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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夢を見るたびに僕が死ぬ

作者: 綾崎暁都

 今これを読んでいるそこの君。今これを読んでいるということは、それが遺書なのか、手紙、日記、またはなんらかの別の方法で、僕の書いた文章が君に伝わっていることだろうと思う。

 遺書なんていう不吉な言葉を使ってしまったため、君の頭の中に先入観を植えつけてしまったかもしれないが、まあ取り敢えず最後まで僕の話を読んでもらいたい。


 まず最初に自己紹介から始めようか。僕の名前は椿屋真琴(つばきやまこと)。これを書いている今も学校に通っている。

 僕が学校でどんな存在なのかというと、そうだな、自分で言うのもあれだが、容姿端麗な僕は男女問わず皆の憧れの存在。それで成績優秀ということもあり、周囲から孤高の存在と見られているようだ。

 男女を問わず皆の憧れの存在だということと、真琴という名前に使われている漢字で察したかと思うが、僕の性別は女。そう、花の女子高生というわけだ。

 ここまで聞くと、さぞ(うらや)ましい自慢げな話に聞こえるかもしれないが、僕にとってはそうじゃない。

 先程から自分のことを呼ぶ際、僕は「僕」という言葉を使っている。それがどういうことなのか、わかるかい? そう、僕は自分が男だと思っている。つまり、僕は男の子になりたいんだ。

 物心ついたあたりぐらいかな。僕は女の子として振る舞わなければならないことに、どこか違和感があった。そして年齢が上がれば上がるほど、それがどんどん膨れ上がっていった。

 あれは僕がまだ小学生ぐらいの頃だろうか。長い髪が嫌で、髪を自分で短く切り、男の子のように外でやんちゃな遊びをしたことがあった。そのとき、母さんからものすごく心配されてしまい、とても神経質な表情で、「女の子はそんな風にするものではありませんよ」というようなことを言われ、同時に厳しく叱られもした。

 その後も僕は懲りずに、髪を短く切り、男の子のような振る舞いをしたせいで、そのたびに母さんから心配され、父、祖父母、親戚の叔父叔母などとともに、女の子らしく振る舞うように何度も言われた。僕が男の子らしい振る舞いをやめず、さらに抵抗すると、みんなが激しく怒り狂った。そのせいで何度も病院に連れて行かれることとなる。

 病院の先生もまったく同じで、男の子として振る舞うことは明らかにおかしいことだと、何度も僕に説き伏せる。僕は最初のほうこそ抵抗していたものの、徐々に話を受け入れるようになる。なぜなら、病院の先生や看護婦たちのあまりに感情が見えないその面立ちに、少しずつ寒気を感じていったからだ。

 ひどいときは入院させられることもあり、退院したあと、鏡に映る能面のような自分の顔を見たときには、あまりの変貌ぶりに胸が締めつけられるように感じた。

 こういったことが何度もおこなわれたことで、僕は再び女の子らしい振る舞いへと戻っていった。だけど内心は、自分のことはまともだと思っている。おかしいのはそれこそみんなのほうだ。神経質そうな表情で怒り狂う両親と親戚一同。感情のない作られた顔に見える医者や看護婦。彼らのほうがよっぽど重症だろ。どう見ても。

 それからは継続して女の子らしく振る舞ってはいるものの、僕の中の男の子になりたい願望が日に日に強くなり、今現在へと至るのだ。

 体が大きくなるに従い、女らしさに磨きがかかり、今では学校一の美少女と言われるまでの存在となった。表面上は女子として振る舞ってはいるものの、髪を少し短めに切るなど、僕なりのささやかな抵抗もあってなのか、男子だけでなく、女子からの視線も多く感じるようになった。まあ、背も高く髪も少し短ければ、男装の麗人といった具合に見えるのかもしれない。

 でも、これは本当の僕じゃない。

 僕は男の子だ。女の子じゃない。「わたし」なんて言葉、使いたくない。願えば願うほど、自分のこの体を呪ってしまう。さらに学校のみんなから期待の目で見られれば見られるほど、僕は苦しくなっていく。

