19 種はいずれ天をも穿つ
<前回のあらすじ>
「私は、私の友を、仲間を、守る力が欲しいのだ」
「魔法も教えてあげるわ! 頑張りましょうね!」
「ありがとう、ポプラ」
「さて、骸骨さん。あなたのお名前は?」
ポプラが私の名を聞いてくる。
私は苦い顔で正直に答える。
「それが……自分の記憶が抜け落ちていて、名前も過去も覚えていないんだ」
ポプラは腕を組んで考え出した。
「うーん、覚えていないってことは元はあったということよね……」
その独り言に、私は答える。
「そうだ、元は人間だったような気がするのだが、このダンジョンで目覚めると、骸骨になっていた」
「人間から魔物へ?」
「そういうことになる、か」
「まぁ、思い出せないなら思い出す時を待ちましょう。とりあえず、あなたのことは【骸骨さん】と呼ぶことにするわ」
「あぁ、その呼び方で構わない」
「よろしくね、骸骨さん」
「よろしく、ポプラ」
ポプラが手を差し出してきたので、私はその手を軽く握った。
◇◆◇
「それじゃあ、しばらくここに住むにあたって、しなくちゃいけないことがあるんだけど、どこか広い場所はないかしら?」
「どれくらいの広さがいるんだ?」
「大木が一本立つくらいね。何もない場所が良いわ」
「それなら最適な場所がある」
私はポプラを連れて、果樹園とは反対方向へと進む。
あそこには平原が広がっている。大木一本くらいなら余裕で立つほどだ。ニ、三本でも大丈夫だろう。
私たちは宮殿を通りすぎ、平原へと向かった。
ピッギーやツルギがいたらポプラを紹介しようと思っていたが、残念ながら二人はいなかった。ダンジョンで敵を倒しているのかもしれない。
そして、私たちは平原に着いた。
「うん、ここなら大丈夫そうね」
「それで、しなくちゃいけないこととは何だ?」
「まずはこのあたりの草を刈り取ってちょうだい」
私はポプラに言われた通り、草を魔法で刈り取った。茶色い地面が露わになる。
「それで良いわ」
ポプラはそう言うと、虚空に穴を生み出して、そこから何かを取り出す。出てきたソレは、何かの種のように見えた。虚空の穴も気になるが、種の方も気になる。
「それは?」
「これは、妖精が生きる場所には絶対必要な木、【ユグドラシル】の種」
ポプラはそれをポトリと地面に落とし、魔法を使った。
「【バース・オブ・ユグドラシル】」
緑の穏やかな光が迸り、種に流れ込んでいく。
やがてその光がおさまると、目の前には一本の木が立っていた。見上げるほどの大木、とまではいかないが、それなりに大きな木だ。
「魔法の発動である程度までは生長するけれど、大木まで育つには時間がかかるのよ」
私の心を読んだのか、ポプラが解説してくれた。
「そうね、一月もあれば、かなりの大きさになるわよ」
普通の木とは違って、生長が速いらしい。しかもかなり大きくなるという。
いったいどんな木になるのだろう。とても楽しみだ。
私は魔法の水を木に与えた後、ポプラと共に宮殿へと帰った。
見たこともない木ですから、
見たこともない木になるでしょう。




