82話:最終層・禁忌の書庫、風に響く終章の声
封印された記録の墓標を越え、
ハクたちはいよいよ“忘れられた大図書院”の最深層へと辿り着いた。
目の前に広がるのは、重く閉ざされた巨大な扉。
幾重にも張り巡らされた結界は、
“記録”に干渉する者すべてを拒むかのように、
ただそこにあった。
「これが……最終層、“禁忌の書庫”」
ナギが呟くと、背中の印が光を放つ。
彼女の記憶と血脈が、扉と“共鳴”を始めていた。
「私だけじゃ開かない……でも、私たち四人が辿ってきた“風と記録”の道が、扉を開く」
エリオットが言った。
「ここには、かつて王が“隠した”記録の全てが眠っているはずだ。真実が、今なお封じられている」
ハクは静かに木刀を握りしめた。「……知る覚悟、あるか?」
ジノも頷く。「あぁ、ここまで来たんだ。背中なんて見せられないよな」
そして、ナギが扉に手を当てる。
──“記録認証・最上位:アルトリアの血統にして、記録守人に連なる者”
扉が軋みながら、ゆっくりと開いていく。
現れたのは、巨大なドーム状の書庫。
その中心には、一冊の“黒い書”が祭壇に安置されていた。
「これは……王国創世の“始まりの記録”」
ナギが近づこうとした瞬間、空間がねじれた。
──現れたのは、漆黒の外套を纏った影。
「ようこそ、後継者たちよ。“記録の封”は、容易くは渡せぬ」
その声は低く、だが確かに“人ならざる”存在のものだった。
「“真理守人”……いや、王が創り出した最初の“記録改竄者”か!」
エリオットが叫ぶ。
「この記録が世界に開かれれば、王国は崩れる。だからこそ、我は“存在の価値”を測りに来た」
影が剣を構えた。
──次なる敵、“禁書の番人”が姿を現す。
「風は、知を越えるか。それとも理は、記録を塗り潰すのか」
木刀が風を纏い、ハクが一歩前に出る。
「いいぜ。お前が“歴史の番人”だっていうなら──こっちは、“未来を護る者”として打ち破ってやる!」
風が螺旋を描き、記録が光を放ち、戦いは始まる。
禁忌の記録を賭けた、最終層の戦いが──今、幕を開けた。




