1 誇り高き漢たちの夜
とある酒場で二人の男が酒を飲んでいた。背負った剣や傷の多い顔など、風貌から見るに、男たちはどうやら冒険者らしい。
「らしい」というか、その酒場は冒険者ギルド内にあるので、客のほとんどが冒険者であった。
酒を豪快に一気飲みした片方の男が、もう一人に問いかける。
「そういえばジョン、聞いたかよ? ダンジョンのアレ」
「あぁ、新しい階層が見つかったことか? さすが、スミスは耳がはやいな」
ちびちび酒を煽っていたもう片方は、思い当たることを口に出した。
「そうそう、それだよ。今になって新しい階層が見つかるなんて、珍しいよな」
「そうだな」
「あのダンジョン、見つかってから結構な時間が経ってるはずだよな?」
「たしか、調査隊が組まれて隅々まで調べたはずだ。それこそ、抜け道や隠し扉の類がないか、隈なくな」
「だよな。三十層以降は別として、色々探ったらしいしな。……もしかして、【変成】が起こったのか?」
「ダンジョンの構造や性質が変わるっていうアレか……。ありえない、とは言えない」
ジョンは顎に手を遣り、何やら考え込んだ。
「まぁ、見つかってから一度も変成期に入ってないっぽいしな。あのダンジョンの規模から考えると、異常ってほどでもないだろうよ」
「そうは言っても、これまで無かった状況だからな。心配はいくらしても無駄にならない」
「相変わらず慎重な奴だな、ジョンは」
「そのおかげで、今までコレで飯を食ってこれただろ?」
ジョンは自分の剣を掲げながら、からかい顔のスミスに答えた。
スミスは相棒の返しに思わず笑みをこぼす。
「ちげぇねぇ」
「そうだろうそうだろう。ま、ともかくだ。数日の間は、いつもより注意してダンジョンに潜ることにしよう」
「わかった」
「仮に何かあったとしても、今は高ランクの冒険者が結構いるからな、案外何とかなるかもしれん」
「銀級の『月下の咆哮』とかな」
「……頼むから、彼等の女性メンバーにちょっかいはかけるなよ?」
「いくら何でも、相手のいる女に手を出すほど飢えちゃいねぇよ」
「まぁ、それはそれとして……」
「あぁ、それはそれとして……」
「「別嬪さんとお近づきになりたいなぁ……」」
ジョンとスミス。
男二人のパーティーはそれから、やけ酒を呷ったとか呷らなかったとか。
<人物>
・ジョン
慎重な性格。
・スミス
大胆な性格。悪く言えばアホの子一歩手前。
<作者より>
かなりお待たせしておりますが、幕間的な話であるこの回だけは何とか書けているので、投稿しておきます(進捗は約半分くらいです)。残りはまだ時間がかかりそうです。気長にお待ちください。




