第七話「曇天」
ヒロ、ソイツの話によると、俺たちは本当に何もしなくてもいいらしい。目的らしい目的はないという。
「ええ、『案内人』はそう言っていました。この世界では何もしなくてもいい。ただ自分が正世の自分の『死』を逃れられるか──それが目的。簡単に言えば、強くなればいいんです」
なるほどな。
「でだ。今からどうすんだ?」
「とりあえず、この山から下りるしかないですね」
それはそうだな。
というわけで長い。何だこの階段……。まだ半分以上ありそうだな。まさか正世に帰る時これを上れっていうのか? あぁ、先が思いやられるぜ。
「なぁ、いつまで続くとか『案内人』に聞いてないのかよ?」
「いいえ、あなたこそ聞いてないんですか?」
オレはため息混じりに息を吐いた。ったく。『案内人』も適当すぎるんだよ。マザーも同じだってんだ……。
「やっと着いた……」
オレは思わず口走った。しかしやっと降りたぜ。
「さすがにキツイですね……。それにしてもこれだけの高さがあるところから降りてきたなんて、信じられません」
ヒロが額の汗を拭いながら言った。空はどんよりと曇っている。ちょうど至的温度くらいでいい感じだ。オレは力なく笑う。
「ハハハ……」
目の前に広がっているのは果てしないかと思われる荒野。広い。地平線なんて始めてみた。そんな荒野にたたずんでいる一つの山──が、今降りてきた山だ。
ドサッとオレはその場に座り込んだ。息を吐き出す。ヒロも隣に腰掛ける。
「で、降りてきたはいいがこの有様だ。どうしてくれる」
「ボクに言わないでくださいよ……道がこれしかないから進んだだけなんですから。なんなら……もう一度上ります──か?」
「いいや、断固拒否する」
ヒロはですよね、と笑って呟き、曇天の空を見上げた。オレもそれに倣う。
しばらくそんな体勢が続いた。
と、その時。
落雷のような空気の裂ける音がした後、雲が裂け、上で大爆発が起こった。
次回予告:突然の爆発、一体?




