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朽ちた玉座の骸骨王  作者: 半信半疑
第一章
1/52

1 覚醒の時、来たれり

 私は目覚めた。

 薄暗がりの中、ぼろいが豪華な椅子の上で。

 なおかつ、骨の身体で。


「骨………骨?」


 そう、骨だ。それは骨だった。肉は見事に削ぎ落とされている。

 私は自分自身を【人】だと思っているが、これでは、声高く叫んだとしても、嘘つき呼ばわりされかねない。後ろ指をさされるのは御免だ。しかし、この見た目ではそれも仕方ないのかもしれない。


 記憶については、不明瞭だ。思い出そうとすると、何かが断片的に浮かんでくることはある。あるのだが、いずれも要領を得ないものばかりで、私の過去については闇に包まれている。

 見た目にしろ記憶にしろ、現段階では何ともし難い。だが、いずれどうにかしたいものだ。


 自身の身体から視線を外し、周囲に目を向ける。

 青っぽい光点がいくつもあって、それがこの場所を明るくしているらしい。


「ここは、地下なのだろうか…」


 恐らくそうなのだろう。地上であるならば、もう少し明るくてもいいはずだ。

 あぁ、しかし。私にはこのぐらいの光量で十分なのかもしれない。これでもよく見えるからだ。前は、つまり【人】であった時は、もう少し目が悪かったように思う。それがやや暗くても十分になっていた。

 …やはり私は人ではなくなったのかもしれない。


 まぁ、それはさておき。


「あまり眩しくても目に悪いからなぁ」


 私は光点に意識を向ける。光点は、よく見ると花の形をしていた。

 あれだ、彼岸花みたいな形だ。花弁は赤くはないが、よく似ている。

 花はこの場所のあちこちに生えて、光を放っていた。いやはや、光る花とは何とも面白い。


 私は近寄ってみたくなり、腰を上げようとした。

 が、いくら動こうとしても身体が椅子にへばりついているように感じられ、上手く動かせない。しばらく抗ってみたが、椅子からは離れられなかった。

 背もたれに身体をあずけ、溜め息をつく。


「これはもう、色々と終わっているのかもしれんね…」


 私は一人で呟いた。

 声は空気をわずかにふるわせ、やがて消えていった。


2018/07/09

 加筆修正。586字→807字

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