「まこと」という名前なのに、本当の自分でいることもできないのか。

 みんなが憧れの眼差しで僕を見る(ごと)に、見えない何かで首を絞められるような感覚に陥る。そして、わずかな期待を少しでも頭に思い描けば、そのすぐあとに必ず自分が死んでる光景が頭の中に広がってくる。そう、つまり、夢を見るたびに僕が死ぬのだ。

 それからというもの、いつしか夢を見ることをやめてしまい、両親や学校のみんな、街で目にするいろんな人を含めて、全員同じ能面のような顔にしか見えなくなってしまった。

 両親から「真琴」と呼ばれたり、僕のことについて話している学校の生徒の声が聞こえるたびに、能面のようにいかにも作られたような顔が自分に向けられているように感じる。どれもまったく同じ顔にしか見えないので、向けられているのを感じれば感じるほど、僕は恐怖に震えた。

 しかし、こんな恐ろしい状況の中、作られたような顔ではない、ちゃんとした人間らしい顔を持った存在が、ただひとりだけ存在した。

 藤枝京香(ふじえだきょうか)。最近同じ学校に通うことになった転校生で、同じ学年の女生徒。彼女は僕から見ても容姿端麗で、僕と人気を分ける存在だ。

 前々から存在は知っていたが、この状況の中初めて彼女を見たその瞬間、僕は心を奪われてしまった。なんと言えばいいだろう。そう、なんだか胸が熱くなったのだ。

 こんなことは生まれて初めてだった。だからなのか、ひどく動揺もする。だが、この動悸が一体なんなのか、次第に気づいていった。

 そう、僕は彼女に恋をしたのだ。

 同じ学校の女生徒である僕ら。同じ学校で人気を分ける僕と彼女。その彼女に、僕は密かに想いを寄せていた。

 実のところ、生まれて初めての感情だった。今まで恋心を抱くことがなかったこの僕が、この絶望の状況の中変わらない彼女の顔を見たその瞬間に、心を奪われてしまったのだから。

 藤枝京香。長くてきれいな茶髪に、少女漫画に出てくるような(きら)めく瞳。それはまさにヒロインそのものだ。

 そんな彼女だからこそ、学校一の美少女と呼ばれるのにふさわしい。そんな彼女と比較され、彼女と人気を分けてることに、僕は自分のことを笑わずにはいられなかった。

 だって、考えてもみろよ。椿屋真琴なんて名前、どう見ても変な名前だろ。どんなアクセントで読んだところで、良い響きはしない。正直、自分の名前が嫌いだ。特に椿屋という名前が好きじゃない。

 それと比べて藤枝京香。名前容姿ともに、まさに物語に出てくるヒロインにふさわしい。そんな存在だ。

 まあ、彼女も僕と同様、成績優秀であるため、そこの点で比べられるのはわかるものの、他の点まで彼女と比較されてしまうほど馬鹿馬鹿しいことはない。

 そもそも、他のみんなと距離を取っている僕とは違い、転校して早々彼女は誰とでも笑顔を絶やさず会話をしている。他人を拒絶している僕とは、そもそも器が違うのだ。だからこそ、ひどく馬鹿馬鹿しい。

 そんな彼女とはクラスが異なり、今まで遠くからしか見ることができずにいたが、ある日、少し距離はあったものの、彼女と初めて目が合った。しかし、彼女と目が合ったその瞬間、彼女は他のみんなに見せる笑顔ではなく、冷たい視線に一瞬変わると、何事もなかったかのように、直ぐ様目を逸らした。

 僕はこのときほど、自分が壊れていくのを感じることはなかった。他のみんなに優しく微笑むその顔も、僕という存在がその輝く瞳に映り込んだだけで、まるで(くず)同然のように目を背けられてしまう。

