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スイーツ合戦

最初に動きがあったのは、意外にも王都の内部だった。


王都では東と西の婦人会が結束し戦士達の飯を作っていた。

これもひとえに上音のおかげである。


だが、そこに一人のマントをつけた魔族が強襲してきた。


その魔族は女性らしかった。

黒いマントからフルーツの産地を襲い物価を上げた犯人であることが示唆された。


彼女は言った。

「スイーツ造りで勝負だ」


その問いに答える者が一人いた。

「いい覚悟じゃないの。ケーキの女王と言われたこの私に挑もうだなんて」


無論、我らが菓層 笑美である。


この国ではスイーツ造りは誇りであった。

この国では最もスイーツを造るのが上手い女子が王と結ばれる、そんなしきたりが古くからありそのため皆スイーツ造りの腕を磨いていた。

挑まれた勝負を余所者に預けるのは従来なら不安が残っただろう。

だが、託すのは今この場にいるパテシエ達全員が認めた、一番才能に富み、一番熱意を持ち、一番スイーツ造りが上手い女。

菓層 笑美だ。


そこに誰も異論は挟まなかった。


「ケーキの女王はこのワタシよ」

魔族の女は吠える。


「私もこの同級生に皮肉混じりでつけられ何となく定着したケーキの女王のあだ名は気に入っていてね。そう易々と渡しはしないよ」

自信たっぷりといった顔で菓層が言った。


「ワタシのケーキの女王の称号が皮肉ですって」

魔族の女は菓層の挑発に乗ってしまった。


「あら、そう言ったのよ。聞こえなかった?」

菓層は口角を上げた。


「ムキー、怒ったわ。生まれてきたことを後悔させてあげる」

魔族の女の青い顔が赤くなった。


「審査員は誰なの?」


「ワタシとあなたで十分でしょう?」


「分かったわ」


そう言うと二人は準備に取りかかった。


菓層は思い出す、昨日の会話を。


「ねえ、あなた菓子造ってよ」

畑に言った言葉だ。

「今酔っぱらいどもに造ってるんだがその余りで良ければ」

畑はそう言いながら椀をさしだした。


ふたを開けると湯気が出てきた。


「カボチャとサツマイモのプリンだ」

畑がメニューを教えてくれた。


食べるとほんのりとした甘みが体に染み、体が温まってきた。

おいしい、けれども一つ、菓層には気になる点があった。


「ねえ、これカボチャの茶碗蒸しじゃない?」


「カボチャとサツマイモのプリンだ」


「でも、これ」


「カボチャとサツマイモのプリンだ」


「でも」


「カボチャとサツマイモのプリンだ」


「ふふっ、強情ね」

この茶碗蒸しはなんというかスイーツかどうかも怪しい代物だが私の普段の得意料理のティラミスよりもこちらの方が飲んだくれ達には好評らしかった。


「ねえ、あなた菓子造ってよ」

次は、上音に言ったんだっけ♪


「菓子ねえ、そこにあるの一つまで食べていいよ」

そう言いながら上音はクッキーの山を指さした。


クッキーの山から一つ手に取り食べる。


異物が入っている。


なんだろうと考えていると声が聞こえた。


「それ、フォーチュンクッキーだからね!」


早く言ってよ。


フォーチュンクッキーとはクッキーの中に占いの書かれた紙が入っているクッキーだ。


口から紙を出すと『勝負事、初心忘るべからず』みたいなことがこの世界の言葉で書いてあった。


「でも、これは会話のおまけにはピッタリだけれど、お菓子が主役なら今出してあげる。ちょっと待ってて」


そう言うと上音は奥へ向かいおばさん達にメインのデザートが出ると伝えた。


「はい、これ」

上音から差し出されたのは赤いゼリーをルビーのように加工して、さらにペガサスをかたどった欲張りな一品だった。


「味は普通ね」


「あー、マイナス評価じゃなくて良かった」

上音はすごい安心した表情になった。


気持ちは分かる。他人に自分の自信作の問題点を指摘されるのってすごい悔しいもんね。


このゼリーは、見た目が一番のアピールポイントになっているのが特徴だ。

味は普通止まり、だけれども需要はあることが容易に想像が付いた。


そんなことを思い出しながら私はスイーツを造る。


たぶんこれまでなら、ここでただのミルフィーユを作っていたのでしょうね。


でも今はそれで終わらない。


私の一番得意なスイーツ、ミルフィーユは幾層にも生地を重ねて造る。

でも、今回重ねるのは生地だけじゃない。経験、思い、誇り、私のもてる全てを重ねて造る。


二人の熱き思いが見る者に感動を与え時間を忘れさせた。


そうして二人のスイーツは完成した。


片やゼリーやミルフィーユ、プリンにロールケーキなど様々なスイーツで城を中心に町を形どった菓子。


片やチョコレートでピラミッドを型どりその頂点にイチゴを置いた菓子。


無言で互いに自らの皿をさしだし喰らい合った。


そこには二人きりの言葉無き対話があった。


互いに食べ終わったのは同時だった。


「「素晴らしかったわ」」


「頂点はイチゴ、たった一つのイチゴの為だけに作られた菓子。これはあなたが自分が頂点にたちたい願望の表れかしら?」


「よく分かっているじゃない。じゃあ、この雑多な一つや二つ欠けても成立する。絶対的に必要な要素がない菓子。これは、あなたの自信のなさの表れかしら?」


睨み合う二人。

だが、その二人はどこか楽しそうだった。


「「フフッ」」

二人の笑い声がハモった。


「楽しかったわ」

「こちらこそ」

二人は分かり合えたようだった。


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