3. ワンパンチスライム
「さあ、どう?どう?」
「…」
ニュービーは一瞬、言葉を失った。
最初は妖精の考えが実に慧眼だった。
『とにかく今の服装じゃ、お前が外部者だって宣伝してるようなもんだ!』
『でも、これじゃ初心者服しかないのに…初心者服も同じじゃないか?』
「うーん…それはそうだな…あっ!」
「何か方法があるの?」
「ここで私の偉大なる魔法をお見せする時が来たわ!」
そうして妖精の魔法を一度信じてみることにしたのだが…
チリン!
[現在の服の外見が変化します!]
[スキン:「私だけを見て!」を装備しました。]
すぐに後悔した。
何とも言えない服装だ。
何というか、一つのマップの全ての色を集めて服にしたら、こんな姿になるんだろうなと思った。
特に胸元に的の絵と『ハートを当てると100点!』という文字は、誰が見てもおかしい。
「ただの歩く的じゃないか!」
「分かってないな!むしろこんなに派手に歩いてれば、変人扱いされることはあっても、誰が君を外部者だと思おうか?」
「うーん…」
悔しいが、ひそかに一理ある言葉だ。
しかし…それでも!
「やっぱりダメだ!」
そうして30分を超える議論の末、一つの結論に達した。
<初心者服装セットを破壊しますか?>
<初心者服装を破壊し、古ぼけた布切れ、革の切れ端を入手しました!>
<アイテム製作を試みますか?>
そうして、また一つの試みがなされ…
今、その結果が試される時が来た。
いつの間にか一つの村が彼らを迎えていたのだ。
[ABC-47番街の村]
「村の名前が変だな?」
「聞いた話では、王国に属する村はこういう道路名住所式で名付けるのが流行ってるらしいよ」
「道路名住所って言葉は一体…」
「知らない。外部の人間から教わった言葉だって?じゃあお前の方が詳しいんじゃないか?」
一体、このゲームの世の中はどうなってんだ?
本当に、一つ知れば十の疑問が湧く世界だった。
いずれにせよ、重要なのはそれじゃなかった。
重要なのは今、目の前で睨みつけている村の警備隊だった。
「止まれ。身分を明かせ」
「あ、こんにちは。私の名前はリュビです。あちこちを旅する旅行者です」
「では、その隣は?」
「これは私の召喚獣です」
「ふむ、まあ旅人の中には召喚獣を連れている者もいるからな…」
ニュービーは事前に妖精から教わった通りに台詞を口にした。
確かに練習通り自然な言葉に、警備員はそれなりに納得した顔をしていた。
しかしすぐに、彼は顔をしかめた。
「まあ、それはともかく、今何をしているんだ?」
「はい?」
「今、お前の服装を見てみろ」
ぼろきれをあちこち継ぎはぎしたようなマント。
誰が見ても指摘したくなるファッションだった。
それでも仕方なかった。
今、二人には優れた裁縫技術があるはずがなかったのだ。
とりあえず急場しのぎに初心者服を破って出た廃棄アイテムを、ごちゃごちゃと繋ぎ合わせたぼろ服の上着だった。
そのおかげで警備員は鋭い目つきでそのマントを捉えた。
「見ただけで怪しいマントをかぶると…」
そうして警備員がマントをめくると。その中には…
キラキラ。ピカピカ…
あの問題の服があった。
瞬間、警備員は10秒ほど呆けた顔をした後…
すぐに空咳を連発し始めた。
「え…うむ、うむ!そうだな、旅人なら隠すべきものが一つくらいあるものだ」
どういうわけか、このぼろきれと挑発的な服のコラボがうまくいった。
「ほら、俺が勧めた服がうまくいっただろ!」
「ただの狂人扱いされたみたいだけど…」
「まあ、いいじゃん!俺じゃないし。」
この野郎?
バシッ!
新米特製の蜂蜜パンチがそのまま妖精の頭を直撃した!
