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人類レヴォリューション  作者: p-man
幕は突然に開く
108/109

4


「ありゃ?いつからお二人さん仲良くなったの?」


朱さんと共に玄関をくぐると、アナナキンヌと一緒に階段を降りてきていた知里ちゃんに出くわした。


「あぁ、さっきだ」


朱さんが笑ってそう言ったのを、知里ちゃんが怪訝な顔で見ている。


「なんか私の話してそうで怪しいな君たち」


バレている。

まあこの二人が一緒になって知里ちゃんの話が出ないなんて事はないだろう。


「知里ちゃんは可愛いって話で盛り上がってたんだ」


「久々に可愛いって言われたのは小躍りするレベルで嬉しいのだけれど、まんまとムネリンの術中にハマってそうなのも頂けないね」


そう言いつつも口元が緩んでいる知里ちゃん。

今度朱さんに知里ちゃん取り扱い説明書でも作ってあげようかな。


「お二人は訓練をされていたのですか?」


階段を降りてくるなり、僕の腕にしがみ付いて顔を擦り付けている知里ちゃんを見ながらアナナキンヌは僕と朱さんの服のボロボロ加減で察したのだろう。


「そうだ。良い経験になった」


「僕も良い勉強になりました」


僕たちの達成感を帯びた表情に、知里ちゃんがまたもや怪訝な顔をして見上げてくる。


「一線を超えたわけではなかろうね」


どういう思考回路だよ。

一戦は一戦だが字面が違う。


「恐ろしいなお前の嫁は。これ以上いると殺されそうだ。風呂でも入ってくる」


朱さんも冗談めかして知里ちゃんをあしらい、そう言ってヒラヒラ手を振りながら自室へと帰っていった。


「ムネリンは目を離すとすーぐ人を骨抜きにするから、私は安心していられません!」


「まさかだよ。男同士ですら疑われる僕の信頼度とは」


「ムネリンは秀吉も驚く人誑しなんだから、自覚しておくれ」


なんだその嬉しくもあり微妙にモヤっとする発言は。


「にしても君達どこに行くつもりだったの?」


まだ少し夕飯には早い頃合いである。


「タチバナ様が暇しているだろうとチサト様が仰られたので、冷やかしに行く所でした」


「悪びれもせずよくもまあそう直球に失礼な事を言えるもんだな」


「ムネリン。そこはかとなく岡田准一に似てるよね」


「露骨に取り持ち出すな」


岡田准一。

マジか。目元とかかな。


「んで?なにすんの?」


「いえ、特に決めてはないです」


こいつら本気で冷やかしに来てただけか。


ねー!と言い合う知里ちゃんとアナナキンヌに肩を竦めながら、僕は自室の方へと二人を連れて戻り始めた。


「あ!待てよ?」


不意に良いことを思いつきました。


「ねえ!熊本くんとこ行かない?」


熊本くんの扱う気魄銃もそうだが、エリームと2人での訓練も気になっていた。

あのナチュラルモンスターが如何程のものになっているのか興味しかない。


「おお!いいねぇ!タローの成長を確認してあげよう!」


振り向きざま満面の笑みの知里ちゃんと、それを微笑ましいとでも言わんばかりに頬を蕩けさせているアナナキンヌ。


「アナナキンヌ!熊本くんたちの居場所わかる?」


エリームとは思念だけでも連絡出来るとかなんとか言ってたような気がする。


「はい、もちろん。あ、あとタチバナ様」


早速!とアナナキンヌに接近した僕に、若干頬をひきつらせてみせた。


なに?

パーソナルスペース脅かされたくない系?


「私、エレーヌと申します」


「すごくいきなりだね」


「便宜上こちらの方が良いかと」


「信頼を便宜で勝ち取ったのはとても手放しでは喜べんな!」


アナナキの打ち解けたら止め処無いスピード感に圧倒される僕だったが、このくらいで衝撃を受けていたらエリームとは付き合えない。

アレの嫁なのだ。

仕方がない。


「とても失礼な解釈ですが、この場は甘んじて受け入れましょう。さぁ、私の手をお取りください」


僕の心を読んだエレーヌが不機嫌を露わにしていた。

そんなの気にしていたらエリームとは付き合えない。


そんな力技での解釈を全肯定しつつ、僕は差し出されたエレーヌの手を取った。


知里ちゃんも脇をワキワキさせながら、エレーヌの手を取る。


熊本くんの晴れ舞台だな!


気魄銃も気になるし、あのナチュラルモンスターの進化にも興味しかない。


エレーヌの手を取った僕たちは、未だ見ぬ後輩の成長に心躍らせたが、すぐさま目の前に現れたので感慨もない。


「やや!?先輩方!?何しにここへ!?」


一瞬のうちに、賢政院から野外に移動した僕たちの眼前には、エリームにマウントを取られ手も足も出ないと言わんばかりに横たわる後輩の姿があった。


「少しでも格好の良い瞬間はないのかね」


「細切れに僕を観測してその評価は腹立たしいっスネ!!ずっと見てから言って!?」


声高に叫ぶ後輩は、なんの説得力も無い状態のまま目に涙を浮かべていた。

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