第四話 戦い
今回はとても気合いのはいった回ですのでお楽しみに!!!
廃工場のなかにはたくさんの人間がいた。子供、大人、年寄りまで、幅広い年代の人間がたくさんいた。
ただ一つ不気味な要素があった。
動かないのだ。
ここにいる人間たちはまるで、死んでしまったかのように動かない。
スカーレットは、そんな光景を___
この世のものとは思えない光景をただ黙って見ていた。
いままで一度も見たことのない異様な光景。
それは優芽とであってからの一年間、さほど外の世界に触れてこなかった彼女にとっては異様以外の何者でもなかった。
「なんなのこれ‥‥わけわかんないよ‥‥‥」
そんな狂気さえ漂う光景をしばらく呆然と見つめていたスカーレットだったが、
(ハッ!‥‥‥もしかしてここにいる人たちって‥‥めーちゃんのいっていた行方不明になった人たち‥‥‥?)
ふとスカーレットはこんなことを思った。
(あれ?なんで私こんなこと早く思い付けたんだろう?)
彼女はどちらかといえば頭の回転はあまり速くないぼうだ。
優花はそんな自分がなぜ瞬時にここにいる人間が優芽のいっていた行方不明者だと分かったのか。
彼女自身にも理解できなかった。
「ま‥‥まあとにかく、この人たちを助けないと‥‥でも‥‥あの舞ちゃんって人はどうしたんだろう‥‥」
そのとき廃工場の中に黒い影が現れたのを見た。
その影の正体は__
「ううう‥‥‥」
あの化け物であった。脇には、マッドブルーが抱えられていた。
「はわわわわ‥‥‥なんであいつがここに‥‥‥」
スカーレットが驚愕していると、
「ククク‥‥‥」
工場内の暗がりの奥から何者かの笑い声が聞こえてきた。
「ヨウヤクツカマエタカ‥‥マッタク、クロウシタナ‥‥」
「ヒェ!?この声って‥‥」
その声は人間の肉声とは到底思えないようなものであった。
まるで機械で加工したかのような不気味さ。
まるで地獄の底から聞こえきそうなほどの薄気味悪さ。
まるでこちら側の正気を失わせる意図があって発せられているかのような狂気。
それらすべての要素がスカーレットから平常心を奪い、追い詰めていく。
いや、それ以前にスカーレットはこの声に聞き覚えがあった。前にもこの感覚を体験したような__でも思い出せない感覚__
「ドレ、コチラニヨコセ」
そう言うと、その人物は影からひっそりと姿を表した。
「!!あれって‥‥」
スカーレットは驚愕した。その人物は‥‥
「ホウ、タシカニホンモノダナ」
あの「金髪の魔法少女」であった。
あのときマッドブルーと戦っていた、魔法少女であった。
「なっなんであいつかここに‥‥‥‥」
「ソレデハ、ソイツモ「マジスター」ニカエテヤル」
(マジスター!?‥‥まさかあの化け物の名前?)
「ワレラノケイカクヲタッセイスルニハタクサンノナカマガヒツヨウダ。」
「ソノタメニハマジスターハヒツヨウフカケツ。ソシテマジスターヲツクルニハニンゲンガヒツヨウ。コレカラモットタクサンノニンゲンヲアツメテクルノダ。マジスター(エレクトリック)」
(そっそういうことだったのか‥‥!ここで人が消えていたのもあいつらがつかまえていたからなんだ‥‥‥!)
「トコロデソコニイルヤツ、カクレテナイデサッサトデテキタラドウダ?」
(!!!!????)
