ゲーマーの姿
ッ……なんて硬さなの…
戦闘に逢い、私は思った。相手はC級の中でも手強い相手だ。だけど私は苦戦などしないと思っていた。だけど、その結果このざまだ。魔法を放っても相手は辛そうなそぶりもせず、淡々と突進してくる。私は避けるのが精一杯で、隠れて不意打ちをしても有効打はない。このままでは魔力が……いや、魔力以前に体力が限界だ。
(だけど、私には秘策がある)
そう、私には秘策があるのだ。オリジナル魔法、『紅豪円火球』が。これは相手を束縛し、炎で焼き殺す魔法。下手をすれば魔法使いが集まってやっと発動できる「上級魔法」と同等の威力がある、そう私は思っていた。
「業火の炎よ、我の手の元から離れ、汚物を焼き殺せ——紅豪円火球!」
暴牛が迫って来る中、魔法がギリギリで発動する。暴牛に直撃した。
「やったわ!」
私は歓喜に溺れた。
「貴方は私のこと馬鹿にしてただろうけど…それが命取りだった。でも光栄よ?なんたって私の輝かしい冒険者人生の最初の糧となるのだから。さっさと死にな————」
それは瞬間。私は地に伏せていた。
「な、何が…」
そう言ったが…瞬時に理解する。あの暴牛は私の魔法を破ったのだ。そして私はあの牛に突進された。だから地に伏せているのだ。
「あぁ……結局のところ、クエストは失敗だったのね…魔法も効かなかった。例えオリジナル魔法でも私なんかが作ったものなんてどうせ初級……っていうかもうすぐ死ぬんだし、最後くらい素でいて良いよね…。
本当は私はこんな性格じゃなかった。冒険者になるのだからと性格を矯正した。でも、もう終わりだ。最後だから少しくらい足掻いても良いよね……誰か——助けて!」
助けなんてこない。そう分かっていながら、私はそう叫んだ。なのに、なのに!
「任せろ!」
それはあのときの冴えない男の姿。でもそれはカッコよくて……私の目指す冒険者の姿だった。