4 呼び声に応えし青
停止した思考をわずかに稼働させ、私は音のした方を見た。
条件反射のようなものだったかもしれない。しかし、それで良かった。
何故ならそこには、信じられない光景があったからだ。
「と、と、扉が…あ、開いている…」
何日も見つめた、あの重く閉ざされていた扉が、開いている。
私の心を折った、あの扉が。
途端、私の身体には力が漲り、思考がハイになった。依然として椅子からは離れられなかったが、そんなことは些細なことだ。
「どこだ? いったい誰が?」
必死で探す。望んでいた存在が、ようやく姿を見せたのだ!
顔をぶんぶん振り、視線を動かす。がしかし、その存在はどこにも見当たらない。
頭上まで確認しても、そこには何もいない。幽かに見えた一筋の光がだんだん消えていく錯覚に陥る。
私は深い落胆を抱え、視線を下げる。
と、
ぽよん。
柔らかい感触と共に、大腿骨に重みを感じた。
見ると、そこには青い何かがあった。そうとしか形容できない何かだ。
青い何かは、左右にゆっくりと揺れている。私が動かしているのではない。青い何かが、自分で、自分の力で動いているのだ。
もしかして…。
私は恐る恐る、青い何かを人差し指で突いてみた。
ツンツン。
「ぴぎー!」
こいつ、鳴くぞ!
生きてる、生きているんだ!
生き物なんだ! 私以外の生き物なんだ!!
思考がその事実を理解するやいなや、私は青い何かを抱きしめた。
「よく来てくれた! 本当によく来てくれた! う、うぅ…」
私は青い何かを抱いたまま、こらえきれずに涙を流した。
嬉し涙だった。
それからしばらく、私は泣き続けた。
2018/07/12
加筆修正。555字→642字