これまで隠れてたつもりでいたスカーレットだったが、この魔法少女の目はごまかせなかったそうだ。
金髪の魔法少女は、持っていた銃の形をした魔法少女システムで、スカーレットに乱射してきたのだ。
「うわぁぁ!?」
スカーレットはなんとか避けることができたが、乱射の影響で廃工場の壁に穴が空き、スカーレットが丸見えの状態になってしまった。
「ソコデナニヲシテイル。マサカコイツヲタスケニキタノカ?」
「そっ‥‥そうだよ!!」
「ナゼダ?コイツヲタスケテオマエニナンノトクガアル?」
「そっ‥‥それは‥‥‥えっと‥‥あの‥‥その‥‥なんでだろう‥‥?‥‥わからないよ‥‥」
「リユウモナクタスケルダト?ワラワセルナ」
「ソンナヤツハナニタスケラレナイ。ソモソモジブンノソンザイギモミイダセナイカラッポナニンゲンハ、イキルカチスラナイ」
「‥‥‥!!!」
その言葉は、スカーレット、いや、優花という人間の心に深く突き刺さった。
記憶を失い、一年間、ずっと優芽と一緒に過ごしてきた。そのなかで、日常における常識は、優芽の教えのおかげでなんとか身に付けてきた。
そのおかげで、優芽とは、軽口を叩けるほどのなかになることができ、ひとりではないと思うことができた。
だが、自分は何者なのか、ということについては、深く考えてこなかった。
いや、考えてこなかったというよりは、考えたくなかった‥‥‥いや、考えることが怖かったのかもしれない。
この平穏な日常が続いてほしい、願わくは永遠に続いてほしい。
そのために現実から目を背けてきた。なにも考えないことが楽だったから___
でも‥‥‥‥‥こんなに精神的にショックを受けているということは、心の中に少なからず自分を知らなければならないとダメという思いがあるにちがいない。
もしそんな感情が一ミリもなかったら
こんなに胸は痛まない。
それはほんの些細な感情だが、確かに胸は、ズキズキと痛む。
つまり、自分のなかにも今の自分を変えたいという思いがある。
だが、勇気が出ない。
あと一歩踏み出す勇気が出ない。
どうすればいい?
どうすれば勇気が出せる?
どうすれば一歩踏みだせる?
そんな思いで頭がいっぱいの彼女に動くという選択肢はなかった。
ただその場に止まり、思考し続ける。
それしか彼女にはできなかった。
「フン、ドウシタ?助けるんじゃなかったのか?」
「‥‥‥」
「イイザマダ。オマエハソウヤッテタダダマッテミテイルガイイ」
そう言うと、金髪の魔法少女は、エレクトリックというマジスターから、マッドブルーを受け取り、脇に抱えた。
そして、奥にあった手術台のような台にマッドブルーをのせた。
「フフ、ゾクゾクスルナァ」
金髪の魔法少女は手に持った魔法少女システムに白いクリスタルをはめ込んだ。
『メディカル』
「ソレデハ、ハジメヨウカ」
「………」
スカーレットは、その光景を佇んで見ることしかできなかった。
(私って………なんでここに来たんだろう………得に理由もわからないのに……でもこのままじゃあ……)
このままではマッドブルーが大変なことになってしまう。
(私の存在意義………それはわからない……でも………)
魔法少女システムは、マッドブルーの腹部にあたる寸前である。
(ああ、まずいこのままじゃあ!)
(………………私が)
(私が戦う生きる理由…………)
(…………それは………それは………!!)
「サァ、ウマレカワルガイイ」
(わからないよ………!)
腹部にシステムが当たりそうになった
その時、
「うおりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「ウォッッ!?」
マッドブルーだ。
マッドブルーが金髪の魔法少女に斬りかかっていたのだ。
「マッドブルー!!?」
「大丈夫か?優花」
「…!いや、ごめん、………私が助けるつもりが………」
「今はそんなことを言っている場合じゃない、一緒に戦うぞ!」
「……!!」
スカーレットはショックだった。助けられなかったことに対してのショックではない。
助けようとしたことにたいしてなにも触れられなかったことに対してのショックだ。
「私って……一体………」
「イキテイタカ……ダガソノテイドデハワレハタオセンゾ」
マッドブルーに斬りつけられ、倒れていた金髪の魔法少女だったが、すぐに立ち上がっていた。
「エレクトロニクス、ヤレ」
