ホワイトシャーク
「いいか、この船でただで見習いができると思うなよ。俺の言うことは絶対だ。それが聞けねぇなら海の真ん中だろうと危険海域だろうと構わず放り出すからな」
心臓がバクバクしていやな冷や汗が背中を伝う。 僕は服の裾をギュッと掴んだ。
グレン船長の船に乗ることが決まったのはつい昨日。
この島の見習い船乗りは、見習い最後の修行として小型船に1年間乗せてもらう。つまりその船の船長につきっきりでノウハウを教えてもらうのだ。
この辺の海は危険なところもないし、小さな島がたくさんあるため小型船に乗る人も多い。
大抵はみんな1人で乗っている。そんな中の1人がグレン船長だった。
ホワイトシャークのグレン船長といえば、この港では有名人だ。若いのに切れ者で操縦の腕前はピカイチ。たぶんこの島では1番なんじゃないかな。
そのくせ人と関わることを極端に嫌い、自分の船には誰も乗せようとしない。
それだけじゃない、ホワイトシャークは普通の運搬船なんだけど「帆」がついてるんだ。もちろんエンジンもついてるし、普段はそっちを使ってるはずだ。なのに、どういうわけか帆がついている。
グレン船長ってだいぶ変わり者だ。