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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
39/109

4


「そっちこそ」


またもや対面する両者。


ニンマリする知里ちゃんとは対照的にムスッとした顔のデイジー。


「どうやら引き分けって感じかな」


「よく言うわよ。あんた最後手抜いたでしょ」


なんだって!?


「は!?知里ちゃんほんと!?」


まさかあれだけの威力で、手を抜いた?


「へへへ。バレたか。まさか本気で正面突破してくるとは思ってなかったから、咄嗟にヤバイ殺しちゃうって思っちゃった」


てへぺろ。

じゃねーーよ!


自分の頭を小突き、舌を出す大魔王。


なるほど、そりゃ対照的な表情にもなるわけだ。


「にしても、アンタもなかなかエゲツないね。剣から気魄放つとか、殺す気?」


戦闘の最後を語る二人に、驚愕しかない。


「アレぐらいしないと私が死ぬでしょ!?アンタほんとバケモンね!」


「へへへ」


最早バケモンと呼ばれて、照れるようになってしまった我が愛しのハニーに、僕はとことん恐怖した。


「チサト。今度は俺と手合わせしてくれ!」


ふんっと鼻息荒く、バータルが勇んで来た。

やめてくれ!!


「良かろう!相手になってやる!」


「バータル!やめてくれ!寿命が縮まる!」


「ははは。悪い悪い。なにも今からって訳じゃないし、こんなド派手にするつもりもないぞ。組手だ組手」


バータルの闘争本能に、火をつけてしまったのだろう。

僕もその気持ちはわからんではないが。


「え?今からでもいいよ?」


あっけらかんとそう言ってのける知里ちゃん。


「ち・か・げ?」


「うそうそうそ!嘘だよ?ダーリン?怒っちゃダメ!スマーイルスマーイル」


僕の珍しい呼び捨てに、その怒りの度合いを察したのか、身振り手振りでアタフタしている。


ったく。


「いやはや、さすがに私も焦りましたが、なかなか凄いものを見させてもらいました。お二方、本当に素晴らしいです」


エリームはそう言って、満面の笑みで満たされているご様子。


「ほほほ。まあざっとこんなもんよ!」


「納得がいかない!」


対照的な二人の化物。

まぁ、勝敗的に言うなら今回は知里ちゃんの勝ちということになるのだろう。

デイジーが悔しがるのも止む無し。


「しかし、あのチサト様の"魔王の雷"と、デイジー様の最後の剣技はどういった原理なのですか?」


やめたげて?

魔王の雷とか、多分黒歴史確定だから!

テンション上がって言っちゃっただけだから!


「ほぅ!目の付け所がいいね!アナナキっち!魔王の雷は私が一番気に入ってる必殺技なのだ!」


あ、本気なのね。

本気で考え抜いて決めた名前なのね。

なら、止む無し。


「じゃあ、私のはそうね。クイーンローズと名付けようかしら」


だっせ!

どっちもどっちつうか、似たもん同士だったなコイツら!


「その魔王の雷と、クイーンローズ。是非、研究したい!」


「あれはねー。なかなか大変だったんだよ?気魄をね。こう、掌ですり合わせて、ガッてするんだよ?」


「わかるか!説明下手過ぎるだろ!」


身振り手振りと擬音でなんとかなる理論の知里ちゃん。

読書量に見合わぬ語彙力!


「んー。気魄を粒子状にして、その一粒一粒を摩擦させ、熱を生み出し、その熱エネルギーを気魄で固定して一気に解放、放射する感じ」


やりゃできんのかい!


「なんと!だからあの電撃のような形になるのですね!?」


「そそ。爆裂?熱波?そんな感じ」


「どこでそんなの思いついたの?」


「え?なんかこうしたら威力強まりそうだなーって思ったらできた」


ダメだ。

昔見た長嶋さんのインタビュー思い出した。


「デイジー様のクイーンローズは、どういうものなのですか?」


爛々と目を輝かいているエリーム。

余程、興味を惹かれているらしい。


「私のは、単にレイピアから気魄を放てたら便利だなと思ってやってみたら思いのほか威力あったって感じ」


同じ脳みそなの?

ねえ、同じ脳みそなの?君たち。


「なるほど!レイピアのあの痩身で研ぎ澄まされた気魄が、一気に放射することによって威力が爆発的に増したと言うことですね!」


よくわかったねエリーム。

逆になんで今のでわかるの?


「ホースの口摘んだ時とおんなじってこと?」


「その通りです!さすがはチサト様」


えっへんのポーズ。


恐らく、天才は天才にしか理解出来ないのだろう。

僕とバータルは、その場で話を聞いてはいるが、なんのこっちゃよくわかっていない顔をしていた。


その後、ぞろぞろと見物していた人達が集まり熾烈を極めた戦いを見せられ興奮しているみんなからの質問責めに二人の化物は囲まれた。


「魔王だ魔王だとは言ってきましたが、こうまで魔王魔王見せつけられると、本当にあの人は魔王なんじゃないかと思わざるを得なくなってきたっス」


「だな。まさか自分の彼女が魔王だなんて本気で信じちゃいなかった。むしろ、本当はただのか弱い乙女であってくれと願ってたけど、ただの魔王だったな」


知里千景=魔王。

僕と熊本くんの久しぶりの再確認である。


「半端ないです!姐御やばいです!マジ尊敬です」


これはディミトリーの感想。

あまりにも息巻いて言うもんだから、鼻血でも出すんじゃないかと、無駄な心配をしました。


「でも、あれだけ強くなられると、男衆はプレッシャーだな」


「ああ!俺らも負けないぐらい強くならなきゃな!今からは隊ごとの訓練だし、ムネノリ。一緒に強くなってやろうぜ!」


どこまでも清々しいバータルの熱意に、僕もやってやるぞ!という気になってきた。



「小僧ども。やる気漲らせてんな?」


内臓まで響く、重低音のような声。

僕らが互いに決起し合っていると、口元を緩ませたザ・ダンディが、そう言って声をかけてきた。


まず目に入るのは、その光沢のある綺麗な白髪。

彫りが深く、その奥には見るものを畏怖されるようなブラウンの瞳。

髪とは対照的な浅黒い肌。

バータルと並んでも、引けを取らないその体格は、彼がいくらふた回り歳上だとしても老いなど微塵も感じさせない強さがあった。


イヴァン・シルヴァ。

我等が第一隊、隊長。南米チリの元軍人。


あの堂々として、落ち着いた雰囲気のバータルでさえ小僧と呼ぶに相応しい、圧倒的な貫禄がある。


「さっきの嬢ちゃん達の戦闘で、感化されたのか?いいねぇ、嫌いじゃないぞ、そういうの」


圧を感じさせないようにしてくれているのか、その口元は絶えず緩んでいる。


かっけえ!


「まともにお話しするのは初めてですね。立花宗則です。よろしくお願いします」


「俺も、はじめまして。フォルリーン・バータルです。よろしくお願いします」


適度な歳上に対する緊張感を、僕達は感じていた。


「そうかしこまんな。隊長つったって便宣上だ。気軽にな。ーーーイヴァン・シルヴァ。よろしくな」


そう言って、イヴァンは凸凹な僕達の肩を、一緒に叩いた。

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