「くっ!何てことを!」
「元々苦痛は分担するものだって。俺の恥ずかしさの苦痛を分担してくれ。」
「何て意味不明な!」
そうして再び本格的に言い争おうとした瞬間。
二人は賑わう広場の光景に一瞬言葉を失った。
「わあ!」
ただの小さな田舎町だろうと思っていたニュービーも、その光景に思わず感嘆の声を漏らした。
ファンタジーで見たようなレンガ造りの建物はもちろん、妙に現代的な雰囲気の四角い建物も頻繁に見られた。
ある意味、まさにテーマパークのような町だった。
特に広場の中央にある華やかな噴水が印象的だった。
問題は、あのテーマパークと同じく、ここにもお金が必要だという共通点があったことだ。
[蜂蜜パン<特産品> – 10シルバー、ランチセット – 50シルバー、豪華ディナーセット 1ゴールド、チップ別途]
[1ゴールドの場合は100シルバーでお釣りいたします]
すぐに、食堂の入口のメニュー表を見ただけでため息が出るほどだった。
「ふう…これは大変だ」
「なぜ?」
「なぜって。金がないと飯も食えぬし、寝る場所も確保できんだろ」
「外部者は食う必要も寝る必要もないって聞いたけど?違うのか?」
「それは、またどうやって知ってるんだ?」
「そりゃ…森で聞いたさ。前に会ったあの野郎みたいに質の悪い連中が巡回してるんだ」
巡回か…
あの場所が元々ゲームを始めたばかりの初心者のチュートリアル場所だということを考慮すると。
初心者は思わず鳥肌が立った。
危うく間違えていたら、そんな連中を大勢で出会うところだったわけだ。
「二度とあいつらに会いたくないから、食べなきゃいけないし寝なきゃいけない」
「え?それどういう意味?」
「考えてみて。旅人が村で何日も食べも寝もせずにいたら…全く疑われないと思うか?」
「ああ!そうだな」
プレイヤーたちにとって、睡眠や食事は必要なかった。
食べ物は摂取できるが、回復薬の代用品か味を楽しむ以外には理由がなかったからだ。
しかし、それはあくまでゲームの利便性のためのシステム。
つまり、プレイヤーだけの特権だった。
NPC、つまり内部者は違った。
リアリティのために、彼らには空腹感と疲労という数値が存在した。
一言で言えば、疑いを避けるためには、ニュービーもNPCと同じ生活リズムを持たねばならなかった。
問題は、それが可能になるためには…
「金をどこで手に入れるんだ…」
もちろんゲーム世界で金を手に入れるのは簡単だ。
雑魚モンスター一匹倒すだけで溢れ出るのが小銭じゃないか。
残念ながら、そんな良かった時代は昔の話だった。
[狩猟場のモンスターは全て王国資源管理局の財産です]
[許可なく狩猟した場合、王国警備隊による処罰を受けます]
別の意味で狩猟場が管理されていたのだ。
なんと狩猟場の入り口と思われる場所には、あちこちにあの看板が設置されていた。
「くそったれなNPCども…今やNPCが狩猟管理するなんて?」
「まあ、俺が聞いた話じゃ、毎日モンスターから金が出るから、王国がインフレだの何だのって言うから捕まえるらしい…俺にもわからん。インフレって何だ?何かのボスモンスターか?」
「ボスより怖いものだよ。知っても頭が痛くなるだけだから、知ろうとするな。」
『いや、こいつらファンタジーゲームで経済学まで学ぶのか?』
この王国というNPCたちの国、意外にも体系が徹底的に整っていた。
こんな資本主義の狭間で生き残れ。
ニュービーは思ったよりこれが簡単じゃないと直感した。
「うーん…そうだ。金を稼ぐ方法が狩りだけじゃない。クエスト!クエストはあるはずだ!」
クエスト。
ファンタジーゲームの花のような存在。
どんな町にも問題はあるものだし、それを処理しようとする解決者が必要だ。
ゲームがどんなに歪んでいても、それは変わらないはず。
「一度依頼を探してみよう」
しかし現実ではないゲーム世界でも冷たかった。
「申し訳ありませんが、王国の市民権もお持ちでない方には…」
「何を信じて旅人に仕事を任せろというのか?」
NPCたちは妙に現実的だった。
顔見知りすらない新参者に、どんな依頼も任せることはなかった。
ましてや…
「じゃあ他の技術はあるのか?」
「え、それは…」
「ない?まったく!何の技術もないのに、どんな仕事を請け負うつもりだ?今すぐ出て行け!」
なんてクソみたいな世界だ。
ゲームの世界でさえ、技術がなければ生きていけない。
「これって正しいのか?」
「そりゃ…生きていくのがそんなに簡単な問題じゃないだろ」
「いや、それはそうだけど。これがちょっと…」
いざファンタジーの存在である妖精にそんなことを言われると、なかなか微妙な気分の新参者だった。
最後に頼れるものは、今やただ一つ、クエスト掲示板だけだった。
しかし、それも5分で期待を裏切った。
「管理されてないみたいだな?」
妖精の言う通り、クエスト掲示板は古びて崩れ落ちそうだった。