 彼女は僕のことが嫌いなのだろうか。彼女にとって、僕はいらない人間なのだろうか。こんなにも僕は、彼女を愛おしく欲しているというのに。

 僕が女だからいけないのだろうか。女の身でありながら、男として振る舞いたい。そんな願望を胸に秘めている、それがいけないことなのか。そんな夢を見ている道を踏み外した女だから、僕はこうして罰せられているのだろうか。

 僕はこの瞬間、罪を犯した女として、あらゆる方法で何度も処刑される光景が、頭の中に映し出されていた。

 そして、僕の中の僕という存在の崩壊が加速する。

 ある日の夕刻、みんながいなくなった学校の屋上で、僕は体を震わせながら、真下を見下ろしていた。

 もうこの世に僕の居場所なんてない。自分が自暴自棄になってるなんてわかっていながらも、この世からさよならするべく身を投げようとする。しかし、どうしてもその第一歩が踏み出せずにいた。

 何度も何度も、その震える重い足を前に出そうとするのだけれど、結局自ら命を絶つことができなかった。そして、家に帰ると、寂しさ、そして悔しさから涙を流し床に就いた。

 しかし、目を覚ました翌朝、昨日の自暴自棄な自分の思考が一気に吹き飛ぶほど、衝撃的な事実が僕の耳に入ってきた。そう、あの藤枝京香が死んだのだ。

 学校の屋上から飛び降りたとのことだ。時間帯は深夜零時前後とのこと。自殺の原因までは書かれていないものの、どうやら遺書が残されていたようだ。僕はこの話が耳に入ったその瞬間、あまりのショックに思考が追いつかないでいた。僕はただ呆然と、警官がたくさん入り込む校内を眺めることしかできなかった。

 その後、学校は休校となり、そして後日、藤枝京香の葬儀がおこなわれた。

 葬儀には彼女の家族、学校の先生が複数人、そして、同じ学年の生徒全員が参列した。一人娘を亡くした両親、女生徒の多くが彼女との別れに涙を流した。だが僕は、葬儀が終わるまでの間、一滴の涙も流すことはなかった。

 葬儀が終わり家に帰ると、郵便受けに一通の手紙が入っていた。僕宛てに送られてきた手紙だ。差出人の名前を見ると、驚いたことに藤枝京香と書かれていた。封筒を開けると、早速手紙を読み始める。


椿屋さん、一度も話したことのないわたしから、突然手紙が送られてきたことに驚いたことと思いますが、どうかお許しください。恐らくですが、この手紙を椿屋さんが読んでる頃には、わたしはもうこの世にいないでしょう。ですが、だからこそ、最後に、わたしの想いを伝えたいと思い、この手紙を送らせてもらいました。単刀直入に申し上げますと、わたしは以前から、椿屋さんのことをお慕い申し上げておりました。転校した学校で、初めて椿屋さんの顔を見たそのときから、わたしはすっかり心を奪われてしまったのです。ですが、知っての通り、わたしは女であり、椿屋さん、あなたも女です。わたしは女である自覚があります。そうです。わたしは女です。しかし、同じ女である椿屋さんに、どうしても恋焦がれてしまいます。そんな自分の感情にひどく困惑してしまい、ずいぶんと思い悩みました。正直な気持ちを打ち明けるべきか、自分の気持ちを押し殺し、周囲の期待に応えて生きていくべきなのかと。本当であれば、あなたに直接自分の気持ちを伝えたいところです。ですが、たとえあなたがわたしの気持ちに応えてくれたとしても、世間がそれを許してはくれないでしょう。女同士が恋仲であることを、周りは絶対に認めようとはしない。そう考えると、自然と諦めがつくのかと思ったのですが、どうやらそうはいかないようです。わたしは今まで、両親を始め周囲の期待に応えるよう頑張ってきました。勉強だってそのために頑張ってきたようなものです。正直なところ、わたし自身がそうありたいと願ったことなんて、一度もありません。そうです。わたしは仮面を被っていました。ですが、それももうやめにします。しかし、本当のわたしをみんなに見せたら、みんながわたしのことを拒絶すると思います。本当の自分でいることができないなら、もう、わたしに生きている意味なんてありません。他に可能性がないだろうかいろいろと探りましたが、どうしても見つかりそうにないようです。ですので、もうこの世からおさらばします。ですが、もし椿屋さんが、それでもわたしと一緒にいたいと言ってくだされば、踏みとどまることができるのかもしれません。でも、それは叶わないことだと思います。だって、わたしは臆病者ですから。だからこそ、わたしはここでお別れとなります。もし願うなら、真琴さん、京香と、互いに名前で呼び合いながら、ふたりの時間を過ごしてみたかったものです。最後になりますが、町外れの廃墟となってる洋館はご存知でしょうか? もし知ってるのであれば、そこにわたしの想いを(えが)いてきました。なんのことかと思うかもしれませんが、あなたに対するわたしの想いです。どうか、わたしの願いを見てください。本当の最後になりますが、真琴さん、あなただけは本当のわたしを拒絶しないでください。そして、あなたが来ると、わたしは信じています。それまではしばしの別れですね。それでは、ここで一旦お別れといきましょう。さようなら、真琴さん。


