最終話「最期」
目の前にヒロと知樹がいる。二人並んで神山とやらを見上げていた。
「僕がここを降りてきたのはつい一昨日の事でした」
「僕は……二年くらい前の事です」
オレは二人に歩み寄る。すると、知樹が一歩前に踏み出した。
「もう、行くのですか?」
ヒロが呼びかけた。知樹は頷いた。
「はい、今からこの神山の頂の教会までテレポートします」
「分かりました」
あ……そうか。
ふとオレの頭によぎった物があった。それは、オレを安心させた。確信があった。
「……言い残す事はないのか?」
ヒロは頷いた。知樹は呪文のようなものを唱え始めた。と、知樹の体が白く光り始める。さっきと同じだ。
「知樹……ッ!」
ヒロが近寄る。今、まさに白く輝いてテレポートしようとしている知樹が叫んだ。
「だめです!! 兄上まで頂へと飛んでしま──」
しかし、叫びの途中で知樹の姿は消えた。わずかな残像を目に残して。
なんていう最期だ。兄との別れがこんなんだってな。……ありかよ。
「知樹……最期までドジでしたね」
「最期まで?」
「知樹は、生前もよくミスをしていました。だからこそ、死に掛けたっていうのもありますけど」
あ、だからあの爆発……。
「それもだと思います。知樹の生まれつきの特徴ですよ。……知樹らしい最期でちょっと安心しました」
そうか。オレはふっと微笑んだ。
「ならもっと安心させてやるよ」
「──え?」
ヒロはオレを振り向いた。
「パラレルワールドって知ってるか?」
「パラレルワールド……? 並行世界のことですか? 例えばこの鏡界のような……」
「そう。他に言うと、歴史にはいくつもの分岐点があるって事とかだ」
やはりヒロは察しがいい。オレが言いたい事をすぱっと言い当てやがった。
「つまり……知樹が生きるという未来……過去もあると?」
「その通り。お前はたまたま知樹が死んだ道を行っただけだ。知樹は、生きるさ、きっと」
ヒロは空を見上げた。オレもならって空を見上げる。見上げた空は、蒼空だった。
「あり得ませんね……そんな事、21世紀前半の考え方ですよ」
そう言いながらも少し笑っている、ように見えた。
「ふん、とにかく」
オレは一呼吸おいてから言った。
「オレは信じるぜ、パラレルワールドがある事を」
終わりましたね。
今までありがとうございました。
二部はブログ(http://narutomusicing.blog19.fc2.com/)で公開中です。その内ここにも載せるのでお楽しみにw




