ゲーマーの人助け
それは唐突に起こった。ゲームならそれには、主人公が考える時間があるべきであると思う。しかし、俺の目の前に突然現れた人は、
「そこの人ォオ!助けてくれぇえ!」
と魔物、それもトカゲ型のでかいやつに襲われている男が俺に向かってそう叫んだ。そう、先ほども言ったように、普通ならこれは主人公が助かるかどうかを選ぶ時間があるはずなのだ。しかし、今の俺は半ば強制的に助けなければならない方向にある。
「よし…腹くくるか!」
この世界では見たことのない魔物と戦う恐怖。どこかの慎重勇者程ではないが、大和も慎重派のため、いつも行動は堅実である。だからこそ侮ったりはしない。
「こっちだ!でかいの!!」
そう言って『ウォーターカッター』を放つ。しかし、ダメージは与えたものの致命傷までには至らなかった。しかし、大和の狙いは別にある。
『ギシャア!?』
「よし……こっちだ!」
そう言って大和はトカゲ型の魔物を呼び寄せる。そう、大和の狙いは男から魔物を遠ざけることであった。
「エントカゲの弱点は炎属性です!逆に水魔法は半減されます!気をつけてください!」
先程の男が大声でそう叫んだ。自分が役に立つために頑張ろうとしているのだ。なんていい奴だろう。
「そうか……だったら炎魔法で攻める!…って、俺炎魔法の種類が分かんないぞ!?」
そう言いながら慌てて岩陰に隠れてステータスの初級炎魔法の詳細を確認した。
〈初級炎魔法〉
[初級炎魔法には2つの種類がある。それぞれ、『ファイアボール』『フレイム』である。初級炎魔法の消費MPはそれぞれ10である。]
「よし…やるか…」
そう言って大和はトカゲに向かって『ファイアボール』を投げつけた。
『グガァ!?』
命中すると、勢いに任せて投げ続ける。10くらい投げたところでトカゲが倒れた。大和はトドメにウォーターカッターを放ち、首を切断した。
「ふぅ……こんなもんか」
大和は少し疲れたと思い、寝転がろうとすると近くで声が聞こえた。
「大丈夫ですかー!?」
先程の男だろう。心配になって逃げずに来たのだろうか。きっといい奴なのだろうと思いながら、姿を現した男に向かってこう言った。
「はい、大丈夫ですよ!」