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朽ちた玉座の骸骨王  作者: 半信半疑
第一章
5/52

5 肉無きその身は友を得る

 長め。

「みっともないところを見せてしまってすまなかったな」

「ぴぎー!」


 私が泣き止んだ後で、私達は対話をした。対話といっても、「ぴぎー」と鳴く相手に私が話しかける形だったが。


「お前、名前は何て言うんだ?」

「ぴぎー?」


 どうやら名前を持たないらしい。

【青い何か】と呼ぶのはアレだし…そうだな、【ピッギー】と呼ぼう。


「私はお前のことを【ピッギー】と呼びたいんだが…良いだろうか?」

「ぴぎゅー!」


 これは良いということだろうか。名前を呼んで反応を確かめてみよう。


「ピッギー?」

「ぴぎゅー!」


 どうやら認められたようだ。


「よろしくな、ピッギー」

「ぴぎゅー!」



◇◆◇



 私は、新たにできた友と楽しい時間を過ごした。


「どうだピッギー、気持ちいいか?」

「ぴっぎー!」

「そうかそうか、気持ちいいか!」


 特に、ピッギーを撫でるのは至高の時間だった。

 弾力のある滑らかなピッギーの身体は、私をあっという間に撫でリストへと変えた。

 あぁ、ふれあえるとは何と素晴らしいことか。

 独りで過ごした時間が長すぎたせいか、余計にそう感じた。


 他にも、私の手のリズムで踊りを披露してくれたり、逆に私を撫でてくれたりと、ピッギーはとても優しかった(ピッギーは自分の身体を器用に変形させることができるのだった)。



◇◆◇



 しかし、その楽しい時間にも終わりがやって来た。


「ぴぎー」

「どうした?」

「ぴぎゅー」


 ピッギーはどうやら、この場所を離れる必要があるらしかった。

 そうだよな、ピッギーにはピッギーの生き方があるもんな。椅子から離れられない骸骨と一緒にいるより、大事なことがあるもんな。


「ぴぎゅー…?」

「あぁ、大丈夫だ。だから早く行きな」

「ぴぎー」


 心配そうに度々振り向きながら、ピッギーの姿は扉の外へと消えていった。

 ズズン、という音が響いた後、扉はわずかに開いていたその口を閉じた。


 私はしばらく眠ることにした。最近は浅い眠りばかりだったが、今日は安らかに眠ることができるだろう。


「おやすみ、ピッギー」


 友に挨拶をしてから、私は眠りについた。



◇◆◇



「…! …!」

「…んぁ、何だ…」


 寝ていた私は、何かの音で目が覚めた。

 目元をごしごし拭うと、ようやくその音の正体が分かった。


「ピッギーじゃないか! どうしたんだ、戻ってきたのか?」

「ぴぎー!」


 元気に応えるピッギーは身体の一部を変形させ、手を挙げるような仕草をした。

 うむ、とても可愛らしい。

 じゃなくて、


「どうしたんだ? 忘れ物か?」

「ぴぎゅー」


 ピッギーは一声鳴いた後、私の右斜め前に移動した。

 そこには何かの肉のようなものがあった。


「もしかして、それはピッギーの食べ物なのか?」

「ぴっぎー!」


 正解とばかりに鳴くピッギー。

 そうか、お前は食べ物を獲りに行くために、この場所を離れる必要があったのか。

 自分が骨であり、必要がなかったから、食事のことをすっかり失念していた。


「ということは、ピッギーはこれからも、この場所にいてくれるのか?」

「ぴっぎー」

「私と共にいてくれるのか?」

「ぴっぎー!」


(あぁ、私の友はなんて優しいんだ…)


 私は何かの肉にかじりついているピッギーを見ながら、そう思った。


 ぴぎー!

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