第三部
いつも読んでくださってありがとうございます。
夏休みの宿題の合間に書いているので更新が遅くてごめんなさい
週一回は更新できるようにかんばりたいと思いますので
これからもよろしくお願いします
やはり心地いい。教科書を枕にして、窓から差し込む温かい光を受けながら目を閉じるその時。
ああ、これが至福の瞬か―
―バシッ―
「起きろ、続築。もう十分寝てきただろ。」
分かっていた。授業中に寝れば起こされる。
「あ、はい。」
架の頭を叩いたのは古文の教師だった。眠くなるのはお前の授業がつまらないからだ。そんな劣等生が言い放つようなフレーズを抑え、架はノートと向き合った。思えばこの授業が始まってから何一つとして書いていなかった。ふと、顔を上げると前に加奈の席が見えた。きっとあいつは真面目に授業を。
「スヤァ。」
うけているはずがなく、期待に応えるようにぐっすりと眠っていた。やはり思春期というものはどれだけ寝ても寝たりないのだろうか。
―バシッ―
また例の音が教室に響いた。
「お前も起きろよ、成瀬。」
「起きてたよ。起きてたん、ました。」
「ん?ああ、そうか。・・・・ん?」
その古典教師が教卓に戻ると同時に授業の終わりのチャイムが鳴り始めた。
僕が一番嫌いな古典の授業が今終わったのだ。
四時間目が終われば弁当の時間であることは言うまでもない。
「架。弁当食べようぜ。」
昼休みが始まってすぐ声をかけてきたのは同じクラスの健だった。
この高校で初めてできた友達が健だ。
「ごめん、今日はあいつと食べるから。」
「ほう、今日も夫婦そろってですか。」
「へっ?夫婦?やめろよ馬鹿。」
「はいはい。お熱いですね。リア充なんてそこらへんで爆発しとけ。」
爆発はしたくないと思いつつ、いつものように斜め前の席に向かう。
「加奈、お昼食べよ。」
「ああ、架くん。」
いつもの事なのに加奈は少し驚いたようだった。
「じゃあどこで食べる?教室にする?それとも外?」
今日どこでお昼を食べるのか架はもう決めていた。
「図書室で食べよう。」
図書室は新校舎の端。教室を出てから右に曲がった突き当りにある。つまり旧校舎が目の前に見える位置にあるのが図書室だ。
今日なぜここでお昼を食べることにしたのか。それは簡単、旧校舎がどんなふうになっているか見たかったからだ。学校の外からでは見えなかった部分が案の定、図書室からは見ることができた。
「なるほどなるほど。分かっちゃったよ架くん。今日ここに来たのは旧校舎を見るためだね。」
加奈は図書室の角にある椅子に座りながら購買で買ってきたおにぎりと
サンドイッチを机の上に広げていた。
「そうだよ。なんか気になってさ。」
「そうなの?どんなところが?」
珍しく興味を示した加奈の目の前の席に座り架は話し始めた。
「だっておかしいと思わない?鉄筋コンクリートの建物がさ。」
「うんうん。」
「あんな短時間で全焼するなんてさ。」
「ふむふむ。」
「ただの火事なんかじゃないと思うんだよ。」
「ほーほー。」
いつの間にか加奈の興味は目の前のサンドイッチに移行されていた。
「加奈?今の話聞いてた?」
「わー、たまごだよ架くん。ほら黄色いよ。おいしそうだよ。」
加奈は架の話などお構いなしにサンドイッチを食べていた。
「まったく。」
こんな風に加奈とはいつも二人でお昼を食べている。加奈は誰が見ても美人と言うだろう。それに性格もいい方だと思う。ただ、なぜかお昼を一緒に食べる友達すらいない。
人見知りというわけではないのに本当に不思議だ。
「じゃあ架くん。私、委員会の活動があるからもう行くね。」
いつの間にかお昼を済ませていた加奈が席を立った。
「うん、分かった。じゃあまた。」
小さく頷き図書室を出た加奈に手を振り架はもう一度旧校舎を見た。やはりコンクリートは燃えておらず、教室の中だけが焼けているように見えた。この時の架にはまだ何も分からなかった。即座に思考を停止させた架はおにぎり二つだけの簡単な昼食を済ませ図書室を出て五時間目の教室へと向かった。五時間目は化学。架の唯一の得意教科だ。