第十話「空船」
「ガロンはどこだ? おいヒロ!!」
オレの張り上げた声にヒロはぴくっと反応し、オレの方を向いた。顔は青ざめている。一体、ヤツには何が見えたんだ?
「いえ……別に何も」
「何もないってことはねぇだろ! どうしたっていうんだ? ガロンとかいうやつはどっか行くし、お前はやたらと動揺してる……。何があった?」
「…………」
ヒロは無言で地を見つめている。
「おい!」
オレはそう言ってヒロの方へズンズン歩いていった。そして、ヒロの肩をむんずと掴みながら問いかけた。
「さっきはどうしてあんなになってたんだ?」
「……『案内人』に言われたんですが」
──『案内人』? また『案内人』かよ。どうして『案内人』はコイツばっかりに説明するんだ?
「知りませんよ。『案内人』……彼女が言っていたんです」
「『あなた──」
途切れた。大声があたりに響く。さっきから変に風の音とかがしないから余計にうるさい。くそ……ヤツめ、戻ってきたか。
「ハッハッハ!」
ソイツはまた大声で笑った。そう、もうお分かりであろうがガロンである。オレは声のしたほうを振り向く。
オレは口をあんぐりと開けガロンを見た。いや、正確にはガロンの後ろに控えている舟、だが。オレはごくりとつばを飲み込む。デカイ。それに尽きる。SFとかで出てきそうな舟……。
ガロンがこっちに歩いてきた。
「コホン!」
ムダにデカイ咳払い。何だ、コイツこの舟の艦長か? えらく偉そうじゃないか。
と、ヒロがガロンに話しかけた。ふうむ。確かにコイツが話しかければ無難だな。
「あなたは……何者です?」
待ってましたとばかりにガロンが鼻高々に話し始めた。
「ふっふーん! このワシはのォ、この舟……いんや、まぁ舟でいいか。正しくは『空船』っちゅーんじゃがなァ……コ、コホン。この舟の……聞いて驚けェ……艦長なのじゃァっ!!!」
…………。
どうすればいい? 諸君。どう反応すればいい。これ。
……しばらくの沈黙。あ、ヒロに言ってもらえばいいんじゃないか。ハハハッ。
……おーい、ヒロー。……畜生が。
「あー……はい、それは大体姿から察しはつきますが──」
「何ィっ!?」
「あぁ、まぁ、それだけ威厳があるという事……だと思います」
「あぁ、そうだろうな、そうだろ? そう見えるだろ? ハッハッハ!!」
そう言ったらほら、もう照れてやんの。オレはヒロをちらと見る。ヒロはこっちを向いて微笑み、口を開いた。
「それで、ぼく達に何の用ですか?」
「そうそう。ええっとだなぁ……」
次回予告:その用件とは……?