「ウガァァッッッ!!」
マジスターエレクトロニクスは金髪の魔法少女に命令され、二人に突進してきた。
「テヤッ!!」
マッドブルーはその突進を軽く受け流した。
「ウガァァ!!」
だが、エレクトロニクスはまた突進してきた。
それを刀で受け止めたマッドブルー。
だが、その力は想像以上にすさまじく、
「ぐばぁ!!」
マッドブルーはぶっ飛ばされてしまった。
「………はっ……!!大丈夫!?」
しばらく方針状態になっていたスカーレットだったが、マッドブルーがぶっ飛ばされた音で我にかえった。
「私も何かしなくちゃ……えっと……」
スカーレットは急いで使える魔法少女クリスタルを探すが、
「ウオァァ!!」
「キャッ!!」
エレクトロニクスに吹き飛ばされてしまった。
「ナサケナイナ、マホウショウジョフタリガイナガラ」
なすすべのないふたりを煽る金髪の魔法少女。
そして
「コレデオイウチヲカケルカ」
彼女は、魔法少女システムに、あのゴーレムのような怪物を呼び出したクリスタルをはめ込んだ。
「オオオオ………」
大きな唸り声とともに、怪物が地面からわいてきた。
「こいつ………!私が倒したはずなのに………」
「コイツハクリスタルモンスター(サンドジャイアント)、マホウショウクリスタルニヤドルマリョクヲグゲンカサセタソンザイ。ユケ、エレクトロニクストトモニヤツラヲコロセ」
そう言って金髪の魔法少女はどこかへ、消え去ってしまった。
「オオオオ……!」
サンドジャイアントは、ふたりめがけて拳を振りかざしてきた。
「うわぁぁぁ!!」
「キャァァァ!!」
その衝撃に二人は吹き飛ばされてしまった。
「こんなの………どうすれば………」
スカーレットはすっかりあきらめムードだ
だか
「あきらめるな!まだ終わってない!」
「でも……どうすれば……」
「ウガァァ!!」
エレクトロニクスは身体中に電気を発生させた。さっきの戦いでも使った能力だ。
「あいつ………いや、まて………………はっ!!」
「スカーレット!あいつらを倒す方法が見つかったぞ!」
「えっ!?なに!?」
「お前はあいつらの気を引け。その間に私が何とかする」
「えっ!?そんなこと急に言われても………」
「大丈夫だ。お前は私とはじめて会ったときも勇敢に戦っていたじゃないか。あれだけの勇敢さがあれば大丈夫だ」
「いや、あれは……」
スカーレットはあの時あまりの出来事にびっくりしすぎて、無我夢中になっていたのだ。
よってあれは彼女の素ではない。
「ウガァァ!!」
「オオオオ……」
そんなことを話している間に、エレクトロニクスとサンドジャイアントは迫ってきていた。
「とにかく、お前はあいつらの気を引け!!」
「えっ!うわぁぁぁ!!?」
なんとマッドブルーはスカーレットを二匹めがけて投げ飛ばしたのだ。
「いて!」
二匹の真ん前にスカーレットは投げ飛ばされた。
「あ~も!!」
スカーレットはやけくそぎみに魔法少女クリスタル「マグマ」を取り出し、魔法少女システムにはめ込んだ。
『スタンバイ、マグマグナム』
「くっくらえ……!!」
マグマグナムの弾は赤い球体の形をしており、その温度はマグマ並みであり、どんな厚い壁もその温度で貫通できてしまう威力だ。
二匹の怪物も、その威力に、腹に笠穴があいた。
だが、
「ウガァァ!!」
「オオオオ………!!」
全く堪える様子もなく、二匹はスカーレットに襲いかかった。
「ウガァァァァ!」
エレクトロニクスは電気を身にまとわせ、スカーレットに抱きついてきた。
「うわぁぁぁ!!!!!」
その電撃にスカーレットは大ダメージをうけた。
「オオオオ………!!」
電気攻撃にぐったりしている彼女の真上から、サンドジャイアントは、拳を下ろしてきた。
「がぁぁぁ……!!」
スカーレットは口から血をはきながら、全身を痙攣させていた。
だか、これで終わりではなかった。
「オオオオ!!!!」
「ああ!ぐああ!ぐふ!ぐへ!あう!」
サンドジャイアントはスカーレットを何度も殴り付けた。その度にスカーレットは、口から血を吐き続けた。
「オオオオ!!!!!!!」
今まさに止めを刺されようかという
その時
「たぁぁぁぁ!!!」
マッドブルーがサンドジャイアントめがけて斬りかかってきた。
「オオオオ……!!!」
サンドジャイアントの体はどんどん泥のような色に変化していった。
