15 そして旗は立てられた
「ふんふんふーん」
「あるじ、たのしそう」
「分かるか? ふふふ」
「ぴぎぴぎぴぎー」
「わかる、あるじ、たのしい、つるぎも、うれしい」
三人での初扉外探索を終えた翌日、私は椅子に座って鼻歌を歌っていた。ツルギは私の横で心をぴょんぴょんさせ、ピッギーは膝の上で身体をぽよんぽよんしている。
椅子は依然としてぼろっちいままだが、もはやそんなことを気にする私ではない。
今日もまた、扉の外の探索をするのだ。もちろん三人で!
いやー自由に動けるって素晴らしい(動くのは視界である目玉だが)。
「昨日の疲れは十分とれたし、そろそろ探索に行こう」
「わかった、あるじ」
「ぴぎー」
そして、私が魔法で眼球をつくろうとした、その時だった。
ツルギが突然、椅子に座る私の前で盾を構えた。視線は扉の方に向けられている。ツルギには目玉も表情筋もないが、その様はどこか険しく見える。
「? どうかしたのか?」
「あるじ、てき、きたかも」
「ぴぎー…」
私は身体を緊張させ、扉の方を見つめた。
すると、ズズズと音を立てて扉が開きだした。
間違いない、何かがこの場所へ足を踏み入れようとしている。
そして、扉を開けて中に入ろうとしていた何かが、姿を現した。
いや、この場合は『何か』ではなく『何者か』だな。
「敵は三体のようだ」
「スライムにスケルトン、それとリッチか…」
「腕が鳴るぜ」
「油断大敵だよ」
「そうです、気を引き締めてください」
中に入ってきたのは人だった。その数、五人。男三人、女二人だ。
男たちは剣、女たちは杖をそれぞれ持っている。明らかに、戦闘を考慮した格好だ。
だが、話し合いは大切である。さて、彼等に言葉は通じるだろうか…。
五人は私たちのいる元へと近づいてきた。結構な速度だ。特に男三人が速い。
私は本格的な接触をする前に、意を決して、彼等に話しかけた。
もちろん、椅子から立ち上がって、だ。
「や、やぁ。初めて会うが、君たちはどこの誰だ?」
すると、大股十歩ほど手前で、五人全員の足が止まった。
何だろう、また何か駄目なことでも言ってしまったのだろうか。ツルギと初めて会った時も、似たようなことを言って襲いかかられたし…。
はっ! もしかして彼等も、敵を倒すと強くなるタイプの輩なのだろうか?
「おい、リッチが話しかけてきたぞ」
「特殊個体かもしれん」
「関係ないぜ、敵は倒せばいいんだ」
「補助するよ」
「私も」
男三人が口々に言い合う。
あぁやはり、戦闘は避けられないのか…。会話は成立しないのか…。
そして、人の形をした敵意が、私たちに襲いかかってきた。
2018/07/19
加筆修正。885字→1036字




