70話:黒炎の谷、揺れる誓いと焔の欠片
草原を越え、岩山を抜けた先に広がる荒れ地──そこが“黒炎の谷”だった。
数百年前の大戦で魔炎が吹き荒れ、大地そのものが焼かれたというこの地には、未だ“呪炎”と呼ばれる揺らめく黒い炎が点在していた。触れれば肉を焼き、心を蝕むというその炎を避けながら、ハクたちは慎重に進んでいく。
「……この辺り、風の流れが不規則だ。何かが潜んでる」
ハクが足を止め、周囲に意識を巡らせる。
ナギが首をかしげる。「風って、見えないのに、よくわかるよね……」
「目じゃない。体で読むんだ」
ジノが軽く肩を竦めた。「感覚で戦ってる奴って、一番怖いよな」
そのとき、谷の奥から低く唸るような声が響いた。
──グオオォ……
黒煙をまとった巨大な影が、谷底から這い出る。
「“炎喰いのワーム”だ……!」
ハクが咄嗟に前へ出る。木刀を構えた姿は、静かだが確かな覚悟に満ちていた。
「いくぞ、風よ」
炎と風、相反する力の対決。呪炎の中での戦いが始まる
──グオオォ……!
黒煙をまとった巨大な“炎喰いのワーム”が谷底から這い出る!
全長十メートルを優に超える魔獣、その瞳には憎悪と呪炎が宿っていた。
「くるぞッ!」ハクが叫び、木刀を振るって風を纏わせる。
ワームの顎が大地を割り、火の雨が降り注ぐ。
「“風足・双影!”」
ハクが高速で踏み込み、ワームの胴体に一撃を叩き込むが、呪炎の膜に阻まれる!
「熱っ……ぐっ……」
ナギが咄嗟に魔符を展開、「“浄火障壁!”」と叫ぶ。瞬間、呪炎を弾く青い光の障壁が現れる。
ジノがその隙に崖を駆け上がり、投擲刃を投げ込む。
「目を狙え、ハク!」
ハクが頷き、風の流れを掴む。
「“風牙・穿牙波!”」
木刀から放たれた風の衝撃波が、呪炎を引き裂いてワームの片目を直撃──咆哮が谷を震わせた!
「今だ、押し切る!」
三人の連携が鋭く、呪炎の獣を追い詰めてゆく──だがその奥、さらに深い谷の底から、より巨大な“気”が目覚めようとしていた……!