やがてサンドジャイアントの体は崩れていき、その場所には、大きな泥の塊があるだけであった。
「……マッドブルー、なにしたの?」
「これだ」
そう言って見せたのは、刀の部分が水のようになっている魔法少女システムであった。
「魔法少女クリスタル「ウォーター」を使って生成したウォーターガタナ。これでやつの体に水を侵食させたんだ」
「水を?」
「ああ、やつの体は砂で出来ているようだからな。水で体を泥にすれば、脆くしてしまえる」
「へぇ……」
「ウガァァ!!」
エレクトロニクスが電気をまとい、突進してきた。
「また吹き飛ばされてたまるか!!」
マッドブルーは魔法少女システムをエレクトロニクスめがけて叩きつけた。
「マッドブルー!!……ってあれ?」
マッドブルーは少しもダメージを受けている様子もなく、エレクトロニクスの突進を受け止めていた。
「水は電気を通さないからな。電気さえ無効化できてしまえばもう怖くない」
「ガァァ……!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
マッドブルーの雄叫びとともに、ウォーターガタナの水でできた刃は大きくなっていった。
そして
「ウォーターハリケーンッッッ!!!!!!」
「ウゴァァァァァァァァァァァァ…………!!!」
エレクトロニクスは刃が発生させたた水の竜巻に飲み込まれていった。
しばらくすると、上から、なにかが降ってきた。
「こっ………これって………!」
それは、人間の男性であった。
男性は気絶している様子であった。
マッドブルーは男性の近くに駆け寄り、ポケットから白い魔法少女クリスタルを取り出し、男性の頭の上に掲げた。
すると、男性の頭から、黄色いオーラのようなものが、現れ、クリスタルに吸い込まれていった。
すると、白かったクリスタルが、黄色いクリスタルになった。
「ねぇ……なにしたの?」
「この人に残っている魔力を吸収したんだ。」
「えっ?」
「この人は、魔力を注入されてマジスターになっていたんだ。それは倒せば元通りになるが、残った魔力は完全には消えない。でもそれはからのクリスタルに吸わせれば、残った魔力を吸収できて私はあのマジスターの力を使うことができるってわけさ」
「なっなるほど………わからない………」
「?魔法少女なら当然だが?」
「そっ……そうなの……!?」
「まあ……はっ!忘れていた!捕らわれていた人たちを……」
「………………………」
「ふーっ、よかったー。さらわれていた人たち全員助け出せたみたいだね」
優芽がお茶を飲みながら、一安心していた。
そこには、優花と舞もいた。
「それで?舞はその組織にさらわれたと」
「あぁ、私の親兄弟、すむ場所を奪い、さらって、改造されて、魔法少女にされた。」
「でもおかしいね……魔法少女の手術を行える人間なんて、ほぼ魔法少女軍に所蔵しているはずで、外部にそんなことができる人間がいるとは考えにくいな……」
「それについては私も疑問に思っていたところだ。なぜ奴らは魔法少女手術をおこなえたのか………」
「まだまだ分からないことは多いけど、まあ、焦らずにいこう。」
「………そうだな」
「あの………」
「どうした?優花」
「…………舞ちゃん住む場所ないんだよね……?」
「あぁ、故郷は壊滅させられた。」
「それじゃ……ここにすみなよ」
「なっ………」
「優花!うちにそんな余裕は……」
「私……今まで自分が何者なのかとかなんのために生きているのかとかいうことから目を背けてきたんだよね………」
「でも、あいつに言われてもはっきりわかったんだ。ちゃんと自分と向き合わなきゃって、でも私と舞ちゃんだけじゃあダメなんだ……」
「お願い舞ちゃん!!!私にいろいろ教えて!!!」
「魔法少女軍のこととか、マジカルズのこととか、このまちの外にはなにがあるのかとか、教えてほしいことがたくさんあるんだよ!!!」
「…………」
「…………分かった」
「!!」
「これからよろしくな、優花、優芽」
「…………やったァァァァ!!!」
嬉しさのあまり、優花は泣いていた。
「勇気出して言ってよかった~!!」
「はぁ……これでさらに賑やかになるなぁ……」
夜の空の下、少女の歓喜の声はいつまでも響きわたるのであった。
いかがでしたか?初めてこんなに長い文を打ったのでとても疲れました(泣)
でもめげずに、頑張るぞ!