カメンガさん。どうも立花宗則です。よろしく」


「あ、これはどうも。マラバ・カメンガです。よろしく」


めっちゃ!普通!!

いいね!出だし好調!


「ほら熊本くんも挨拶して」


何さっさと飯食おうとしてんの、こいつ。

失礼なやっちゃな。


「え?僕は既に、ンガンガ氏とは面識ありますよ?」


ンガンガ呼び!?

いつの間に!?

てかなんやかんやこいつ、コミュニティ能力高すぎない?


「そ、そうなんだ。カメンガさん大丈夫ですか?ご迷惑おかけしてません?」


「なぜに僕が失礼している前提で話すんスカ!」


「ははは。面白いですね、やっぱり」


やっぱりとは?


「私の恋人でタローの先輩って言えば、どういう印象か、言わずもがなではないか?」


「自分で言う!?」


こちらには目もくれず、一心不乱にウインナーを頬張っている知里ちゃん。


「隊長も最高に面白いし、タローも面白いし、タチバナさんも面白い。日本は面白い人だらけですね。そして恐ろしい」


ん?最後なんかボソッと言ったな。

聞こえなかったが、なにか嫌な予感がする。


「ちなみにンガンガ氏は18歳です」


「え!?歳下!?」


こちらも目もくれず、一心不乱にウインナーを頬張っている。

やめて、これ以上日本の礼儀を重んじる印象を君たちで汚さないで!


「しかもフランスでサッカービッククラブのリオンの下部組織で背番号10を務める将来有望なサッカー選手。12人兄弟の6番目。最多準英雄を輩出する英雄の名門マラバ家とは」


どこまで打ち解けたらそんな詳しくなれるの?


ペラペラと人の個人情報を、週刊誌の見出し並みに興味を唆る言い方でひけらかす熊本くん。


「凄いね!リオンに所属してるの!?」


「リオンと言ってもその下部組織ですから。大した事ではありません」


謙遜も出来るの!?

ありがとう!君が第二隊に居てくれて、とても感謝しています!!


「でも下部組織で10番背負っててしかもまだ18歳。世界的な注目選手じゃん!!」


言っちゃ悪いがもうワンランク上のビッグクラブとか、例えばレアルやバルサとかから、青田買いのオファーが来ててもおかしくない。


「いやいや、僕くらいの選手は同い年でもゴロゴロ居ますよ」


カメンガの否定の感じを見ると、特別謙遜している訳でもなさそうだ。

マジか!世界は広いな!


「ンガンガ氏は世界で活躍するサッカー選手。ディジーさんはオリンピック、フェンシングのイギリス代表。イヴァンさんは元軍人の現総合格闘技ジムのオーナー兼トレーナー。ブラッドさんはラグビー元オーストラリア代表。朱さんは現役空手家でオリンピックを目指していた真っ最中。ジョージさんはハーバードの物理学教授。これだけ聞くとそうそうたるメンバーっスよね」


うぇ!!?

なにその面子!


「マジで!?イヴァンさんもブラッドさんもスゲーな!ってか君はなんでそんなに詳しいの!?」


「伝令ですから」


キリッとすんな!

意味合い違うからな?

伝令って個人情報伝え歩く下世話な役目担ってないからね!?


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