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説得

朝になり城の周りに民が続々と集まっていた。


「皆の者よくぞ集まってくれた。今年の冬は長い。だが、冬の女王を説得すればそれを回避できるかもしれない。私の説得は、聞き入れて貰えなかった。女王には、何か硬い意志があるようだ。一日二人まで、女王と話せるように、私がお願いしてきた。今から今日の二人を選ぶ」


王は、広場に集まった群衆に向かった叫んだ。群衆はそれに応えるように歓声を上げ、手に持っている国旗を振る。


「まずは、村単位で集合してもらう。指定する場所に行き、監督する兵士の指示に従ってくれ。では、指定場所を発表する」


王が指定場所を言ってから、群衆は散り散りになった。人々は、指定された場所に向かった。


指定された場所には、各二人ずつの兵士がいる。まず、その二人の兵士によって各村から三人を選ぶ。次に、選ばれた三人は再び広場に戻り、そこで再び半分に絞られた。最後にその中から、王の目にかなった二人が選ばれた。


「お主、名をなんと申す」


「ボール村のディングと申します」


「そなたが一人目だ。隣の部屋に移れ」


ディングは、王の従者に連れられて隣の部屋に移った。


「お主、名をなんと申す」


「ラム村のサールと申します」


「そなたが二人目だ。隣の部屋に移れ」


サールは、ホールの入って行った部屋に入って行った。残された者は、落胆していた。


「残ったものも、また明日チャンスがあるやもしれぬ。そう気を落とすことはない」


「ありがたきお言葉」


そう言って、残された者は戻って行った。王はそれらの人を見送ると、隣の部屋に入った。中にいたディングとサールは椅子に腰かけていた。


「これより、二人を塔に案内する。冬の女王と話せるのは一度に一人のみである。どちらが先に話すのか決めておけ」


それだけ言うと、王はその部屋から出た。二人もどちらが先に話すかを決めながら、王の後に続く。塔の階段を一段一段登って行く。最上階の手前の階で止まった。


「これより先は一人ずつしか通れない。どちらが先に行く」


「私が参ります」


ディングが言った。


「上に上がったら、扉があるそれをノックして話しかけろ。決して中に入ってはいけない。良いな」


王はそれだけ言って、先へ行くよう促した。ディングは、最上階まで上り扉の前で深呼吸した。トントン、と扉をたたく。


「冬の女王様、ボール村出身、ディングと申します。この度は女王様にお願いの儀があり、参上いたしました。私の話を聞いて頂けるでしょうか」


しばらくあって、扉の向こうから返事が返ってきた。


「ようこそいらっしゃいました。お願いとは何でしょう」


「実は、私の村ではすでに冬に備えて蓄えていた食糧が尽き、病に臥せっている者も少なくありません。春になれば、食料も病気を治すための薬草も手に入れることが出来るのです。どうか、春の女王と交代して頂けないでしょうか」


「残念ですが、それはできません。春の女王はまだここには来ません。そんな中、私がここを離れれば、どんなことが起きるのか、私にはわかりません。貴方にその責任が取れるのであれば、私は出ていきましょう。ですが、私が出たところで春が訪れるとは限らないのです」


ディングは、寒気にも似た殺気を感じて震えていた。唇が震えて、声が出せない。突然襲われた恐怖に、恐れおののいた。早くそれから逃れたい一心で急いで階段を駆け下りた。


王とサールの待つ場所まで戻ると、ディングは落ち着きを取り戻していた。


「どうした」


王が渋い声で言う。


「私などでは、女王の前に立つことすら出来ないようです」


ディングはそれだけ言うと、塔を降りて行った。


それと交代でサールが階段を上り始めた。扉の前に立ち、ノックをした。


「女王様、ラム村のサールと申します。この度は、女王様にお話しがあり参上いたしました」


「話とは何ですか」


「どのようにしたら、冬が終わるのか教えていただけませんか」


「それは、簡単です。私が春の女王と交代すれば冬が終わり春が訪れます」


「では、春の女王を連れてきたあかつきには交代して頂けるのですか」


「もちろんですとも。それが出来ればの話ですが」


「それでは、さっそく探しに行ってきます」


サールは、足を階段に向けた。


「一つ、私からも質問していいですか」


サールは、扉に向き直った。


「なんなりと」


「あなたは何をされている方なのですか」


「私は、村にある沼に来る渡り鳥について研究している研究者です」


「最近変わったことはありませんでしたか」


「最近は、徐々にですが渡り鳥の数が減っているので私はそれを保護しようと沼の整備に尽力しております」


「そうですか。それでは、私からの助言です。鳥たちの道しるべに従いなさい。そうすれば、道は開きます」


「わかりました。仰せのままに」


サームは、王に春の女王を探しに行く旨を伝えるとさっそく支度に取り掛かった。村の人に無理を言って、馬を借りて、鳥たちが飛び去って行く方向、南に進路を取って駆け出して行った。

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