8. インベントリの奴隷
「第1班は先頭に立って盾の壁を作れ!第2班はここの乗客たちを2階へ避難させる!」
馬車の警備隊が急いで2階に集結し、テロリストを迎え撃つ準備をしていた。
彼らにとっていつも馴染み深いはずの馬車が、霧に包まれた森のように感じられた。
警備隊全員が2階と3階で待機していたため、1階の状況が全く把握できていなかったからだ。
「テロリストの人数は?戦力は?」
「今のところ何も分かっていない。少なくともこんなことを仕掛けるレベルなら、10人以上はいるだろう。」
「隊、隊長……」
警備隊長も緊張していた。
そもそも馬車強盗が完全に掃討されたのは、10年以上も前のことだった。
せいぜい数年前から勤務していた彼にとって、このような事態は初めてだった。
「おい!一体どこへ行けというんだ!」
「何だ!お前が何者だと思って、あれこれ指図するんだ!」
その最中、乗客たちの協力も不十分だった。
乗客たちがあちこち行き来して動き回るせいで、混乱していた。
もちろん、上司である馬車騎士は、どうしてもダメなら盾として使えと言っていたが。
どこの警備隊長がそんな命令に従うというのか?
ただ、その当然の職業意識を守るには、確かにすべてが不利だった。
彼らの唯一の強みといえば、あの階段に通じる扉さえ守ればそれでいいという点だけ。
「ありえない。どんな度胸でこんなことを仕掛けたのかは知らないが。
見逃すわけにはいかない。」
彼は自信を持っていた。
百年前、ゲームが単なるゲームだった時代なら、プレイヤー一人がNPC数十人を虐殺するのは朝飯前だっただろう。
しかし、百年の歳月は、一介の警備NPCでさえ高レベルに達するに十分な時間だった。
そのおかげで、王国の一介の門番警備でさえ、数百レベルに達しているケースが珍しくなかった。
そんな強力な警備たちが盾の壁を築けば、天下のプレイヤーでさえもやられるのが常だった。
ゴクリ……
彼らの警戒を緩めず、入り口から出てくる敵を待っている最中。
ウィーン!ウィイイイイーン!
突然、金属音が聞こえてきた。
彼らが踏んでいた木の床から、異質な音がこっそりと響いてきた。
ウィイイイーン!ガザガザガザ!プシャシャシャッ!
背筋が凍るようなチェーンソーの音と、木が砕ける音。
二つの音の直後、警備員たちが立っていた木の床が粉々に砕け散った。
その砕ける隙間から、刃の付いた円盤状の盾が、その上にいた警備員の一人を真っ二つに切り裂いた。
「ぐっ……?」
その警備員は何もできず、そのまま光の粉となって消え去った。
光の粉と共に床が崩れ落ち、その上にアリエンが飛び上がった。
「うわっ……」
「うっ!」
突然の事態を受け入れられず、警備隊はただ呆然と、彼らの前に飛び出してきたアリエンを見つめていた。
「何、バカども! すぐに盾を掲げ…」
警備隊長が慌てて盾を掲げたが。
シュッ! ウィーーン!
その円盤状の盾が再び回転した。
彼女の盾は単なる防御手段ではなかった。
円盤状の盾の縁には、背筋が凍るような刃が取り付けられており、彼女は盾そのものではなく、盾に取り付けられた鎖を掴んで振り回した。
すると、鎖の軌跡に沿って盾が回転し、警備員たちを切り裂いた。
警備隊長が何とか盾を掲げて突進してきた。
「この野郎!ここはどこだ!」
「どこだって?人を拉致した奴隷船さ。クソッタレなデータの寄せ集めどもめ。」
その言葉と共に、彼女はもう片方の手に持っていた剣を振り下ろした。
彼女の剣はそのまま盾と兜の間、警備隊長の首を真っ二つに切り裂いた。
警備隊長はそのまま光となって消え去った。
その光景に、警備隊は戦う意欲を失った。
彼らは乗客たちと共に、あちこちへ逃げ出し始めた。
彼女が前進すると、乗客たちと残った警備員たちが乗客と共に下へ逃げ始めた。
「あとは3階だけだ。」
3階は御者と、彼を助ける助手たちがいる場所だった。
そこさえ崩せば、彼女はもう安らかに救助隊員たちと共に、奪った馬車で幸せなギルド帰還の道につけば終わりだった。
ただ、人生は簡単なものではなかった。
「クワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
本当の問題は、そんな恐竜モンスターを一撃で倒した二人の存在だった。
オレンジ色のポニーテールをした格闘家風の女性と、冷徹な印象の青い髪の美青年だった。
「あらまあ、あいつらがどうしてここにやって来たのかしら?」
口調は余裕があったが、彼女はかなり慌てていた。
「献身者たちが、どうしてここに来たの?」
*
