幕間
高くそびえ立つ尖塔は冷たい光を放ち、純白の石壁は陽光を浴びて神聖な輝きを纏っていた。
アーチ状の門廊には精緻な浮彫が施され、古き神跡と教会の預言者たちの伝承が刻まれている。
深紅の絨毯が長い階段に沿って敷かれ、蛇行しながら大扉へと続いていた。
階段の両脇には、十二体ずつの大理石像が整然と並ぶ。左には歴代の人類勇者、鎧を輝かせ揺るぎない表情を浮かべる者たち。右には賢者と統治者たち、巻物や杖を手に、深く穏やかな眼差しを注ぐ姿が刻まれている。
広大な広場の中央では、噴水が七色の光を反射し、水の飛沫が鐘楼群にこだましていつまでも消えない。
遠目に見るだけでも、この建築群は息を呑むほどの威容を誇っていた。
こここそが――聖座。
人類世界における宗教権威の中心である。
王国の君主であれ、辺境の町の市民であれ、すべての者がこの場所を信仰と秩序の象徴として仰いでいる。
聖座は宗教裁定の最高機関であるだけでなく、政治・経済・戦争においても決定的な影響力を握っていた。
一本の道、ひとつの門に至るまで厳格さと威厳を湛え、響き渡る鐘の音は人々に告げているかのようだった――「ここから、世界の行方が決まるのだ」と。
階段のほど近く、三人の教徒が質素な法衣をまとい、声を潜めて語り合っていた。
年嵩の教徒が目を細め、聖域の奥を指差す。
「聞いたか……あの王国の御方が、自らおいでになったらしい」
若い見習いが身を乗り出し、目を輝かせる。
「もしかして、王国に聖器の祝福を賜りに? 聖座の聖器は地方教会のものとは格が違いますから!」
付き従う従者が小さく首を振り、低く囁いた。
「だとしても……直々に足を運ぶほどのことではあるまい」
年嵩の教徒が答える。
「だが耳にしていないか? 近ごろ魔界に動きがあると……。あるいはこの機に人類連合を組み、魔族討伐を議するためかもしれん」
その時――殿門から一人の人物がゆるやかに姿を現した。
華やかな装束に身を包み、表情は晴れやか。随行の者は軽やかな足取りで従い、金糸を編んだ権杖を恭しく捧げ持っている。護衛たちは銀の鎧をまとい、鋭い鷹のような眼光を放っていた。
それは――勇者が魔王召喚の夜に目にした、あの大臣であった。
三人は即座に頭を垂れ、衣袖や外套を整え、先ほどまでの会話をなかったことにする。
やがて大臣が遠ざかると、年嵩の教徒が視線を上げ、その背を見つめながら呟いた。
「どうあれ……尋常のことではあるまい。大事が起ころうとしているのかもしれん」