 手紙を読み終わると、僕は直ぐ様家を飛び出した。

 手紙に書かれていた洋館については、心当たりがある。町外れまで行き森の中まで入ると、あたりはすっかり他の人家(じんか)が見えなくなった。そんな森に囲まれたこの場所で、突然目の前に廃墟と化した洋館が姿を現した。まさに幽霊屋敷といった外観だ。

 この洋館は元々、旧華族(かぞく)である夫と妻、そしてその娘の三人家族で暮らしていたという。しかし、この家族はやがて没落し、謎の死を遂げたということらしい。それもさることながら、このあたりは人気もなく、不気味な声や、最近も近くで死体が発見されたりしたため、皆が不気味がって近寄らない。女子供はともかく、警官ですらめったに近寄らないとのことだ。

 僕もここに来て、怖くて震えが止まらなかった。一度は自ら命を絶とうとした身であるのに、笑ってしまうだろ。

 だがそれでも、藤枝さんの気持ちに応えるためにも、僕は彼女の(えが)いた願いというものが一体なんなのか、この目で確かめなければならない。あんなにも丁寧な文字で僕への想いを書き(したた)められた手紙を読んでしまったのだから、想いに応えなければ薄情というものだろう。

 勇気を出して、どうやって入ろうものか、洋館の周囲を眺めていたところ、一つだけ空いている窓があった。窓を覗くと、殺伐とした暗い部屋の中央に、キャンバスを載せた画架(がか)が立っていた。

 僕はなんとか勇気を出して、窓から部屋の中に入り、画架の目の前まで近づく。最初は部屋が暗かったため、何が(えが)かれているのか見えなかった。だがしばらくすると、窓から木漏れ日が射し込み、突如キャンバスに描かれた絵が姿を現した。

 それはとてもおぞましい光景だった。なぜなら、全裸で腹部を切り裂かれ、内臓がはみ出ている状態のこの僕を、悪魔のような微笑みをした藤枝京香が、後ろから抱き締めてる様子が(えが)かれていたのだから。しかも、僕の下半身には、女には決してない陰茎が生えている。胸の膨らみはあるのに、陰茎が生えている。それらも含めて、あまりにグロテスクな光景だ。

 僕が一通り絵を見終わると、途端に目の前から悪夢が消え、部屋の中が真っ暗となる。僕はあまりの恐怖で、急いで外に出ようとした。

 しかし、突然体が動かなくなる。そして、背後から何者かに抱き締められるような感覚に陥った。なんとか振り解こうとするのだが、体が上手く動かない。体をまさぐられる感覚がとても怖く、そしてひどく気持ち悪い。