妖精は、ヒュッと現れた彼らが決してペットやモンスターではないと確信した。
闇の中で輝く、色とりどりの瞳。
いや、文字通り瞳の色が実に多彩だった。
それもそのはず、プレイヤーたちのカスタマイズは実に多彩だったからだ。
ただ、そんな個性的な外見とは裏腹に、服は皆同じだった。
灰色と白のチェック柄の服に、大きくそれぞれの番号が書かれていた。
両腕と足には鎖が繋がれており、首には奇妙なノイズを立てるネックレスがかけられていた。
「お前たち、全員囚人なのか?」
「……」
妖精が尋ねたが、誰も答えない。
「おい!人間、いや妖精を無視するなよ!おい!おい!」
妖精は飛んで壁にあったランプを持ってきて、彼らの前で揺らした。
その時になって、彼らは妖精を見て仰天した。
「ひ、ひゃあ!何だ!」
「妖精?」
「妖精だよ。」
最初は驚いたが、すぐに何か幽霊でも見たかのような口調で、ぼんやりと呟いた。
皆、正気を保つのが難しい様子だった。
彼らの中で、まだ理性を保っているような人物が口を開いた。
「お前は何だ?ペットか?話せるペットなんて荷物室には載せないだろうが?」
「ペット?おい!俺はペットじゃないぞ!こう見えても高貴な案内人だ!」
「うーん… チュートリアル妖精を見たのはずいぶん前のことだから記憶が曖昧だけど……確かに奴らは皆、口調が実に風変わりだったな。」
「何よ?! 私たちは変じゃないわよ!」
「ああ、チュートリアル妖精だったな。」
彼は頷いた。
勝手に納得してしまった彼に、妖精はぶつぶつ言いながら再び質問した。
「お前たちは囚人か?」
「それならまだ無念もなかっただろうに。」
「じゃあ何だ? なぜ荷物室にいるんだ? その奇妙な首飾りはまた何だ?」
「そりゃ、俺たちは財産だからな。」
「財産? どういうことだ? 奴隷ってことか?」
「奴隷? 少なくともそれに一番近いかもしれないな。完全に当てはまるわけじゃないけど。」
「違う!じゃあ何なんだってば!早く言え!」
続く謎めいた嘆きに、妖精は怒りを爆発させた。
その言葉に、彼は深くため息をついた。
数十年にわたる捕虜生活の恨みが込められたため息だった。
「俺たちは倉庫だ。生きている移動倉庫。」
「倉庫?何の話?意味が分からないわ」
「人間が倉庫だなんてどういうこと?」
純粋な妖精には、本当に理解できない話だった。
その点で妖精の性格を見抜いた彼は、再び深く息を吐いた。
「インベントリ機能は知ってるだろ?」
「うん!もちろん!あなたたち外部の人間が持つ最高の能力の一つじゃない」
「便利機能ってことだろう。とにかく、俺たちプレイヤーは昔からインベントリ機能のおかげで、アイテムを無限に持てたんだ。」
当然のことだった。
ゲームにおいて、プレイヤーは実に様々な便利システムを与えられるものだ。
その中でも無限インベントリは、基本中の基本だった。
しかし、ある者たちにとっては、奇跡と変わらない能力でもあった。
それは王国のNPCたちも同様だった。
「だから、クソNPCどもは俺たちを生きている倉庫として使うんだ。」
「そ、それって理にかなってるの?」
「一体どこで暮らしてきたんだ? こんなことも知らないなんて。」
「そ、それは……ハハ。」
「ふぅ、いっそあそこでずっと暮らしていた方がマシだっただろうな。今の外はこういうことだらけだからな。」
まるでタバコをくわえて忠告する人生の先輩のような助言だった。
だが、後輩が皆そうであるように、妖精もその言葉を認めようとはしなかった。
「笑わせるな!外が辛くても、中だけでずっと生きていられるわけないだろ!」
「とにかく、妖精ならきっとプレイヤーもいるはずだ。お前の主人のためにも言ってるんだ。」
「主人じゃないわ!友達よ!親友で、最高の友達なの!」
「いずれにせよ、君の友達のことを考えても、あそこから出て行ったのは良くなかっただろう。」
「そ、それは……」
「本当に友達のために出て行ったのか? 違うだろう。ただの自分の欲で追い出したんじゃないか?」
「あ、違うよ!」
「まあ、いいさ。とにかく、目的地までまだかなりあるだろう。言い争いはやめよう。」
まさに相手を怒らせるような言い方だった。
だが、その立場も理解できる気がした。
話せば話すほど感情が高ぶるのは当然で、そうなればこれからのインベントリ奴隷としての役割がさらに辛くなる。
今、他のインベントリ奴隷たちが理性をほとんど失っているのも、そういう理由からだった。
彼らにとって希望や喜びは苦痛と同じだった。
そうしてまた、苦痛に満ちた一日を過ごすことになるのかと思ったその瞬間。
