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人類レヴォリューション  作者: p-man
アナナキ世界
103/109

3


父さんと熊本くんは、たまに僕が居ないにも関わらず、我が家で二人してビールを飲みながら野球観戦をしている時がある。


お前んちか!

と、何回突っ込んだ事だろう。


「太郎。お前はウチの子も同然。宗則の結婚式もある。お前の結婚式だって俺は見たい。凛はやらんけども」


布石を打つあたりやはり父である。


俯いたまま、肩をヒクヒクと上下させている熊本くん。


「そうばい太郎。ちゃんと守ってもらって絶対帰ってきんしゃい」


「私は貰われてやれないけど死んだら他の子も貰えないよ?」


母さんも凛も、熊本くんを追い込むようにして追撃する。

やめたれ。

てか、凛のは本当に追い打ちだな。


「うぅ、ぅ、僕は、しにましぇん!」


あーあ。

見ちゃった。

熊本くんのズブズブのドロドロになった泣き顔が上がり、そのど不細工な顔面が露わになる。


「うわぁ、太郎。それは不細工過ぎる」


口に出すな父よ。


「びどぉい!」


うん、同意。


久々の家族面談も、いつも通りなんやかんやゴタゴタし、笑いあり涙あり、結婚報告からの父親必殺"まだ早い"宣言もあり、熊本くんの不細工な顔で一層の笑いをもって終了に至った。


最強を名乗れ!

熊本くんを守れ!

知里ちゃんに見合う男になれ!


僕はこれを父からの有り難い言葉と受け取り、自分の名に恥じぬ戦働きをしてやろうとその名の由来に誓った。



「あー、ごめん。いい感じで幕引きしたけどさ。もう一人いるんだよね」


と、立花家、知里家退出後、また戻ってきた凛とギン。

エリームにまだ待つようにと言われ、知里ちゃんと泣きべそかいてる熊本くんとは別に、部屋に残っていた僕はその二人が現れてちょっと驚いていた。


「どしたの。姉妹揃って」


「いやー面談の前にこっちのアナナキに頼んで取り計らって貰ったんだけどさ。ギンがどうしても兄貴と喋りたいって言うから」


は?

リンではなく、ギン?

聞き間違いではなさそうだが。


「タチバナ様。リン様は既にギン様と会話が出来るようになっておられます」


「は!!?なにそれ!?マジで言ってる!?」


「いやー私も最初は同じ反応だったよ?でも事実実感してるから疑いようもないというか」


ねえ?と、ギンに相槌を打っている。

ソファに二人仲良く座って、こちらを見ているギンはどこかいつもより目がキラキラしてる気がする。


「ギン様は人間の言語をある程度理解しておられますので、スムーズに会話が出来ると思いますよ?」


「ある程度っていうか、バリバリ話せるよ?この子」


「マジで!?」


さっきからマジで?しか言えていない。

嬉しすぎない!?

8年越しに我が愛しの妹と会話するんだよ!?

嬉しくて死ぬかもしれない。


「それではタチバナ様。ちょっと頭部を拝借」


エリームが僕の座っている頭を両手で掴み、程なくして壁に映るギンの元にエリームが現れた。


いや、ごめん。

今、不粋なこと思ったわ。


連れてけよ。


さすがにみんなが通話で終わらせてるのに、僕だけ会うのは卑怯だけどさ。

あれ?てかむしろみんな行けば良かったのでは?

などと、今回の面談自体改善の余地あり的な事を考えているとエリームが戻ってきた。


呆気にとられている凛と目が合った。

あ、あいつも同じこと思ったな。


「それでは、タチバナ様。思念の伝達回路の形成に成功しました。会話をどうぞ」


え!?

もう出来るの!?

やべぇ、違うこと考えてて何話すか決めてない!


『お兄ちゃん!!』


「うぉ!!!?」


なんだ!この幼女みたいな可愛らしい声!

僕の予想では8歳と言えば人間に例えると確か僕よりも大分歳上だったはず。

なので、もっと落ち着いた感じの雰囲気だと思っていたが、まるで逆の印象!

小学生の女の子だ!しかも活発な!


『お兄ちゃん?あれ?ねえ、お姉ちゃん。聞こえんみたいやけど』


バリバリの博多っ子!?

いや、恐らくこのツッコミは既に凛がしているはず。


にしても、この感じ。

まるで凛の小さい頃みたいだな。


「ちょ!何黙ってんの?」


「悪い!あまりの嬉しさと驚きに喉が死んでた!」


『わー!!聞こえる!ちゃんと!』


「おー!ギン!久しぶり!むしろ初めましてまである!!」


『わぁぁぁぁーー!!!お兄ちゃーーーーん!!!』


うぉ!!?

今までちゃんとソファにお座りしていたギンが、何をどう振り切れたのか、画面に向かって飛びかかってきた。

動画とかで野球のファールボールが、眼前に飛び込んで来るのを見たときくらいビクってなった。


「お、落ち着きなさい!ギン!そんなことしたら話せなくなるわよ!?」


『イヤ!お兄ちゃん!会う!なんで!?なんでおらんの!?』


くっっっっそ可愛い。

いつもただいまーって家に帰ってくる僕を迎えてくれてたあの激しさは、こんな感じだったのか!


「ギン?話そ?お兄ちゃん、ギンとゆっくり話ししたい」


『うん、話す!』


先ほどまで画面が一面クリーム色になっていたのが、今度はギンのどアップになった。


「ギン。もうちょいバック。そうそう。はい!オッケ!」


ご飯を食べたいのを我慢して待てする時のようにクイクイとお尻を交互に動かしてバックする。

めちゃんこ可愛い。

可愛い以外の言葉が見当たらない。


『お兄ちゃん!まだ?帰ってこんの?』


最早アナナキの力など微塵も疑っていないが、こんなに嬉しい事があってしまうと逆に疑いたくなる人の性。


「ごめんなギン。もうちょいかかりそうだ。でもちゃんと戻ってくるから、それまでお姉ちゃん達と待ってて?」


『うー。さっきあのメス犬おった!メス犬と遊びよるん?』


メス犬?

なんだそれ?犬なんていた?


「あー、お兄様お兄様」


「なんだね?妹よ」


「恐らく我が妹の申されているメス犬なる人物は千景ちゃんであらせられるます」



メス犬で人物って。

あとすごく言い難そうに説明有難う。

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