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鏡界の境界  作者: 嵐風颪
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第九話「ガロン」

「──え?」

 オレは声を漏らした。ガロンとかいう男がオレの背後に立ちニヤニヤと笑っている。オレは反射的に振り向いた。ガロンが鼻息を大きく吐き出し、

「ふふん! で、だなァ」

 何か説明し始める気らしい。オレはヒロを見た。彼は怪訝そうな目でガロンを観察している。オレは言葉に詰まった。

「おまいらァ、ちょっくらオレに着いてこい!」

 オレはヒロを再び垣間見た。ヒロもこっちを見ている。

「おぅ? ほら、こっち来い」

 ガロンは既に何歩か歩き出していた。何処へ向かう気だ。

「レン、ここは着いていきましょう」

「はぁ? コイツ、何するか分からねぇんだ──」

 最後まで言えなかったのにはワケがある。突然ガロンが怒鳴った。

「口を慎めェェィ!!!」

 うっひゃぁぁぁっ! 耳がァ……。

「このワシに向かって『コイツ』などとォ!!」

 うぐぐぐぐ……。とんでもない怒声だ。

 オレは耳を押さえながらもがく。

「ヒロ! ちょ──」

「やまかし──あ、違う、やかましいだっ!!」

 オレはもがいている最中に噴きだした後、笑い出した。うぐぐぐ……。ヒロは顔をしかめながらガロンを見ている。平気なのか? あぁ、オレみたいに間近じゃないしな……ハハハ。

「ああもう!! とりゃぁっ!!」

 ガロンはそう言って(叫んで、の方が正しい)、何かをした。何かをした、というのも、オレはその頃たまたま下を向いていた。それだけなんだが。ふうむ。後から思えば、確か両手を振り上げたような感じはしたな。

 オレはハッと上を見上げた。周りは以前と変わらない。違うのは、『音』だ。何も聞こえない。いや、ヒロが何か呟く声とかは聞こえるんだぜ? 待て、ヤツは何を呟いてる? オレはヒロの方を向いた。

「あんな……まさか……こ……んな……? …なぜ……いつ……なかった……の…が……わから……あんな……あんな…どこで…?」

 どういう事だ? アイツがあんなに動揺する? オレでもこんなに冷静なんだぜ? アイツにしか見えない何かでもあるのか?

 そしてオレはハッと気づく。ガロンがいない。

次回予告:現れたもの……!

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