「ごめんね、私はそうは思わないんだけど?」
どこからともなく、聞き覚えのない声がドアの向こうから聞こえてきた。
彼らには分からないだろうが、妖精にとっては馴染みのある声だった。
「え? なんで来たの!」
「なんでって? 君を助けに来たのよ。ついでに、あそこに人もいるって聞いたし。”
「うん!いるよ!私もちょうど話してたところだったんだ。」
「よかった。ここのドアを開けてくれる?それから、そこのおじさん?声からして、おじさんだよね?」
その言葉に、一瞬でおじさんになってしまった彼は慌てた。
「今、俺のこと言ってるの?」
「はい、でも私の妖精にちょっと酷すぎませんか?」
「何が言いたいんだ?俺は事実を言っただけだ。」
「そもそも灰がなかったら、私もおじさんの隣に座っていたかどうか分かりませんよ?だから、何も知らないくせに私の妖精に変なこと言わないでください。」
「うーん……君がどこかの安全な場所で暮らしているかは知らないが……」
「あ、そんな話は後でしてください。おい!ドアを開けて!行こう!」
「ちょっと待て……何?君、頭おかしいのか?今すぐドアから手を離して、店から出て行け!そうしないと君も!」
その時、妖精が先に動いた。
「イェッ!」
妖精はそのまま、ドアにあった安全ロックを外してしまった。
「お前、お前!一体何をするつもりだ!」
彼はもちろん、インベントリの奴隷全員がそのまま顔面蒼白になった。
彼らだって行きたくないわけではなかった。
誰よりも自由を渇望していたが、そうしないのは、失敗した時の苦痛がそれだけ大きいからであり、さらには外にいる哀れな(?)プレイヤーの運命も奈落へと落ちるからだった。
ところが、いざそのプレイヤーが自ら奈落へ身を投げるなんて!
妖精が安全フックを外すや否や、扉が開き、光が差し込んだ。
一瞬の光に皆、目が痛かったのか目を覆った。
「くっ!お前、頭おかしいのか!このままじゃお前も!」
「まだ外の状況をご存じないようですね。救助隊が来ました。」
彼の言葉に、彼らの冷たい心にわずかな隙間が生まれた。
「救助隊?まさかギルドか?」
「はい。」
「ありえない。ギルドはとっくに救助を諦めているはずなのに……」
彼の言う通り、ギルドは公式に救助を中止していた。
王国への挑発行為になりかねないからだ。
しかし、アリエンのように言うことを聞かないプレイヤーがいるのは当然のことだった。
今回の件も、彼女が独断で引き起こした出来事だった。
いずれにせよ、彼らは一斉に、四角い扉から差し込む光の中を歩いてくるニュービーを見た。
誰が見ても、まさに聖人の姿だった。
「こんにちは。」
「はあ……」
彼は呆れて言葉が出なかった。
一縷の希望を否定したくはなかったが、それでも彼は頭を下げて言った。
「出て行け。このままじゃお前も捕まるぞ。俺たちみたいに生きた倉庫にはなりたくないだろう?」
「一体なぜそんなに頑固にこだわるんですか?」
「運が悪かったな。これを見てくれ。」
彼は自分の首にかかったネックレスを指さした。
「これは何ですか?」
「我々はただのインベントリ奴隷ではない。王国でも最も重要な物資を収めた戦略物資だ。そんな重要な存在たちを束ねるものなのだ。」
「一体何なんだ?」
「見てみろ。」
ニュービーはそこに手を伸ばし、アイテムを調べた。
チリン
<相手がアイテム鑑定を許可しました>
!#!$実験体ネックレス!@#@!
防御力: 0
特殊能力
所持時#!#@!##強制着用!#@!#
!##@#!#死んでも!#@ 保存された#!@# 場所へ帰還。
#!@#!@装備解除不可#@!#!@
#!@$!#%%#@一定以上の距離を移動すると、自動帰還3!@#!@
「死んでも。保存された場所へ帰還? それに装備を外すこともできないって?」
アリアンが見ても戸惑うようなセキュリティ対策だった。
バグやエラーを利用して作られたアイテムだなんて?
普通、こういう物はバグの危険があるため、そもそも使わないものなのに。
しかし、そういったことを何も知らない初心者としては、ただ一つの経験しかなかった。
その時、スライムとの時の記憶が再び蘇った。
「もしかして、もしかして?」
うまくいけば解除できるんじゃないか?
むしろエリクサーのような良いものを手に入れられるかも。
[!@#@!アイテム$!@%]
[獲得しますか?]
「うん、獲得。」
[獲得不可]
[相手の同意が必要です。]
「あの、おじさん。その装備、譲ってもらえますか?」
「……何?」
一瞬、彼はニュービーの言葉を疑った。