 やがてまさぐられる感覚が上半身のほうへと集中していき、喉付近まで到達したその瞬間、突然首を絞められる。なんとか手を伸ばし抵抗しようとするのだが、首の付近には手どころか、縄のようなものさえなく、ただ虚空を掴むだけだった。

 どんなに振り解こうとしても、結局徒労に終わってしまう。徐々に強い力で首が締まっていき意識が薄れていくなか、せめて何が起こっているのだろうか、なんとか顔を後ろに向けて確かめようとした。

 すると、あたりが闇の中、悪魔のような笑みで僕の首に手を伸ばしている藤枝京香の姿が、はっきりとこの目に入ってきた。全裸な状態のその姿は、恐ろしいがとても美しかった。だが同時に朧気(おぼろげ)にも見えてしまい、まさに怪談小説に出てくる悪霊そのものだった。

 彼女が何やら口を動かして、僕に語りかけるのだが、僕にはその声がまったく聞こえない。それから彼女はゆっくりと顔を近づけてきて、僕に口づけをした。その感触は今まで感じたことのないほどの冷たさだ。限りなく冷たい冷気が体の中へと入っていき、やがて僕の意識は完全に途絶えてしまった。


 気がつくと、僕は学校一階の入り口付近の前で、仰向けに倒れていた。目を開けたばかりの今この瞬間、目の前に広がる光景を確かめる。僕の視界には、日が完全に沈みかけている夕刻の空、それから僕が飛び降りようとした屋上の断片が見えるのみだった。

 なんだか頭の付近がじんわり熱を帯びたように感じる。ぼ〜っとした感覚の中、僕は起き上がると、周囲を確認する。誰もいない学校。特に何も変わらない学校の風景。僕はそれを背に、自分の家へと帰っていった。

 翌日、目が覚めると、僕はこの瞬間、洋館に行ったときの出来事が頭の中に蘇る。恐怖に体が震え、朝食の味もろくに感じないまま、今日も学校へと行った。

 学校は普段通り授業があり、他の生徒も特に変わった様子はない。昨日まではみんなすっかり動揺していた様子だったが、今日は打って変わって藤枝京香が自殺する前の日常へと戻ったようであった。

 あまりに様子がおかしいので、他の生徒にさりげなく藤枝京香のことを訊ねた。しかし驚いたことに、「藤枝さんって誰?」と言われてしまったのだ。僕はこのことに動揺して、他の同級生にも訊いて回った。しかし、誰もがその名前を覚えておらず、そもそもその存在すらいなかったように扱われてしまった。

 僕はこの状況にひどく混乱した。これは夢なのではないかと思い、頬をつねったり、頭を叩いてみたりなどした。だが、この不可思議な夢から覚めることは決してなかった。

 こうして今日の授業が終わり、下校の時刻となった。ちょうどその頃に、僕はようやくあることに気がつく。それは僕の机に花瓶が置かれていたということだ。僕はこの花瓶を凝視する。花瓶には一輪の真っ赤な椿が、ひとりぼっちで慎ましく咲いていた。

 しばらくこの椿を見ると、再びチャイムが鳴り響く。僕はそのチャイムではっとすると、教室を出て学校をあとにした。


 ということで、僕の体験したお話はここで終わりだ。

 そこで、今これを読んでる君たちに告げる。僕の話をどう受け取ってもらっても構わない。だが、これだけは最後に言わせてほしい。

 君たちがどう読んだか、その解釈によって、この物語の意志は大きく変わるだろう。だが、これを読んだ君たちがどう解釈するのか、それを知ることができないのがとても残念だ。そこで僕はささやかな悪戯を仕掛けた。君たちが読み終わってどう解釈したかによって、その後限りない呪いが降り注がれるのか、はたまた思いがけない幸運と出くわすのか、僕はそうなるように呪文をこの物語に込めたつもりだ。だからこそ、読み終わったあと、いろいろと考えてほしい。

 そう、僕の物語も、ここでやっと終わる。だから、ここでお別れだ。じゃあみんな、君たちに幸運と呪いを。そして、さようなら。

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