確かにざっと調べてみると、それも無理はないと思えた。
どうせ治安問題は王国の警備隊が処理し、個人的な問題は村内で解決していた。
この場所でゲームの主人公や英雄が介入する余地などなかった。
「おっと!ちょっと、あれを見て!」
そんな中、妖精が希望に満ちた顔で目を輝かせた。
「何だ。依頼があるぞ?」
全く期待していなかったのに、掲げられた依頼がちょうど一枚あった。
[狩猟依頼 – スライムを捕獲してください]
[旧外部者たちの初心者狩猟場区域の特定スライムを捕獲してください]
「狩猟?おかしいな、狩猟は禁止だって言ってなかったか?」
「下を見てみろよ!」
[王国警備隊より正式に狩猟許可が下りた個体です]
[常時依頼のため、いつ挑戦しても構いませんので、依頼解決を優先的にお願いします]
「狩猟許可で、いつ捕まえても構わないって…」
「紙が古くなっているのを見ると、かなり古い依頼じゃない?もう捕まえたのかな?」
安易に手を出すには怪しい点が多いけど…
[成功報酬金:10,000ゴールド、財産税及び所得税未包含]
「1万ゴールド?」
「1万ゴールドならさっきの食堂の蜂蜜パンを1個、10個、100個… うう…指が足りない。」
「10万個だよ。」
「おお!それなら何年も食べていけるな…うーん…蜂蜜パンだけ食べるのはちょっと…うーん…」
妖精はその小さな指を握ったり開いたりしながら、想像の翼を広げていった。
その状況でニュービーは頭をひねり始めた。
ざっと考えても理不尽な大金。
明らかにあんな行動には理由があるはずだ。
しかし…
「どうせ金がないなら答えもないし。」
どうせ選択肢はなかった。
このまま別の村へ去ったとしても、きっと自分を怪しむ者ばかりが増えるだけだ。
いずれにせよ、あのギルドという場所まで行くための旅費は必須だった。
「とりあえず行ってみよう」
「え、ん?まだ計算が…」
「まず解決して、その金を貰うか貰わないか決めよう」
「そうだ!行こう!」
*
思ったより道は簡単だった。
そこを厳重に守っていた警備隊は、依頼について話すと。
「ふん、ふん!ふん!そうか、解決屋が来たか。よし、通してやる」
「頑張れよ、クク…」
あっさり通してくれた。
妙な嘲笑を伴いながら。
「何だよ、気分悪い」
「大丈夫。どうせ何か問題が起きそうなら、すぐ逃げればいい」
そうして5分ほど歩くと、何か新参者の頭に違和感が走った。
「なんかおかしいな?」
「何が?空気も爽やかだし天気も良いのに?」
「ここは狩場だろ?昔、俺みたいな外部者のための場所だ。」
「そうだったか?」
「でもなんでモンスターが全然見えないんだ?」
「え?そうだな?」
通常、ゲームの狩場はモンスターを細かく分割して配置する。
そうすることでプレイヤー同士の狩りも円滑に進み、分配も上手くいくからだ。
つまり狩場に入ったらすぐにモンスターが見えるはずなのに…
「一体どうなってるんだ?」
「あそこ見て!」
妖精が指さした場所の茂みが、少しずつ揺れ始めた。
やがて、葉を散らしながら何か小さな形が姿を現した。
「あれか?」
透き通るような淡い緑色の光沢を放つ液体怪獣。
誰が見ても動く巨大な緑色のゼリーのように見える外見だった。
そのぷにぷにとした体の上に浮かぶ可愛い表情まで。
誰が見ても初心者のためのモンスターであるスライムだった。
ただ、一つだけ些細な問題があった。
「なんかスライムがおかしいな?」
「うん。なんかパチパチしてるんだけど?これ何て言うんだっけ!」
まるでテレビ画面にノイズが入ったように、スライムのいくつかの部分が歪んでいた。
何かゲームでグラフィックが崩れるような感じというか。
とにかく、相手が見えたから戦う時間だ。
「よし!行くぞ!」
「ファイト!」
スリン!
[初心者武器選択ボックスから『初心者の剣』を選択しました!]
[初心者武器はいつでも変更可能です!]
「見た目はともかく、俺はプロ級の新人だ。最初の部分は得意なんだ」
そう言うと、ニュービーはなかなかそれらしい構えで剣を構えた。
「はあっ!」
初心者らしくない鋭い剣撃がスライムに飛んでいった。
カン!
「キエッ!」
確かにヒットしたのか、スライムは痛そうな声を上げた。
「よし!」
「キーヤッ!」
するとスライムは怒った表情で、突進してきた。
「よし、一発くらいなら…」
このまま一発受けて、再び強力な一撃を食らわせる!
肉を捨て骨を取れ、骨を捨て肉を取れ…
-バキッ!!!
「ゴホッ-!!!」
「え、えっ?! おい!」
…なんてとんでもない。
骨も肉も与えてしまった状態になってしまった。
単にスライムが体当たりしただけなのに、新参者の体はそのまま粉々に砕け散った。
彼の体はそのまま光となって消えた。
[死亡しました!]
[24時間後に近くの村で復活します!]
やはり金をたくさんくれる仕事は何か怪しいものだった。




