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サプライ

作者: Q作くん
掲載日:2015/04/19

 脳天に落雷を受けた清水は死ななかった。奇跡だと世間は騒ぎ立てた。一躍時の人となった清水。彼女はまだ〝症状が現れる〟前に受けたインタビューでこう語っている。

「きっと神様がセカンドチャンスをくれたんだと思います。雷に打たれる前の私は、生きてることを当たり前だと思っていたから」

 症状が現れたのは入院後一週間経ってからだった。点滴を済ませ病室を出て行こうとする担当ナースを呼び止めようとして、手を伸ばしたその瞬間、清水の指先から青白い光が放たれた。突然のことに硬直する清水。その視線の先には、黒い粉の塊があった。

『雷神少女』。

 清水は再び時の人となった。世間はあらゆる情報媒体で清水のことを取り上げ、ネタにした。犠牲者となったナースの葬儀は、遺体のないまま執り行われた。遺族が清水や清水の家族を訴えることはなかった。国から多額の補償金が支払われたからだ。この事実を知ったネット上では、「ていうか火葬費用浮いてラッキーじゃん」などと、不謹慎な冗談とも労せず大金を手にしたことに対するイヤミともつかない言葉が飛び交った。

 清水は塞ぎ込むようになり、現在(いま)では用意された特別仕様の個室で独り、放電を続けている。真っ暗闇の中、青白い光に包まれる清水を目にした夜の見回りは、清水に声を掛けた。

「雷は地上にいるとコワイけど、空から観るととても綺麗なんだよ?」

 清水はドアの方に顔を向け微笑む。パチパチッと静電気が走る。

「でも誰も雷に触れることはできないの」

 清水の心に感応するように、外で雷鳴が轟いた。見回りは帽子のつばを下げ清水に会釈した。清水は光を明滅させ返事を送った。それはモールス信号だった。意味は「触れ合いたい」だった。

 皆が彼女の存在を忘れた頃、清水は電力供給源としてシステムに組み込まれた。一人の少女の犠牲の上に、近代的な生活が成り立っていることを、誰も知らない。

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