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冬の終焉

連日、女王のもとに二人の選ばれし者が訪れる。


女王は、毎日同じようなことしか言ってこない人々に嫌気がさしていた。「春の女王と代わってください」「冬を終わらせてください」「寒さを和らげてください」どれもこれも他力本願が過ぎるお願いだ。少しは自分で行動する意思を示してほしい。


女王はどの願いに対しても冷たくあしらった。たまに骨のある者が来れば、助言をした。


そして今日、とうとう死者が出た。食糧が底を尽き、餓死したそうだ。今は怒気を含んだ観衆の声が、塔まで響いてきている。


女王は、第三の準備に取り掛かった。入口の扉を氷漬けにし、開くことが出来ないようにした。これで、中に入ってこられる者はいない。これからは食糧と飲み物は事前に確保していたものを使う。


翌日になって、また死者が出た。それから日に日に死者は増えていった。それにつれて、国民の怒りは募って行った。


扉の前に気配を感じた。恐ろしいほどの怒りを感じる。


「女王、なぜここまでするのだ」


王は、静かに言った。


「もう、私たちの我慢も限界です」


「我々が何をしたというのだ」


「あんたは、私の本性を知っているでしょう。そんな愚問に答えるつもりはありません」


「・・・・」


沈黙が場を凍らせた。


「私たちは、自然の使者。我らは人との共存を望んでいたが、人間はそれを拒んだ。そして、我らをこんな塔に閉じ込めて、自然を支配しようとした。この罪は重いですよ。覚悟なさい」


「人こそが、この世界の頂点に君臨する。自然も人の支配下にあるのだ。今さらこの座を渡す気はない」


「残念です。私はもっと良い道もあったと思うのですが、あなたにはそれが見えていないようです。自然の恐ろしさ、人があがいてもどうにもならない自然の力にあなたはひれ伏すのです」


「人の欲は底を知らない。自然もその欲に飲まれる定めなのだ。無駄な抵抗は止めて、ここから出たらどうだ」


「出ません」


「力尽くで出してもよいのだな」


はい、と女王が答えると扉が凄まじい音を立てて軋んだ。それでも氷漬けにしていた扉は、開くことはなかった。何かが勢いよく扉に打ち付けられているようだった。


女王は、自身の力を使って扉を覆う氷を厚くした。これで、もう声も届かない。


女王は、最後の第四の準備を始めた。全身の力を手に集中させ、自分の持っているありったけの生命力をそれに費やした。


「聞く耳を持たぬ、愚か者どもよ。我と共に、この世からおさらばしようか。次世代に望みを残して・・。後の世に美しい自然が残るように・・・」


女王の手に白い光が宿った。その光は、ゆっくりと手から離れて浮かび上がって行く。光は、塔の屋根をすり抜けると天高く上った。光が静止したとき、まばゆいばかりの光を放った。その刹那、辺りを白い霧が覆った。


霧が晴れた時、そこは氷の世界だった。すべてが氷り、動くものが無い。静かだった。世界が止まっていた。







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