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闇色の公子(最終稿)  作者: と〜や
第四章 弔いの鐘
17/48

4-5

 ばたばたと廊下を走る足音。呼び止めようとする女官たちの甲高い声。続いて荒々しく広間の扉が開かれた。

「父上!」

「おお、アガルティナ。騒がしいな。何の用じゃ」

 アガルティナは肩で息をしながら広間に入ってきた。その瞳は怒りの炎を宿している。

「父上、先ほどグリスタをハルディルンにやると聞きました。本当なのでございますか!」

 彼女に続いて、気の弱そうなグリスタが入ってくる。

「うむ、ハルディルンはリーシュラ殿の出身星だ、危険はあるまい」

「そういうことではありません! なぜグリスタをこの星から出すのですか!」

「グリスタは病弱とはいえいずれこの星の政治にかかわる者。世間を知っておかねばなるまい。世間も知らぬようではセイディアを補佐できぬ。グリスタはまだ若い。今のうちに色々と経験しておくのもよいだろう」

「ですが、急に……」

「急ではない。セイディアの婚礼後、落ち着いたらそうするつもりであった」

「ですが、グリスタはまだ若すぎます」

「ファーデスを見よ。彼はグリスタより若いが、立派にオルディアの当主を務めているではないか。よほど世間をよく知っておるわ。グリスタ、そなたもしっかり世間を見てくるのだ。ファーアデスに負けぬくらいな」

「……はい、父上」

 弱々しくうなずく。アガルティナは横に立つファーデスをにらみつけた。

「用はそれだけか? アガルティナ。お前もそろそろ輿入れを考える年頃じゃ。少しは大人しくせい。それだからいつまでも嫁ぎ先が決まらぬのだj

「……父上、私は」

「用がなければ下がれ。わしはまだ執務中じゃ」

「……失礼します」

 グリスタの車椅子を押しながら扉から出て行く。アガルティナは唇をかみしめた。

「姉上、もういいんです。父上がああおっしゃるならハルディルンに参ります」

「グリスタ! 何を言うのです」

 しかし弟は首を振った。

「父上には逆らえません。それに、父上にもお考えがあるのですから」

「本当にいいの?」

「ええ」

「お前がそういうなら……仕方ありません。でも、不安でたまらないのです。グリスタ、何かあったらすぐ便りをよこしなさい。できる限りのことはしますから」

「ええ、でもいい機会だから一人でなんとかします」

 弟はにこやかに微笑み、姉を見上げた。

「いつも姉上に頼ってばかりで、自分でも不甲斐ないんです。もしハルディルンへ行ってそれを直せるなら、いい機会だと思いませんか? それに、他の星も見てみたいと思っていたところなんです」

 アガルティナは弟を抱きしめた。

「……ごめんなさいね。何もできなくて。でも、何とかしてすぐに戻ってこられるようにするわ」

「ありがとう、姉上」

 はかなげながらにっこり笑う。それが彼を見た最後となった。

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