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勇者が召喚した聖獣、なんと魔王様だった?!  作者: 止境
第二章

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第2章:カウトリオンの朝

日がすでに高く昇り、勇者はようやくベッドから起き上がった。

眠そうに目をこすりながら窓の外を見やる。


「もうこんな時間か。どうして起こしてくれなかったんだ?」


魔法使いは視線を本のページに落としたまま、淡々と一枚をめくる。

「いいじゃないか。時間ならいくらでもあるんだ。休めるときに休んでおいたほうがいい。」


ルシウスは一瞬ぽかんとしたが、すぐにうなずいた。

「……まあ、そうだな。」


二人が宿を出ると、ちょうど向かいにカフェがあった。

日除けの下にはいくつかの円卓が並び、銀色のスプーンと白い陶器のカップが置かれている。

ほろ苦い香りが漂うなか、ニクシアは足を組んで街路に面した席に腰掛けていた。


ルシウスの姿を見つけると、彼女はカップを掲げて軽く合図する。


「この“ラテ”とかいう人間の飲み物……」

メイドが身をかがめ、小声でささやいた。

「コーヒーでございます、お嬢様。」

「あ、そうだったわ。コーヒー。……悪くないわね。」


ルシウスと魔法使いも椅子を引き、席についた。

陶器のカップがテーブルに触れ、かちりと澄んだ音を立てる。


「この二人にも同じものを。」ニクシアはちらりと視線を上げ、侍女に命じる。


三人がコーヒーを飲み終えるころ、ルシウスは椅子の背にもたれかかり、青く澄んだ空を仰いだ。

「それで、これからどうする?」


ニクシアはカップを軽く揺らし、口元をわずかに吊り上げる。

「魔界へ先に行くとなれば……海亀に乗って渡るのが、一番現実的かもしれないわね。」


カシアンは本を閉じ、眼鏡を押し上げるような仕草をした。

「それなら冒険者ギルドで依頼を受けてはどうかな? 暇を持て余すくらいなら、稼いでおいたほうがいい。これからの旅路は長い、役立つはずだ。」


「ぷっ……」ニクシアは思わず吹き出し、ルシウスへと顔を向ける。

「ちょうどいいじゃない。――このひ弱な勇者を鍛えるにはね。」


街道には人々が行き交い、石畳は陽光を受けて淡く輝いていた。

両脇に並ぶ商店や露店は布地や鉄器、穀物、香辛料など、ありふれた品ばかりで、呼び声が絶え間なく響く。

だが時折、ほんのりと魔法めいた光景が目に入ることもあった。


街角では、見習いのローブをまとった少年が指先をひらひらと動かし、露店の前に落ちていた枯葉を一か所に集めている。

どうやら小さな風の魔術の練習らしい。

店主も追い払うどころか、むしろ掃除を手伝ってもらえて助かるといった顔をしている。

周囲では子供たちが目を輝かせ、食い入るようにその光景を見つめていた。


さらに進むと、薬屋の店先には透明な水晶瓶がいくつも並び、中に入った液体が色を変えたり揺らめいたりしていた。

足を止め、じっと見入る通行人も少なくない。


商人たちの掛け声、馬車の車輪のきしむ音、鐘楼の時を告げる音。

それらが折り重なって、この都市のにぎわいと活気をいっそう際立たせていた。


先頭を歩くニクシアは、軽やかな足取りで進む。

カシアンはといえば、気だるげに街路の店を眺め、時折立ち止まってはちらりと視線を送る。

剣を背負ったルシウスは二人の後ろについて歩きながら、きょろきょろと辺りを見回し、心の中で故郷の町並みとひそかに比べていた。


やがて街角を曲がった先に、堂々たる石造りの建物が姿を現す。

教会の大聖堂のように華美な装飾も、繊細な彫刻もない。

だが、厚い石壁と堅牢なアーチ門が、厳格さと秩序をそのまま形にしたような存在感を放っている。


――ここが、冒険者ギルドであった。

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