8 這いいずる闇の息吹
視界がその機能を取り戻した時、私は言葉を失った。
骨の剣が、私の目の前で止まっていたのだ。
正確に言うと、黒い半透明の膜のようなものが骨の剣を受け止めていた。
骨が力を加えているためか、剣と膜との接触面から、ギャリギャリと凄まじい音がしている。音だけ聞くと不安になるが、膜は全く破れそうな気配がない。
それよりも、驚いたことが他にもある。聞いてくれ。
なんと、私は椅子から立ち上がっていた! 傍から見ると、膜に手をかざすような形で立っていることだろう。
あれだけ嘆いていた椅子から、私はようやく解放されたのだ!
骨の様子を見ると、閉じていた口が大きく開かれている。骨も驚いているのだろう。何を隠そう、私も驚いている。今まで何の成果もあげられていなかったからな。
私は膜を見た。何となくだが、これは私が出しているものだと分かった。不思議な繋がりというべきものを、膜から感じるのだ。
ならば、私が操ることも可能だろう。
「はぁっ!」
キィン。
私の声と共に膜が共鳴し、剣を弾いた。骨の左手から剣が弾き飛ばされ、離れた場所に突き刺さる。
よし、奴の攻撃武器を取り除くことができた。これでもう、攻撃することはできまい。
私は静かに、骨へと問うた。
「まだやるか?」
骨は盾を落とし、跪いた。
潔い奴だと私が思っていると、骨が喋った。
「あるじ、ちゅうせい、ちかう」
私は言った。
「お前…喋れるなら会話しろよ!!」
心の叫びだった。
2018/07/14
加筆修正。439字→590字