そして人はいなくなっちゃいました(第十四話)
私が勝手に始めた『リレー小説』も早くも十四話目。
皆様、最後までよろしくお願いいたします。
ナイフを突き付けた沙羅を凝視していると、その姿がグニャリと歪んで見えた瞬間、沙羅の姿がスゥっと消えていった。
「沙羅! 沙羅どうした!」
消えゆく娘を抱きしめようとした途端、辺りが突然暗くなったと思うと、激しい閃光と共に視界が広がった。
私は天王山トンネルの入口で、バイクにまたがったまま立ちすくんでいたのだった。
『クソッ! ゲームごときで人が消えるだと! しかも大阪から出られないのか……』
暫く白昼夢を見ていた為か、頭の回転があがる。
『大阪から出られない……。人が消えているのはゲームが原因……。という事は、ゲームにこの事象の関係があるとみて間違いない。ならば!』
私はアクセルを回すと、市街地へとバイクを走らせた。
市街地に入ると玩具店や古本屋を探す。店を見つけると、店内に入り沙羅が見せたポータブルゲーム機とアダプターをカウンター内から取り出し、ソフトの管理棚を漁る。
『あった! これだ!』
私はソフトをゲーム機にセットすると、ゲームをスタートした。
『待ってろよ、みんな! これでも昔はゲームにハマったものなんだ!』
街を作成するシュミレーションゲームは、治安維持と交通の快適性を高め、主要店を各所に配置、警察や消防署・病院なども、近過ぎず遠過ぎない場所に配置する事で住民の快適性を向上させる事が可能だ。
暫くゲームに集中し、ある程度街が発展したところでゲームの電源をそのままにして、店外へと飛び出した。
『クソッ! 無理か……! なら、これならどうだ!』
再び店内に入ると、ゲームのリセットを行う。
【設定自体をそのまま保存し、街作りを最初からやり直しますか? もし、最初からやり直してしまうと、住民が消えてしまいますが、よろしいですか?】
モニターの表示を確認してから、【YES】の選択肢を選ぶと店外へともう一度飛び出した。
『クソッ! やっぱり駄目か!』
目の前に広がる光景は、人の消えた何も変わらない日常だった。愕然と膝を付き、空を見上げるともう夕刻になり、暗くなりうっすらと月が見えはじめていた。
『どうすればいいんだ……。』
くじけそうな自分自身を奮い立たせ、とにかく何か行動を起こさないと、とバイクの方へと向かおうとした時だった。
『………!!』
目の前に広がる光景に言葉を失った。その途端、私は走り出していた。
「おい! 今まで何処にいたんだ!」
目の前にいる男に話し掛けた。しかし男は、私の方を見ているにもかかわらず、何も言わない。
「なぁ! おいお前! ……!!」
男に掴み掛かろうとして、更に絶句した。その男はガラスの中にいたのだった。男だけではない、他の人間達もガラスに映った世界の中で、何事も無かったかのように生活しているのだった。
「俺も! 俺も、そこへ!」
激しくガラスに体当たりすると、無情にもガラスは砕け散り、真っ暗な店内が現れただけだった。
「くそぉぉぉ! どうなってやがんだよ!」
大声で叫ぶと、店内からゲーム機を取ってくるとポケットにねじ込み、バイクにまたがると、あてもなくガラスに写る人々を眺めながら、次の行動を考え続けた。
『大阪から出られないなら、境目の薄い場所に行けば……』
ガソリンスタンドで、バイクの給油を行うと、人々を眺めていたい気持ちとは裏腹に、人気の無い山へとバイクを走らせた。
『箕面から能勢を抜ければ……。あそこは、山だから県境がわかりにくい筈だ。沙羅・美未恵待ってろよ! 今、行くからな!』
私は、アクセルを勢いよく回すと、バイクを走らせ続けた。
次の著者様は『千嶋桂華様』です。
よろしくお願いいたします。