第十七話「真実」
「戦争……? おい、それってマジかよ?」
信じられない。嘘だろ?
「本当です。実際に起きてるから言ってるんじゃないですか。簡単に言えば二回……」
「じゃ、じゃあ日本は……日本はどうなるんだ? まだあるのか?」
「大丈夫です、日本はまだ……」
「おい、そっちの話は今はいい。今は、ゴウを」
ガロンが口を挟んだ。っち、また後だ。……ゴウっていうのは……知樹のここでの名前の事か。
「どうするんだ? ゴウ」
「僕は正世へ帰ります」
「……そうか。ならオレは止めない。たとえ、お前が正世で死のうが、生きようとな。こっちの知った事じゃない」
ガロン……お前が鏡士として知樹を導いたんだろ? それなのに何だそれは……。今まで知樹をここで看てたんじゃないのか? 「帰る」って言った途端、それかよ。ったく、わからねぇ。オレは黙ったまま、頭の中でガロンに文句を言っていた。
「それじゃ、ゴウ、明日朝、またここに来い」
「分かりました」
いいのか? こんな簡単で。オレはヒロを振り返った。ヒロは無言でうつむいていた。ここからでは口辺りしか見えない。だが、ヒロは唇を噛み締めていた。オレもつられてうつむいた。
「なぁ」
オレはふとヒロに問いかけた。
「これでよかったのか?」
ヒロはおれの寝室に戻ってからずっとベッドに仰向けに倒れ、目を腕で覆っている。寝ているのかと思ったくらいだった。
「まさか……」
言葉の終わりに少し笑ったような感じはしたが、オレは気にしなかった。
「よくないんだろ?」
「…………」
ヒロは無言だったが、オレは続けた。
「知樹を止めるか?」
「……はい」
「そう言うと思ったぜ。兄上だってんだからな」
「……ハハ」
オレは立ち上がって寝室の扉の前にたった。ヒロが起き上がる音が聞こえる。それと同時に、扉を叩く音がした。
「誰だ?」
扉の向こうから声が聞こえる。
「……あの……ゴウです」
次回予告:知樹=ゴウが訪ねてきた理由は……?




