9 肉無き剣は忠誠を誓う
「あるじ、ちゅうせい、ちかう」
「いや、忠誠ってお前…」
骨が跪いた状態で、再度同じようなことを言った。髑髏が真っ直ぐ私を見ている。
しかし、いきなり忠誠と言われても困るぞ。
まぁ、流れから推測して、自分に勝った者に従おうというのは分かるのだが…。
私が困っていると、救世主が現われた。
「ぴっぎー!」
「おぉ、帰ってきたのか」
友の帰還である。
「なにやつ」
しかし、骨は初対面なので、ピッギーを敵だと思ったらしい。私を守るように立って、盾を構えた。
私は気にせず、ピッギーと会話を交わす。
「ぴぎー?」
「あぁ、新しく仲間になった奴だよ」
忠誠どうこうは置いておき、とりあえずそういうことにした。
「あるじ、これは?」
「これじゃない、ピッギーだ。私の友だ」
「ぴっぎー?」
「ぴっぎー!」
ピッギーは骨に元気よく挨拶をした。骨は困惑しているようだが、嫌ってはいないようだ。
「ぴっぎー、あるじ、つけた?」
微笑ましい光景に腕を組んで頷いていると、骨が問うてきた。
片言で分かりにくいが、ピッギーの名前のことを指して言っているのだろう。
私は頷く。
「あぁ、私が名前を付けてあげたんだ」
「あるじ、なまえ、ほしい」
「お前、名前が無いのか?」
「ない」
そうか、無いのか。せっかく仲間になったのだから、名前はあった方が良いよな。
「…何か希望はあるか?」
「あるじ、つける、それでいい」
欲が無いな。しかし、何でも良いと言われると困るんだが…。ほら、誰かと夕食を食べる時に「何か食べたいものある?」って聞いて「何でもいい」と言われると、困るだろう? …困るよな?
結局、無い知恵を絞って、私は一つの名前を思いついた。
「【ツルギ】、はどうだ?」
「つるぎ?」
「そうだ」
「なまえ、つるぎ、よろしく、あるじ」
「あぁ、よろしくな、ツルギ」
どうやら受け入れられたようだ。良かった。
「なまえ、つるぎ、よろしく、ぴっぎー」
「ぴぎー!」
私は握手する二人を見て和んだ。これから楽しくなりそうだ。
2018/07/15
加筆修正。686字→806字