2 月
歩いても歩いても視界には同じ景色が続く。
かなり歩いたと思う。あたりは一層薄暗くなり、俺の歩みは自然と速くなる。時刻は7時になろうとしていた。
この竹林はかなり不気味だった。人の手によって整理されたかのように、一定の間隔で同じ高さの竹が生えている。生き物の気配は感じられない。虫の一匹だって出てきてもいいはずなのに。
立ち止まることが怖かった。誰かに見られているような気さえした。
ずっと同じ場所を歩き続けているのではないだろうか?
俺は覚めることのない夢の中に閉じ込められているんじゃないか?
そんな事を頭の中でぐるぐると考え続けていた。
ふと、あたりが明るくなった気がした。
「……月だ」
空には大きな月があった。満月だ。太陽の光を受けて黄金に輝くそれはあまりにも大きくて、意識も身体も吸い込まれそうな気がした。
月がある。
ここは地球なのだろうか。
もしかしたら、ここは地球のどこかなのかもしれない。俺は海外へ行ったことも無いし、こんな変わった場所だって現実に存在するかもしれない。なぜ俺がここにいるのかは分からないけれど。それとも、事故に遭って自分の意識の中を彷徨っているだけかもしれない。
月を見ても心を休めることはできなかった。その月はあまりにも美しく、それでいて暴力的だ。直視し続けると自分自身が消えてしまいそうなくらい、眩いほどに月の輝きは増していく。
ここはきっと俺が知っている世界じゃない。
俺は歩き続けた。
歩きながらあの日のことを思い返していた。




