第1章:呪いの霧・激突 II
死の咆哮に吹き飛ばされたニクシアは、片膝を泥土に突き立て、大剣を地に突き刺し、その重みを支えにして身を起こした。
死の力は全身を貫き、まるで氷の炎が血管の中で燃え広がるかのよう。
彼女の肌は血の気を失い、口元からは赤が滲む。呼吸は荒く、四肢はもはや自分のものではないように重く鈍い――それでもなお、意志の力で無理やり身体を駆り立て、ふらつきながらも立ち上がった。
その正面、金冠の霊将は長槍を大地に深々と突き立てる。
退いていた霧が押し寄せ、さらに濃く渦を巻いた。
次の瞬間、彼の姿は掻き消える。
背後から冷光が閃き、ニクシアは即座に振り返って受け止める。反撃に転じようとしたが、触れたのは散りゆく霧影のみ。
続いて側面から槍尖が鋭く突き出され、彼女は慌てて剣を振り上げ、その軌道を逸らす。
敵の気配は霧の中いたるところに潜み、襲撃の刃は一撃ごとに苛烈さを増していった。
ニクシアは左手で剣身を、右手で柄を握り締め、一気に引き裂く。
闇の力が応じて分裂し、双剣へと姿を変える。
左右に構えた刃は守りを環のように描き、霧の中から襲い来る槍影を次々と弾き返す。
だが、突然の一閃――横薙ぎの槍撃が迫るも、刃が触れる直前に霧散。
本能に任せて振り抜いた剣は虚空を裂き、その隙を突くかのように霊将が顕現、長槍を頭上から叩きつけた。
双剣で交差して受け止めると、鋼と怒気の激突に足元の石土が砕け、亀裂が奔る。
角力の最中、霊将の姿は再び霧と化し、ニクシアの体勢は危うく崩れかけた――。
次の一撃は、さらに致命だった。
濃霧の奥、槍の穂先が烈火を噴き、胸元を狙って突き出される。
だが、ニクシアはあらかじめ見抜いていたかのように、一振りの剣で槍先を受け止め、もう一方の手は胸前の死角を利用し、悟らせぬよう刃を魔力へと変じる。
身を翻した瞬間、光柱が迸り、暗黒の奔流が爆発的に解き放たれた――
「暗黒奔流!」
眩い黒の光柱が幽魂の胸を貫き、濃霧を一気に吹き飛ばす。
「破綻を晒していたのは、私だけだと思った?」
ニクシアが冷ややかに囁く。
赤のマントは気流に裂かれて翻り、黄金の羽冠は折れ落ち、すべて霧に溶け消えていった。
影を収めると、足下の大地がわずかに輝きを取り戻す。
実は拮抗していた最中から、彼女は影を地面に張り巡らせており、それを濃霧で巧みに覆い隠していたのだ。
幽魂の一瞬の姿、踏み出す足音――すべてが彼女に捉えられていた。二振りの剣が分かたれていたのも、この時のためである。
双剣士の守りは依然として隙がなかったが、魔王の参戦によって均衡は一瞬で崩れ、やがて彼も濃霧へと退いた。
――ようやく一同が息をつき、休息を取ろうとしたその時、先の咆哮が再び轟き渡った……




