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鏡界の境界  作者: 嵐風颪
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第十五話「知樹」

 知樹……?

「おい、ヒロ、知樹って誰だ?」

 ヒロの首から一筋の汗が流れ、オレはゴクリと唾を飲み込んだ。ヒロの口が開く。

「僕の……<b>死んだ弟</b>です」

 言葉に詰まった。死んだ弟が、なぜここに? っつーかコイツ兄だったのか。いや違う。どうした死んだはずの人がここにいるんだ?

「分かりません……それより……知樹……!」

 そう呟いてヒロは危なげに歩き出した。向かう先は、少年が怒鳴られている所。どれが知樹って奴だ? あの怒鳴られているやつか? それとも周りの怒鳴っている奴らのうち誰かか……。

 視界はすっかりよくなったからここからでも顔がよく分かる。ふうむ。怒鳴られている奴はなんともヒロに似ている。……あぁ、もうコイツだな、知樹とかいうのは……。

「知樹……! 知樹!」

 ヒロはそう叫びながら歩いていった。怒鳴られている知樹(であろう)はヒロに気づいたか、ヒロのほうを向いて呆然としている。

「兄……上?」

 周りにいたガロンその他の怒鳴っていた奴らは怒鳴るのをやめてヒロを見つめた。ガロンが眉間にしわを寄せていった。

「兄上? お前ら兄弟なのか?」

 ヒロはこくりと頷いた。ただし、おぼろげにだ。ヒロは知樹(であろう)に近づき、「知樹……」と呟いた。

「兄上!! なぜここに?」

「お前こそ……なぜここにいるんですか? 知樹……お前は死んだはずなのに……!」

 そうヒロが言った時、知樹の表情が変わった。驚きから、絶望へ。

「……え?」

 そう呟いたか呟いてないか、危なげだが、オレにはそう聞こえた。そして、ヒロの顔も変わる。

「まさか……お前!」

 どういう事だ……。ヒロの弟は死んだ……それはヒロが知っている。しかし知樹は知らない。ここは時空のねじれか?

「どういう事……? 兄上……コレは一体? 僕が死んだって……」

「知樹……、いいですか? お前がこの世界に来た理由、それは死にそうになったから……。お前が死んだのは西暦2110年の事、敵の罠にかかって……」

 知樹は絶句した。周りのガロンたちもあっけにとられてみている。オレだって絶句だぜ。それに……2110年? 待てよ。2110年って……俺がここに来た時は2008年……まだ100年も後じゃねぇか。ってことは……ここは正世の時間とはまた違っているのか? ……そうか、だからここでは年をとらない……。それに「敵の罠」ってヒロは言った。つまり──戦争? まさかな。知樹が震える声で言った。

「つまり……僕は死ぬって……どうやっても死ぬって事ですか? ここで……何をしたって!?」

 ヒロは呻いた。

「まさか知樹が鏡界に来てるとは思わなかった……。ここに来た上で、死んだ……なんて」

 ヒロは驚愕の雰囲気をかもしだしていた。知樹は黙り、うつむいた。

「…………」

次回予告:知樹の決断……?

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